骨に服を ドレスとレン
ルナがお茶と焼き菓子を用意し始める。材料まで持ち込んでいるあたり、長居する気満々だ。
女子3人は楽しそうだが、若干居心地が悪い。
なんか、座ってるお尻がふわふわする。
レンはルナの調理姿を見つめている。
窓が近いから離れなさい。日光が当たる。
「まあ、落ち着きたまえよ。ルナもね最強スケルトンには興味があるんだよ、祖父が以前倒されたらしい」
「それは、すごい話だが存命なのか?」
「ピンピンしてるよ。道場経営しながら、自分の鍛錬も続けてるようだ」
「ならよかった。だが、祖父を倒されてルナはなんでレンに好意的なんだ」
「御伽話のように聞かされてきたのだよ。強いスケルトンの話をね」
「そういった事だから、今回の衣装代は気にしなくていい。友人に服を着てもらいたいだけだ」
「もう友人だったのか。では俺はなんだろうな」
「債務者以上、恋人未満かな」
「債務者は否定しない」
セトはちょっと立ち上がって、湯を沸かしている鍋の方へ向かう。
背後から「逃げたな」とセラの声が飛ぶ。
しばらくして、レンの着替えが始まった。
戸惑いがちにブラウスを広げ、セラに教わったとおりに腕を通していく。
小さな音を立てて、骨の指が布を扱う。その動作はどこか慎重で、丁寧だった。
ボタンを留める手つきに、無言の集中が滲む。
指先が器用であることに、少し驚いた。
レンは鏡に映る自分をちらりと見ると、少しだけ視線を逸らした。
まるで「こんな姿、初めて見る」と言いたげな表情だった。
鏡に映ったその姿は、上半身だけならまるで普通の少女に見える。
けれど、足元まで視線を移すと、やはり違和感がある。
スカートの下からのぞく脚が、スケルトンのままだった。
そこだけ人工スキンで隠すことも考えたが、足だけ重くなるのではという懸念もある。
顔はすでに人工スキン処理済みなので、直射日光が当たっても問題ない。
ならば、首と鎖骨、いや、肩まで処置したほうがいいかもしれない。
旅人風の服装は完全に骨を隠してくれるので、街の外であれば完璧だ。
ただレンは戦闘時に重く感じるのか、何度も手を振ったり、軽く踏み込んで確かめている。
レンのドレス姿は思いのほかよく似合っていた。
長めの手袋の印象もあるが、セラと並んでもお嬢様にしか見えない。
髪が短いのが難点ではある。
骨のシルエットに見えないのは、ルナがうまく調整してくれているようだ。
なんというか、胸が立派です。
「……似合ってる、って言っていいのか迷うな」
「骨が見えてない今なら、たぶん普通の女の子だ。でも――」
何かが引っかかる。セラやルナには悪いが、目指すものがたぶん違う。
普段着としてこっちの路線も残しておくが、まずは戦闘用の衣装だ。
……彼女は――最強スケルトンなのだから。
満足げなセラ
「……ん? おや、気に入ったかい? なら、ブックマークでもしておきたまえよ。忘れんうちにね♪」




