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筆と花嫁と貸衣装

「昨夜はお楽しみでしたね」


「それ当事者じゃない奴が言うセリフな」



「いやセトくんのおかげで助かったよ」

「俺も怒らせた要因でしかないけどな」


キャミ一枚でメガネもつけていないセラは新鮮だ。

少々だらしない状態だが、ここでしかしない格好だ好きにさせておこう。


挿絵(By みてみん)


ルナはひと足さきに出て行った。朝食の準備なんだろうな。


嫁同士なのにルナはセラの世話を焼きたがる。

そしてそれが二人の幸せなのだ。


「俺が異物なんだろうな」


「いやちょうどいい接着剤じゃないかな」

「さいですか」


「ところでさ」

メガネを探しながらセラがいう。


「君 修理も得意だけど、絵も得意だよね」


「絵で食えるほどではなかったから。直す方に回ったんだが?喧嘩なら買うぞ」


「やだな違うよ。まぁオリジナルは技術以上に売れる要素が必要というか」

そこ歯切れ悪いな。


「フィーナの教会を魔王城内部にしようかって話」

「そこに俺の絵でも飾るのか?」


「いや結婚式の絵を描いてみない?」

「はぁ?」


「ドレスの買い付けもすでにしてきたんだ」


どうやらセラにはすでに商売の道筋が見えてるようだが、俺にはまだわからない。


「この教会であげるとこうなりますよってイメージの絵を描いて欲しいの」


「ほう」


「魔王城であげる結婚式。ドレスレンタルあり」

「宗教観どうなってるんだ」


「ノアは大教会が強いから難しいけど、他国や特に帝国なんかはなんでもありよ」


「魔王城の使い方それでいいのか?」

「いいの。維持費を稼げない城はただの廃墟よ」


手厳しい。



「衣装の見本あれば君もヴェルも魔法で作れるでしょ」

「着心地ないし1日しか持たないやつな」


「あの手の服は窮屈だから、着心地ない方が逆にありがたいし。1日しか着ないから」

「しかもメンテが楽だと」

「さすが、わかってる」


「なるほどな、あまり意味のない魔法だと思ってたが、そんな使い方があったか」


話が盛り上がっていた時、扉を開ける音がする。



扉が開き、ルナが顔を見せる。

「なんでまだ着替えてないんですか!」

朝食の準備を終えたらしいルナが戻ってきて、見事なタイミングで怒られた。


ちなみに俺はモラルしか身につけていない。


つまりパンイチだ。



セラは笑って、ルナは本気でため息をついた。





■■◇


想像で絵を描いてみる。


売らなければいけないと描く絵は苦しかったが、純粋に嫁のドレス姿を想像してかく絵は楽しかった。

描いても描いても評価されないあの頃は、本当に辛かった。


いつしか、直す側に周り。それはそれで楽しい。


変な巡り合わせだが、絵を続けていたらレンには出会わなかったかもしれない。

セラやルナとは出会っていたかもしれないが、こんな関係にもならなかっただろう。


モナもヴェルもアッシュもフィーナもリザも


何かの縁で出会っていたかもしれないが、今の関係ではないだろう。

だから俺は今が楽しい。


さて。

あの時の笑顔や、からかうような視線を思い出しながら筆を進める。


練習のつもりが、本気で描いてる自分に笑う。

ただ好きなものを描く。


描けなかった時間も無駄ではなかった。


また筆を持つきっかけになったのが、魔王城の維持費のためとは、なんとも変な話だ。

でも、悪くない理由だと思っている。

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