髪の値段と髪の価値
「ふむ……この毛、まだ良質だ。切り落としたばかりで、状態がいい」
セラはテーブルの上の銀髪の束を指でそっと撫で、ふと口元を歪める。
「――残りを、レンのウィッグにするのだろ、確かにこれ以上のものはない」
セトが口を開く前に、セラは言葉を重ねた。
「もし、全部売ってくれるなら――借金は帳消しだ。いや、3倍払ってもいい。……どうだい?」
ルナが「3倍!?」と小さく叫び、モナが息を呑む。
レンはセトの顔をじっと見つめていた。
セトは答えるのに、一秒も要さなかった。
「だが、断る」
「俺が好きなことの一つはね、金にも見返りにも関係なく、ただ、自分の美学に従って造ること。それだけさ」
セラは唖然とし、そしてすぐ笑った。
「……君ってやつは、ほんと、商談にならないな」
「それにモナの大事なものだ、そばに置いておきたい」
「わかってるよ。商売人として一応聞いたまでだ。気を悪くしないでくれ」
「俺も商売人だ。交渉で気を悪くはしないよ」
「ふふ、君は優しいな。……優しすぎて、ひとつ何か、隠してるように見えるよ?」
こいつは、妖怪なんじゃないか?隠し事ができない。
「モナくんの切り口だが、少し雑な切り方だからルナに揃えさせよう」
「整えてくれるのはありがたいが、モナもいいか?」
モナは無言でうなづき、手を添えてくる。
レンもそっと手を握ってくる。金色の瞳と青い瞳は、どこか誇らしげだった。
ルナが髪を整えてくれてる間、セラはレンに文字を教えている。
どやら筆談ができるのではと、紙と鉛筆を用意してきたらしい。
丁寧に教えている。いつものセラとは違い。静かに教えている姿は綺麗だ。
「見惚れているね、いいよもっと見た前」
訂正、こいつ実は妖怪だ、目がどっか別についてるだろ。
やがてルナが戻ってくる。
「セトさん、モナさんがお呼びですよ」
どういったことか俺が呼ばれているようだ。
「ちょっといってくる」
「ちゃんと感想をいってあげるんだよ」
セラが視線もよこさずに言ってくる。
なるほど、重要かもしれないな。髪を切って少し落ち込んでるモナを励まそう。
ジョジョの名台詞を入れさせていただきました。
ジョセフジョースターの次に露伴先生が好きです。
信念を持って逃げる人と信念を持って逃げない人ですね。