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宴の後 緩やかに動く

筋肉信者もディグの弟子達もビキニアーマーも騒ぐだけ騒いで、酔い潰れて寝た。

寝れる場所は用意しておいたが無駄になったようだ。


モウラとフィーナも潰れていたので、俺がフィーナを抱え。モウラはカッツェが背負い。


魔王城の部屋に寝かせておいた。


「それで、彼女たちは外で野営なのかい」

いつの間にか帰っていたセラは満足気に笑う。


「野営じゃないよ。ただの酔っ払いだ」


「すみませんご迷惑をおかけしています」

カッツェがセラに謝っている。


「あなたが、カッツェさんですね。私はセラ。魔王夫人です」


にこやかに名乗るセラ。肩書きがやたらと偉そうだが、実態は変態美術商で政務を取り仕切るものだ。

「……は、はぁ」

カッツェは返事に困っている。


「かしこまる必要はないわよ。うちは見ての通りの集落でしかないから」


セラはカッツェに座るように促す。


「見ての通り突貫工事中なの」


「その割に堀とプールは立派でしたが」


「防衛と防災は最初にやっておかないとね」


防衛はともかく、防災はついでだった気もするが、口を挟むのを俺はやめた。



ルナが飲み物を用意してくれる。


うちの正妻3人は宴会が楽しかったようで疲れてもう寝ている。子供か?


まぁ。難しい話になるから、あとでまとめて話してやろう。



「それでね、取引相手に帝国も視野に入れてるから、挨拶がわりに美術品を贈らせてもらったのだけど」

俺は初耳だぞ。さっきカッツェから聞いて知ったけど。


「どれも素晴らしいものでした。特に魔王ノブは刀に惚れ込んでいたようです」



「あれは特に良い出来だったから、お眼鏡にかなって何より」



「返礼というわけではないのですが、魔王ノブが、セト様を招待したいと」


「それが、なぜか橋の上の殴り合いからの宴会になったと」


「大変申し訳ありません」



「いや責めるつもりはないのよ。あれはフィーナも悪いというか。似たもの同士というか」



カッツェは少し安堵する。



「聞いていた話よりも強者揃いで肝を冷やしました」


「あら、あなたも相当に強いでしょ」



「いえ、頑丈なだけです。お恥ずかしい」



「まぁ。正式な日時はあとで決めるとして、帝国行きは決定。セトくんもそれでいいわね」


「任せるよ。誰が行くか。嫁全員が好ましいのだろうけど、手薄になってしまうからな」



「警備においてはうちのものを残すことも可能ですが」

カッツェが口にするが、セラが遮る。


「ごめんなさいね。すぐに他国を信用できる状態でもないのよ」



「すみません」


「いえ、なので日時は保留。行くことだけは決定でよろしいかしら?」


「十分です」




「部屋を用意しましたので、そちらでお休みください。外の子達も、起き次第ご案内します」

ルナが丁寧に告げ、カッツェを連れて部屋を出ていく。


静けさが戻った部屋に残るのは、俺とセラだけ。

さっきまでの宴の熱気が嘘のように、空気がひんやりして感じられる。


「今度は帝国まで行くのか?」

「国のあり方を見る、いい機会でしょ」

セラはまるで近所まで散歩にでも行くような口ぶりだ。


やれやれ、と俺も部屋に戻ろうと腰を上げたとき――セラの手が俺の袖をつかんだ。


「汗を流したいから、もう少し付き合ってよ」

片手で髪をほどきながら、ただ真っ直ぐな視線で俺を見る。……こういうときのセラは、妙に断りづらい。



「今日はずっと動き回ってたじゃないか」

「そうね。あなたもでしょ?」

肩をすくめるセラの髪がさらりと揺れる。


お疲れの嫁を、労うとするか。


いや違うな。

二人でまったりするだけだ。







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