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普通に考えて私が彼との婚約を破棄するわけなくないですか?

作者: ねうしとら

 私は今、前世と今世両方を足した人生で一二を争うほどの修羅場とやらに巻き込まれています。


「だから、俺の婚約者がユーリスと現を抜かしているところをこの目で見たんだ!」


「僕はそんなことしていないって言ってるだろ!」


 目の前で繰り広げられている口論の中心人物は、侯爵令嬢のメアリーさんの不倫を巡った争いです。

 どうやら、メアリーさんは“私”の婚約者であるユーリスと浮気をしていたと言うのです。その現場を見たと主張するのはメアリーさんの婚約者である伯爵子息のドーランさん。


 全く、馬鹿馬鹿しい。私の婚約者であるユーリスがそのような不貞を働くわけがありません。その光を写していない瞳を直してから出直してきていただけますか?


 言うに事欠いてユーリスとメアリーさんが不倫などと。まず、ユーリスは子爵家の次男ですよ?侯爵令嬢のメアリーさんとは釣り合わないでしょう。そんなこともお分かりにならないので?


 一体今までどのような教育を受けてきたのでしょうか。私非常に気になりますの。


 まあ、私としても原因は薄々感づいています。これでも私は転生者で、ここは前世でプレイした乙女ゲームの世界。登場人物のキャラクター像のほとんどは私の頭の中に入っていますから。


 そうですね。どこから説明するべきでしょうか。

 

 まず、私ことローゼ・クリムナーズはゲーム上では所謂『悪役令嬢』と呼ばれるものでした。婚約者であるユーリスの男らしさがまるでないことに嫌気が差し、そもそも好きでもなかったためにユーリスに嫌がらせをするような形で婚約破棄をした正真正銘の悪役令嬢です。


 ゲーム内でのローゼは自分本位でプライドが高く、子爵家のユーリスが伯爵家の自分と釣り合うはずがないと考えていたのでしょう。なんと浅はかな。


 今だから言わせてもらいますが、ユーリスは魅力的な男性です。


 確かに、年頃の女子から見ればヘタレで意気地なしと言う、男性としての魅力が薄く見られてしまうのも仕方がない性格です。


 しかし!一緒に過ごしているうちに分かりました。彼は彼氏としても、旦那としても超優良物件であるという事実が!


 まず、顔が良い。これは何も私が面食いであるということを意味しているわけではありません。……まあ、顔が良くて困ることなんてありませんけど。


 この世界が乙女ゲームの世界であるからなのか、全体的に顔面偏差値が高いのです。前世の価値観を持っている私からしてみれば、私含め渋谷の街で歩けば何件か事務所からスカウトが来ること間違いなしでしょう。


 あれです。幼い頃から一般的な感性とはズレた教育を受けると自分の中ではそれが通常だと認識してしまう現象が起きているのです。つまり、前世の価値観があるが故に、私の中でイケメン判定のボーダーが低くなってしまっている。


 この世界では冴えない顔つきだと評されるユーリスの顔だろうと、私からしてみれば十分イケメンです。文句のつけようがありません。


 それに、主要キャラともなってくると顔面が整いすぎて若干キモいんですよね。なんか人為的に作られたマネキンを見ているようでちょっと違和感が拭えなくて……。


 と言うこともあり、私の中でのユーリスの外見評価は十点満点中の十点。文句のつけようがありませんわ。


 それに、ユーリスの魅力はそれだけではありません。


 常に私のことを慮ってくれているというのが行動からありありと伝わるのです。


 あれは私が十二歳の時でした。この体になって初めての初潮。前世で嫌と言うほど体験したその痛みは今世だろうと慣れることはなく、肉体的に成熟しきっていなかったが故なのか精神が肉体に引っ張られ、無様を晒してしまった時のことです。


 たまたま一緒にいたユーリスが、私が苦しむ様子を見て慌てふためきながら涙目で必死に看病してくれたことは生涯忘れることはないでしょう。


 あの時はまだ十二歳ですよ?性知識すらない子供が大人の力を借りて必死に看病してくれる。

 泣きそうな顔をしているユーリスを見た時は、私が看病される側だというのに『守らねばならぬ』と思ってしまったものです。

 

 まだまだエピソードはありますわよ!


 ユーリスの魅力は思いやりの強さだけでなく、気づかいが出来るという点においても一級品です。私が好きな紅茶の茶葉を把握していますし、私と会話するときも私が不快にならないような間の使い方が完璧なのです。


 もうここまで来るとスパダリどころではありませんね?


 でも今更ですわー!


 まあ、これ以上語るとなると日が暮れてしまいますからここまでにしておきましょうか。


 さて、ユーリス不倫事件の真相ですが、恐らくメアリーさんにあるのでしょう。

 メアリーさんはゲーム内の私が所属していたグループのリーダ格であり、もちろん悪役令嬢です。


 そんな彼女ですが、前世の記憶を取り戻した私は悪役令嬢にならないように立ち回っていたわけです。しかし、私の家と彼女の家はなんだかんだで繋がりがあり、定期的にお会いすることが多かったんですのよね。


 彼女の相手は疲れます。幼い頃からこんなのと付き合っていればゲームの中の私が悪役令嬢になってしまうのも無理はないでしょう。と言うのも、このメアリーさんは何が何でも王子と結婚をしたいらしく、それ以外の貴族など眼中にないのです。


 ……まあ、彼女がほんとに欲しがっているのは富と名誉だけでしょうけど。


 富ならあるではないですか。侯爵家でしょうあなた?


