光の拳と一撃必殺
前回 終わりの文章が
気配がある。何者かが、6階層へと降りてきた。とありましたが正しくは
気配がある。何者かが、6階層から降りてきた。
でした。すみません
降りてきたのは一人の女性。
緑色の髪の毛を束ねた、白色ローブに皮の手袋。
メガネをかけた女性の姿に見覚えがある。
あれは、昨日見た女性か。いくらゴーレムがいないかったとはいえ。
一人でこの階層までくるようには見えなかった。
だがその疑問は吹き飛ぶことになる。
彼女の拳が光る。その拳がゾンビに当たると破裂したかのようにみえる。
何か叫びながらゾンビの大群を倒していく。
「最初の一撃は、祈りとともに。癒しの左」
いやしてないな、破裂させてる。
「癒しの左、裁きの右──聖撃ッ!」
とんでもない速さで、道を作るかの如く進んでくる。
拳で戦うモンクの類だろうか。
「左が来たら同時に右が来ると思え ワンツー聖撃」
「横攻撃からの下から突き上げ聖撃」膝蹴りでスケルトンが砕けている。
「一撃必殺に信念を!追撃はお情けとしれ!」
俺を守りながら進んでいた3人とは比べ物にならない速さだ。レンの守る入り口まで、息ひとつ乱さず辿り着く。
「危ないところでしたね」
いや危ないのは君だよ。
光魔法と物理攻撃。拳や膝だけ、一瞬だけ光っていた。まるでタイミングを読んだように。もしかして、かなりの実力者なんじゃ……?
「私が来たからにはもう大丈夫です。聖撃教会所属、フィーナ、ここに参上!」
「聞いたことない教会名だけど……それに俺ら、別に追い詰められてなかったよ」
「えっ……そうでしたか?」フィーナがきょとんとした顔で、スケルトンの後ろに立つレンと、モナ、ルナを見る。
「てっきり、絶体絶命の状況だと……」
「いやむしろ、休憩中だった」
「女の子3人と休憩中だなんて裁きの対象ですか」
「何言ってんだ」
「ナニ言ってるんですよ」
こいつなんか似たようなやつ知ってるぞ
ロングでメガネだし、なんか思い出したくないが、似てるな。
いやこっちは天然か、だが、似たような感じは、少しするな。
「とにかく大丈夫だ、あんたは一人で来たのか?」
「そうなんですよ。聖獣様を探してたんですがね」
モナがぴくりとする。隠れようとしてるがもう遅い。
「それで見つけたと」
「いや見つけてませんよ?」
どうも会話が噛み合わない。
俺はモナに視線送る。モナがいやいやしてる。ちょっと可愛い。
「聖獣様は白虎ですよ?この子は狼系の獣人では?」
本気で言ってるようだ。そして、俺もそれは思っていた。
モナは耳四つにしたり、言ってしまえば変化が下手だ。
つまり白虎に見えないのだ。
「聖獣様はそうですね、そちらのショートソードの方の白い髪の毛に近いですね」
切り取った毛がモナより白かったのは、変化が解けて元に戻ったからか。
なんかモナがしょげてるな。いや可愛いよその尻尾も全部。
「聖撃教会は、いわゆる教会とは別組織ですが、協力の要請があったので調べに来たんです。……まあ、無駄足でしたけど」
言葉通りに受け取っていいものか――正直、迷う。それで済むなら、あのセラが、あれほど苦労しているはずがない。
「とりあえず聞きたいことが多い。まずは、聖撃教会って……何だ?」
俺の問いに、フィーナは胸を張った。
「はい! 聖撃教会は、筋力と信仰によって神の加護を受け、拳によってその意志を伝える――戦闘特化型の教会です!」
ルナが一歩後ずさる。
「いわゆる教会とは別組織ですが、神への信仰は同じです。経典には“汝、隣人の筋肉を超えよ”とあります」
「もう無理です」
ルナが本気の顔で小さくつぶやいた。
「教会公認の聖騎士フィーナです」
フィーナは胸をはる。
聖騎士様は剣ではなく拳で語るタイプだった。
そして、なんというか、大きかった。