新居への誘い
後日、封書が俺宛に届く。
「宛名が魔王セトになってるぞ」
どんな冗談かと思ったらアレクからだった。
「西の砦をあげるから、一度見てきてとさ」
「セト君軽く言ってるけど、西の砦ってほぼ要塞だからね」
セラが珍しく頭を抱えてる。
「なんかまずいのか?」
「さすが、アレクというか御三家ってことよ」
セラは深く理由を話さないが、話さないってことはそこまで深刻でもないのだろう。
「モナとレンとで軽く見てくるわ」
セラがしばらく黙り、額に手を当ててから言った。
「……だから、軽く見れる大きさじゃないの。セト君西側見たことない?」
「山と森が広がってるな気がするな」
「その山が全部砦よ」
「ほー」
理解が追いつかない。
「デカくない?」
「この国の西の要所で元々帝国を牽制するために山丸ごと要塞にしたようなものよ」
「人住めるのか?戦時中の建物だろ」
「屋敷というか城レベルのものがあるわよ」
「あー山のてっぺんに見えるあれか」
「あれよ」
「不便だろ」
「不便とかそいういう話じゃないわよ」
「見に行ってもいいけど日帰りじゃ無理よ」
「行けるのは誰だ?」
「まず私はこれの件でアレクと話してくるから無理よ。すぐ行くんでしょ?」
「早い方がいいな」
「レンとモナとヴェルと」
俺が指折り数えていると、アッシュが口を開く。
「私はリザの件もあるので、留守を守りますよ」
「私も行きますよ」
フィーナが手を挙げる。
「お前こそリザの様子見に残らないのか?」
「教会から監視役で別の人が来てもいいなら残ります」
「なるほど、それもめんどくさいな。フィーナも来ると」
「ルナも行ってきな。生活力が足らないメンツに思える」
「野宿上等ですよ!」
フィーナが声高らかに言う。他のメンツもうなづく。
「だからだよ。もう注目の的なんだ。下手なことはできないの」
セラが静かに忠告する。