 まあ、どこまでも欲深くなれるのが人間と言う生き物ですから仕方がないと言えば仕方がないのかもしれませんね。


 まあ、つかず離れずというか、地雷を踏まないように丁寧に接してきた私ですが、学園に在籍しているときについカッとなって彼女を言い負かしてしまったことがあるのです。


 まあぶっちゃけ言い負かしたというか、一言言ってやったという表現の方が的確でしょう。


 いつもの如く私が彼女とその取り巻き達とお茶をしていた時のことです。彼女があまりに下級貴族のことを貶すものですから、つい正論パンチを繰り出してしまいました。


『お下品ですよ』


 とね。


 その一言を食らった時の彼女の反応は筆舌に尽くしがたいものがありましたね。一瞬何を言われたのか分からないという表情を浮かべながらも、その直後には顔を真っ赤に染めて恥ずかしそうにしていたのです。


 周りにいた学園の生徒さんたちもひそひそとメアリーさんを笑いものにしていましたから、名誉は地に落ちたんでしょう。


 それからというもの、彼女は私を敵視し始めました。

 何かにつけて嫌がらせをしてくるのです。


 まあ、お子様の嫌がらせなど転生者である私に通用するわけありませんわー!

 こちらも友人関係は持っておりますので、彼女の嫌がらせを難なく躱し続けたのです。


 今回の一件もそれ繋がりでしょう。


 邪魔になった自分の婚約者と、気に食わないやつの婚約者を巻き込んであわよくば婚約破棄まで狙ってやろうという魂胆なのでしょうが、見え透いていますね。


「わ、私はユーリスさんに無理やり連れていかれて……」


「なッ……!?」


「ほら、メアリーもこう言っているだろう!」


 よくもまあぬけぬけとそんなことを言いやがりますね。ユーリスが驚いているではありませんか。


 ならばよろしくてよ。こちらも反撃と行きましょう。


「証拠はあるのでしょうか。見た、などという主観的なものではどちらの言い分が正しいか判断できかねるのでは?」

 

 実際、ただの言いがかりです。メアリーさんのことですから、わざと婚約者であるドーランさんに見えるように仕向けた可能性は大いに有り得ます。


「それに、当時の証人であればこちらにもいらっしゃいますから」


 私がそう言うとどこからともなくぞろぞろと出てくる私のご友人方。


 ええ、私これでも人望は厚い方なのです。


「な、な……ッ!?」


 浅はかですわね。実に浅はかですわ〜!


 なぜ、この程度で私が彼への信頼を無くすと思ったのか。自分本位な人間はこれだから……。


 実際、少しでも信頼関係にヒビが入ってしまえば、今後の人生において添い遂げるであろう殿方との関係ですから、長い目で見れば手痛い一手であったのかもしれませんわね。


 ですが、相手が悪かったですわね。


 私は俗に言うチート転生者ですから。


「では、皆様が"見た"ことを私にお伝えくださいますか?」


 私がそう言ってしまえばあとは消化試合でしたわ。

 出るわ出るわメアリーさんのおいたの数々。


「私はメアリーさんがユーリスさんのことを誘っているところを見ました!」


「ユーリスさんが嫌がっているところを無理やり!」


「婚約者がいる身にもかかわらず自分から殿方の腕を組んでいて……」


 ここまで来てしまえば多勢に無勢。投了せいって感じですわね。


 まさかこんなどんでん返しが待ち受けていたことが想定外だったのか、メアリーさんは最早何も言わなくなってしまいました。それに、ドーランさんもメアリーさんへ訝し気な目を向けています。


 良かったですね、メアリーさん。これならドーランさんとの婚約破棄は上手くいくでしょう。まあ、その後の名誉は考慮しないものとしますが。


 さて、もう用済みですね。もうメアリーさんとお付き合いすることはないでしょうし、私も身に覚えのない泥を被せられたユーリスが可哀そうですし、少し見せつけてやることにしました。


「私はユーリスを信じています。絶対に無実だと思っていましたよ」


 そう一言言って、私は彼の唇を乱暴に奪う。


「……!?!?」


 唐突なキスに思考を奪われてしまったユーリスは、顔を真っ赤にしてしまいました。

 目は完全に泳いでいるし、何も考えられていないようです。


 この場にいる人々も私が行った行為に目を丸くして驚いています。

 ……いえ、私のご友人たちはキャーキャーと黄色い声援を上げていますが。


「では、私はこれで。行きましょうユーリス」


「う、うん……」


 呆然自失となったユーリスの手を引き、私はこの場から去っていきます。

 これにて一件落着ですね。











 

 ……………………



 キ、キキキキキキキスってあれで良かったの!?

 私も生まれて初めてのだよ!?なんか勢いでやっちゃったけど、引かれてないよね!?


 っていうか、何やってんの私!?


 ユーリスへの愛を証明するためとはいえ、これはやりすぎだったんじゃない!?


 前歯がちょっとだけ当たっちゃったような気がするし……。


 それに、まだ唇に温かい感触があああああああああああ。


 もう知らない!全部ユーリスが悪い!


 帰ったら覚悟しておけユーリス。もう私は止まりませんからね!

ちーと転生者()


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