家族の総意
「次はお腹の修復と、防腐の処理ね」
ヴェルが一歩前に出て、神妙な表情で俺の前に立つ。
その瞳に、いつもの軽口はなかった。
「……私の血を混ぜるわ」
一瞬、場が静まり返る。
アッシュが黙って頷いたことで、その言葉が冗談ではないと知れた。
「待ってください!」
声を上げたのはフィーナだった。
驚きと戸惑いを隠せない様子で、彼女は強く言う。
「それは、一線を超えてしまいます」
「――もう、とっくに超えてる」
ヴェルは、どこか遠い目で言った。
「それに、どんな作用が出るかもわからないんですよ? 再生能力の応用など、前例も――」
「そう、わからない。私の血が良い方に作用するのか、この子を苦しめるのか……それすらもわからない」
ヴェルの声に、微かな揺れが混じっていた。その横で、アッシュがぽつりと口を開く。
「最初はね、この子を延命させて“証拠”として残すつもりだったの」
それが“正義”だと信じていた。だが、いつの間にか――目的は変わっていた。
「でも……セトに頼んだ結果、証拠どうこうじゃなくて、リザ自身を“再生”させようって方向になっちゃったから」
責めるようにも聞こえるが、ヴェルの口元はわずかに緩んでいた。その表情には、どこか誇らしさすら滲んでいる。
「私たちの旦那がそうしたいって言うなら、私たちは、それを手助けしたいのよ」
その言葉に、アッシュも静かに頷く。
フィーナは唇を噛み、しばし沈黙したのち、問いかける。
「……その結果、あなたたちが“狩られる側”になったとしても、ですか?」
「そうよ」
ヴェルの声に、迷いはなかった。
「レンもモナも、セラやルナも――“セトのやりたいようにやってくれ”って言ってるのよ」
「おっと、決定権は俺にあったのか?」
「そうよ。いつだってハーレムの中心は、あなたなんだから」
「……嫁さんほったらかして、他の娘のために動いてる旦那なのにな」
【――それがセト。みんなが好きな、セト。】
レンの文字を見て苦笑が漏れる。
我ながら、何をしてるのか、時々わからなくなる。
でも――それでも、こうして。
みんなが、支えてくれている。
「みんなが了承してるなら、問題ない。……フィーナ、お前は?」
フィーナは、ふっと息を吐き、微笑んだ。
「わかりました。家族の“総意”で問題ありません」
その言葉に、自分も“含まれている”ことを、きっと彼女自身も分かっているのだろう。
――まったく。うちの嫁さんたちは、最強すぎる。




