3 合宿所のお化け(1)
プリンセスはごく普通の女子高生として高校生活を楽しんでいる。もちろん誰も彼女の正体を知らないし、湖に住んでいることも知らない。
プリンセスにとって毎日の授業は楽しく、成績も優秀だった。また放課後になると、彼女はヴァイオリンができるので、フルオーケストラの管弦楽部で活動していた。
練習場は校舎からは少し離れた合宿所のホールでやっている。ある日の放課後、いつものように部活に行くと、生徒たちが合宿所の入り口のところでざわついていた。プリンセスはどうしたのかと思って近くにいる先輩に聞いてみた。
「何かあったんですか?」
「それが、この合宿所の裏口から入る部屋に楽器を収納してあるんだけど、楽器を用意する1年生たちが行ったらお化けがいて怖くて楽器を持って来られないっていうのよ。
そんな馬鹿なことあるはずないわよね。とにかく楽器を持って来ないと練習ができないので、さっき私たち2年生が行ってみたら本当にのっぺらぼうみたいなお化けが出てきたので、怖くて私たちも戻ってきたところなの。
顧問の先生を呼んでこようとも思ったんだけど、二人とも私たち以上にお化け苦手なのよ。教頭先生とかに言うしかないかしら。困っちゃうわ、本当に。」
「それじゃ、私が見てきます。」
「えっ一人で?それって危ないんじゃない?」
「いえ、大丈夫です。少し待っていてください。」
プリンセスはテレパシーでモンちゃんを呼び寄せると、裏口から楽器を保管してある部屋のドアを開け、そっと入っていった。部屋にはティンパニーや木琴、チェロなど数多くの楽器が所狭しと並んでいた。
もう少し奥に入ってみると、
「ふふふふぁふぁふぁ」と不敵な笑い声が響き始めた。声の方を見ると、そこにはのっぺらぼうがいて、更に天井からは大きなコウモリのバケモノがぶら下がっている。
「おまえたちは何者だ?」
「ふふふ、お前は俺たちが怖くないのか?他の学生たちは俺たちを見た瞬間悲鳴をあげて逃げていったぞ。」
バケモノから目をそらさずじっと睨みながら、プリンセスはこっそり壁に張りついているモンちゃんにバケモノの様子を音声とともに録画するようにテレパシーで指示した。
「お前たちの目的は何だ?女生徒たちを怖がらせて楽しんでいるのか?」
「それは秘密だ。とにかくお前は邪魔だ。ここから出ていけ。その方が身のためだぞ。」
「嫌だと言ったら?」
「くらえ!女子学生の最も苦手なものだ!」
天井から三匹のスパイダーが飛んできた。が、プリンセスは落ち着いて得意の物体移動魔法を使った。するとスパイダーたちはバケモノたちの方へ吹き飛ばされていった。
「ぎゃー、実は俺もスパイダーは苦手なのだ。よくもやったな。今日のところは退散するが、今度俺たちの邪魔をしたら命は無いものと思え。」