2 湖の謎
少女は街の散策は終えたようで、元来た道を戻り、歩き続けてとある緑豊かな場所にやってきた。周囲は山々に囲まれており、樹齢何百年かと思われるような老木などいろいろな木々が植わっていた。
だが冬なので花はあまり咲いていない。小鳥のさえずりもあまり聞こえない。近くにとてもいい香りがしたのでそちらを振り向くと、透き通った黄色の花が咲いている。蝋梅の花だ。
目の前には湖があった。少女は辺りを見回して、誰もいないことを確認してからテレパシーで湖に向かって叫んだ。
「セパレ!(分かれろ)」
すると怪獣映画で海から怪獣が現れる時のように、湖の中央にさざなみが立ち始めたとたんゴーというものすごい音がして、何と湖が真ん中から左右に割れ始めたのだ。
ちょうど聖書の十戒の映画にあったように。そして左右に水がちょうど壁のように立ち上がった状態で、階段を数段降りると真ん中には湖底に向かって一本の銀色の道が伸びている。
少女がその銀色の道に足を踏み入れると、道が動く歩道のようにスルスルと動き出し、足を動かさなくても湖底へと少しずつ進んで行った。
そして目の前には巨大な城が姿を現した。この建造物はシャトーと呼ばれていて、超高速コンピュータによって管理されていて、メインコンピュータは少女の指令によってのみ動くように設計されている。つまり、少女はこのシャトーの主人なのだ。
少女がシャトーの中に入ると、再びゴーという音がして左右に割れた水の壁が崩れて融合し、元通りの静かな湖に戻った。するとズザザーという音がして彼女の目の前に何かが飛んできて着地した。
何かリスのようだが、体と腕や足の間に膜がある。くりくりしたかわいい瞳のモモンガー型アンドロイドだ。
「今日は、プリンセス。私たちのご主人様。ご主人様が外出されていると私たちは寂しくて仕方ありません。もうすぐアネモネがミルクティーとクッキーをプリンセスのお部屋へお持ちしますので、どうぞおくつろぎください。」
「ありがとう、モンちゃん。」
少女はプリンセスと呼ばれ、この大きな古城のような建物の主人として振る舞っている。
プリンセスは自分の部屋に行くと、ゆったりしたスペースがあり、花が飾ってあり、窓からは湖の中でゆっくり泳ぐ魚たちが見えた。まるで巨大な水槽を見ているかのようだ。このシャトーという建物は高級ホテル並みの豪華なものだった。
どうして湖の中にこのような建物があり、プリンセスと呼ばれている、不思議な力を持っているこの少女は何者なのだろうか。