それぞれの朝とハーレムのあり方
目が覚めるとフィーナが着替えをしていた。
「あっ起こしちゃいましたね」
「いや、ちょうど良かった。おはようフィーナ」
「おはようございます。えへへ。なんか照れますね」
昨日あの後、ヴェルとアッシュに絞られた後の俺をさらに絞りにきたのがフィーナだ。
添い寝くらいなら……と横になったのだが、気づけばフィーナの手が胸に置かれ──まぁ、まだ俺も若いってことなんだろう。
「私は聖撃に顔を出してきますね」
「おう、いってらっしゃい」
「いってきます。いいですね。新婚みたいです」
「まぁ新婚なんだろ。嫁が多すぎだが」
「セトさんの体が持ちますかね」
「なら控えろよ」
俺は苦笑する。
「それは……努力します」
フィーナは笑って、小さく手を振って出ていく。
代わりにモナが入ってくる。
「おはよう」
「おはようどうした」
「どうしたじゃないよ。結局昨日もあまり話せなかったろ」
モナが膨れてる。
「リザの件もそうだけど、蓮華会ってところの話」
「色々巻き込んですまないな」
「セトが謝る必要はないよ。家族の事だろ」
モナは微笑んで俺の隣に腰をかける。
「パンツくらい履いたら」
「おっとすまない」
「全くヤキモチ妬いてる暇もないよ」
「ごめんな。成り行き任せで」
「セトが成り行き気にしてたら、私もここにはいなかったと思うよ」
手を握り顔を寄せてくる。
軽い口付けだけ交わし。満面の笑みを浮かべるモナ。
「セトはそのままでいいよ。ただ、戦いになると危険だから誰かしらと一緒にいてね」
「そこは私が、じゃないのか」
「みんな強いからね。それこそ成り行き任せで守られて」
「男としての」
俺が言いかけると、また口付けされた。
「男としてはまた後で頑張ってもらうから。戦いは私たちに任せて」
「おおう。」
なんか流されたというか。最強の嫁さん達に守られ。夜奮闘するのが俺の役目らしい。
最強のヒモとはよく言ったものだ。
寝室を出るとセラが当然のようにいる。
「おはよう、ゆうべもお楽しみだったね」
もう毎日言われそうだな。
「おはよう、セラは今日も図面書きするのか?」
「いや今日は別件があってね。一緒に来てくれると嬉しいが、空いてるかい」
「急ぎの仕事はないし、別に構わないが、どこへ連れて行かれるんだ」
「君の先輩とも言える。ハーレム持ちの貴族、いや王族のところかな」
「遠慮します」
「大丈夫だよ。そんな緊張する相手じゃないさ」
「お前だけだ、そんなこと言えるの。王族なんて会うような相手じゃないぞ」
「聖騎士だって、普通なら会う相手じゃないのに、もう事を済ませただろ」
「お前、言い方。まぁフィーナも普通なら会う相手じゃないかったのか」
「そうそう、でハーレムのあり方の相談というか顔合わせみたいなもんだから」
「では夜に食事を兼ねていくからね。ルナもドレス用意しておいて」
「やっぱり、気軽じゃないじゃないか……」
「リザの保護の件もあるからさ。信頼できる筋に通しておきたいんだ」
セラの口調はいつも通り柔らかい。でも、その目は真剣だった。
なるほど。自分のコネを使うことを、迷いなくやってくれる覚悟。それだけで、俺も腹が決まる。
「了解。俺もそれなりの覚悟はしておく」
そういえば、セラが前に言ってたな——
“王族はハーレムが三桁いる”って。
……ハーレムの先輩ってなんだよ。想像もつかないスケールに、俺は小さくため息をついた。