最強?セトの称号
「私への扱いが不当だと思うのだが」
いつものように勝手に入ってきて、文句を垂れているものがいる。
そう、セラである。
「不当も何も、普通じゃないのか」
「普通ならもう、セトハーレム入りしてると思うんだけど」
「そんなものは存在しない。……とは言えなくなってきたか」
「三人囲うのは貴族様くらいだよ。王族はもう別枠だけど」
「王族ってそんなにすごいの?」
「三桁」
「それ、名前と顔一致するかなぁ」
「まぁ数はともかくセト君も噂にはなってるよ」
冗談みたいな会話を、冗談で流せる相手。
どうでもいいことを、どうでもよさそうに言い合えるのは貴重だ。
最初は俺だって、セラにドキドキした。でもな……行動がな。
「そういう目で見てた時期も、あったのね」
セラがふっと目を細めて言う。
「……あったよ。ちょっとだけ」
「ならいいわ。ゼロじゃないなら、努力のしがいもある」
セラはくるりと背を向ける。
帰るわよ、と言いながら、ドアは開けずに少しだけ立ち止まった。
「……三人が羨ましいとは言わないけど」
「言わないけど?」
「選ばれたら、ちゃんと涙を魅せる準備くらいは、しておくわ」
ドアが静かに閉じた。まだセラは忙しいようだ。
涙は準備するもんじゃないぞ。
こうして仕事して、変な行動を取らないセラなら。
何かしらあったのかもな。
「私はいつでもウェルカムだよ」
突然ドアを開けて、セラが微笑む。
いやこのくらいでいいのだろう。
「早くいけよ」
ちょうどいい。
そんな一幕を、モナが羨ましそうに見てるが、別にあれを目指さなくていいぞ。
てか目指すな。
「セラは遠慮がないというか、セトとある意味一番近いように見える」
「本来なら俺が遠慮する立場だよ、あいつが壁を作らないせいだ」
「お嬢は他の人にはちゃんとしてますよ」
ルナがまだ残ってた。
「あれセラのお供に行かないの?」
「モナの装備を考えるなら、お祖父様の知恵も借りようかと思い。時間をいただきました」
それはありがたいが、お爺さんただの戦闘狂じゃないのね。
「さまざまな武器で遊んで、試してるので、モナさんに合う武器と防具のスタイルが見えてくるかと」
稽古場では若者たちが励んでいる。
セトも冒険者なりやっていれば、ここに混じってもおかしくない。
「筋肉道場も人気のようですよ」
ルナは振り返り俺にいう。
「なぜ俺に言う。戦う気はないよ」
「男子たるもの最強を目指すのでは?」
「家の中でも最弱なので、目指しません」
ちょっと不服そうなルナだが、実際俺に戦闘能力を期待されても困る。
「確かにあの三人なら魔王でも倒しそうですけど」
「魔王いるの?」
「そんなふうに呼ばれるのは、過去の帝国の王様くらいですね」
「第六天魔王だっけ?」
「第七です」
「俺の子供の頃とは違うな、増えたのか?」
「文献によって違うんですが、最初の魔王が曖昧みたいです。私は7人説が好きです」
そういう歴史の話になると、ルナは自然に語調が滑らかになる。淡々としているのに、こういう話好きなんだろうな。
「……ああいうの、また出てきたりするの?」
「出てきたらモナとレンが殴って終わりです」
「それもそれで、どうなんだろうな」
ともあれ魔王は現在存在しない。勝手に名乗ってる奴らもいそうだが。
「レンとヴェルさん達は魔人と呼ばれますよ。というか最強スケルトン不在で、魔人になって消えた説が出てますよ」
レンが少し誇らしげにしてるが、意味わかってる?俺は分からないよ。
「手に負えないもの達を呼ぶのに使うだけで称号ってわけでもないんですけどね」
「魔人二人で私はなんて呼ばれるんだろ。伝説とか呼ばれてたけど」
モナが不思議そうにしてる。
「モナは獣の時は神獣とか呼ばれますね。獣人姿はまだ認識されてないでしょうから」
「認識されたらモナくんも魔人だよ」
いつの間にかディグが話に入ってきた。いつからいた。
「で、モナくんも“魔人扱い”される日は遠くないですねぇ。認識されて、逸話が積み上がれば、勝手にそう呼ばれますよ」
「勝手に名前つけられるの?」
「そういうもんです。強すぎると、名前と別に“肩書き”が増えるんですよ。“神獣”、“魔人”、“聖女”、“最強のヒモ”――」
「最後変なの混じってるな」
「君がそう呼ばれ始めてますよ。特に教会関係から。ブラッドレインのヒモとも」
ディグはニコニコしているが、内容は笑えない。
「異種族三連続って、貴族様以上に異端ではあるんで、記録に残りますよ」
「記録にされても困るんだけど……!」




