1 謎の美少女
賑やかな街を一人の美少女が歩いている。高校生らしく、ブルーの制服を着ているが、実はこの服は制服そっくりではあるが、彼女の祖母が丹精込めて作ってくれた魔法の服なのだ。
特殊な繊維でできており、彼女が思った通りに形が変わり、色や模様も自由自在に変わるのだ。
「街に出かけるのだから、少しおしゃれしようかしら。」
それまで制服の形だった服はみるみるうちにワンピースとなり、そこにはカラフルなオレンジやレッドの花々が咲き誇っていた。
「ちょっと冒険しちゃおうっと。」
するとワンピースの丈が少しずつずれ上がって短くなり、膝上5センチほどの短さになった。
「ちょっと短すぎるけど、まあいいわ。人の目が気になったらすぐ長くできるし。」
紺色のミニのワンピースと赤い靴が似合っている。
特に目的もなく散策を楽しんでいるようだ。彼女がふと左の方を向くと、ある区域を歩いている女子たちが不快そうに顔をしかめている。
どうしてかなと気になってよく見ると、一人の若い男がタバコを吸いながら歩いていて、その煙が女子たちの方にたなびいているのだ。
すると男は急にタバコを火がついたまま近くに投げ捨てた。そこにはクリスマスローズが咲いているのだが、タバコが花の近くに落ちたので、火が葉っぱに引火しそうな勢いであった。少女は男に向かって言った。
「あなた、今投げたもの、ちゃんと火を消してゴミ箱に捨てなさいよ。」
すると男は
「嫌だね。気になるんならお前が処理すりゃいいだろ。」
少女が右目を瞬くと、火のついたタバコは宙に浮き、男の方へ飛んでいき、男のショルダーバッグが開いてその中に飛び込んだ。そしてバッグは燃え始めた。
「あちち、てめえ、何したんだよ。あっちいじゃねえか。」
少女はそれを無視してさも何もなかったかのように踵を返して歩き始めた。怒った男は少女の後ろ姿をじっと見た。
「なんだ、ミニスカートなんかはいてきどってやがる。よし、恥かかせてやるぜ。」
男はバッグの火を揉み消すと、そこから釣り針のついた釣り糸を引き出し、少女の後ろから彼女のミニスカートに向けて投げつけた。
釣り針は勢いよく飛んでいき、ミニスカートに近づき、もう少しでスカートの裾に引っかかりそうになった時、ミニスカートは急に下へ伸びてパンタロンになってしまい、釣り針はパンタロンに当たって地面に落ちたかと思われた瞬間、釣り針は急に上昇して向きを変えると男の方へ向かってきた。
「うわあ、こりゃ一体どういうことだ?」
そしてみるみるうちに釣り糸は男に巻き付いてしまい、男はそのまま地面に倒れてしまった。少女は背後の動きを察知することができ、釣り針が飛んできたので魔法でスカートをパンタロンに変えて釣り針を撥ね返したのだ。
また釣り針を逆に男の方に飛ばして巻きつけたのは、物体を自由に動かすことができるという彼女の得意とする魔法の一つなのだ。