口が悪い俺がピンク頭を一刀両断する話。(物理じゃないよ)
「やーん。クロノス様ったら、だいたーん」
「ふふ、ごめんね。君があまりに可愛いものだから、思わずね。」
「きゃー!もぉー!えっちぃー!!」
「ふふふ」
雲ひとつない青空に、のどかに照らす太陽。
正にお茶会日和のカフェテラスに今日も
馬鹿野郎共の頭の悪いイチャイチャ声が大きく響いている。
ここは貴族の子供達が通う、由緒ある学校。
聖アルテナイア学院だ。
もちろん、ハクアラベル侯爵家の長男である
俺、ジークハイルもここの生徒である。
因みに今俺がいるのは学校にある高位貴族しか入れないカフェテラスなんだか…
「何故、あのピンク頭がここに?」
「さぁ?私が来た時には、もうお二人はあの調子でしたの。おおよそ、クロノス第二殿下がお連れしたのではないですか?」
「あの、馬鹿王子め」
「ふふ」
俺の不敬極まりない発言をマリアナは笑顔で流した。
マリアナはレオナルド侯爵家の長女であり、俺の大切な婚約者だ。侯爵家である俺達は、幼い頃から、お互い切磋琢磨し家柄に恥じぬよう努力をし続けている。
今日も、後日我が家で開かれるパーティーの打ち合わせをする為、カフェテラスで約束をしていた。
パーティーには、婚約者であるマリアナはもちろん貴族の重鎮もお招きするため、事前に情報交換は必須なのである。俺もマリアナも忙しい身であるため、なるべく学園で話せることは会って話し合いをする事が多い。
…まぁ、俺の場合、マリアナに会いたいってのもあるがな。
「あー!ジーク君はっけーん!」
と、俺が考え込んでいると、ピンク頭の馬鹿デカい声が聞こえてきた。
「もぉー!ジーク君、全然会えないから、元気かなって心配しちゃったよー!」
ピンク頭を伴っているクロノス殿下が俺を鋭い視線で睨んでいる。
おーこわっ。
「ミル、ジーク君に会えなくて寂しかったなぁ」チラ
「…………」
俺は無言で、目の前の資料に目を向ける。
お?メバルカナイ公爵家のご子息もいらっしゃるのか。
「もう、恥ずかしがりやさんなんだからぁー!!そうだ!今日の帰り、2人でお茶しにいこ??それなら、沢山話せるもんねぇ!」チラ
「…………」
確か、公爵家では最近、新たな観光事業を始めたとか。話のタネに調べてみる必要があるな。
「ふふ、ジーク君ってば、照れちゃってー!
って…あら?マリアナさんもいたのね?
だめよ?マリアナさん!いくら婚約者だからってジーク君を束縛しちゃあ!かわいそうじゃない!」
マリアナはニコニコ顔でスルーしている。
「ミル。2人は忙しいようだ。お茶は私が良いところを何店か知っているから、教えよう。なんだったら、私が一緒にいくから」
「んー!ちゃんと素敵な所じゃないとダメよ?」
「うん。もちろんだよ。」
「じゃあね?ジーク君また!」
ピンク頭はご機嫌に殿下と共に出口に消えていった。
ようやく2人に静寂が訪れる。
「…ふっ。ふふ、やだもう!笑わせないでよジーク」
「…俺は何もしていないが?」
「確かに、ふふっ…けど、あんなにチラチラ見ていたのに、あなた何も話さずに。」
「男爵家の身分の者が、許可も得ず高位貴族に話しかけるなど、不敬もいいとこだ。」
「あら?でも、ミルティさんは魅力的?らしいので、殿下だけじゃなく色々な方が気にかけているわよ?ほら、殿下の側近予定のララベリア様とか」
「あんな、馬鹿面の頭沸いているようなやつのどこがいいのだ。だが…殿下の側近もとなると、ますます近寄らない方がいいな。」
「まぁ、相変わらず口が悪い事。…でも、そうね。私もお父様から色々聞いてますわ。」
確かマリアナの父君は王宮に勤めているはずだ。うん、…クロノス殿下、やっぱり終わったな。
「でも、私も鼻が高いわ」
「?何の話だ?」
「ミルティさんのことよ。今ね、あの方に夢中になる殿方が多くて、その婚約者の方々が相次いで婚約破棄をしているのよ。」
「馬鹿共め。貴族の使命を何だと思っている」
「ふふ、そんな風に全然ジークが靡かないから、沢山の方々からのジークの評価が上がっているの」
「意味がわからないな。俺にはマリアナがいるのだから当たり前だろう?」
「まぁ、ジークったら。」
微笑みながら白い綺麗な手をなでると、マリアナは頬をやんわりと赤らめた。
うん、可愛い。
「そうだ。今日の帰り、久しぶりにどこかにお茶でもしにいこうか」
「あら。ふふ、いいわね。エスコートをお願いできるかしら?」
「あぁ、もちろん。俺の愛しい人」
俺がクロノス殿下やピンク頭にも近づかなかったのはある訳がある。俺はあの二人や側近達のたどり着く未来を知っているのだ。
もう、お気づきだろう。
俺、田中勝ことジークハイルは転生者だ。
ここが、妹が熱心に語っていた乙女ゲーム「君と薔薇のロンド」の世界だと気づいたのは俺が6歳の時だ。
ゲーム自体はありきたりな、一人の少女が多数のイケメンと恋愛していく内容で、何を隠そう、ジークハイルも攻略者の一人だ。
ジークハイルは完璧主義が故に他者にも自分にも厳しいキャラクターである。
そんな中、自分には理解できない思考の主人公ちゃんが現れ、助けていくうちに惚れてしまうのだ。とんだチョロ男である。
かくいう俺はこのゲームにあまり思い入れがないのと、ピンク頭のゆるゆる思考が気に入らなかったので、早々にゲームルートから離脱した。
今では可愛い婚約者もでき、毎日幸せなので
大満足である。だが、ピンク頭のヒロインが何かと構ってくるので、一応目を光らせ警戒はしている。
というか、あの行動や言動から見て明らかに向こうも転生者だと踏んでいるので、侯爵家の暗部を使い自分やマリアナの周りもしっかりと固めている。
流石にもう、心配はないと思っているが…
「だから、何故こうなるんだ。馬鹿共め」
「ジーク、お口が悪いわ。でも、そうね。
これはどうしたらいいのかしら」
目の前には、クロノス殿下を筆頭に俺以外の攻略対象達や信者を引き連れてドヤ顔のピンク頭。
昼食をマリアナと共にしようと高位貴族専用の学食の扉を開けた瞬間、目の前にいる有象無象に取り囲まれた。
「…皆が集まり、私たちに何か用でも?」
前に出て俺はそっとマリアナを引き寄せる。
「ジーク君、心配しないで!私たちはみんな味方よ!!」
…おい、その味方共が何で皆、俺を睨んでいる。はったおすぞ。
隣のマリアナを見ると、何故がワクワクしたような表情をしている。さては楽しんでるな!
はい、可愛い。
「マリアナさん!もういい加減、ジーク君を解放してあげて!ジーク君の悩みに付け込んで、婚約を強制するなんて酷すぎるわ!!」
ジークハイルの悩みって、確か他者へ完璧を求めるも周りがついてきてくれず孤独を感じる設定だっけ??
マリアナはピンク頭にニコニコと笑顔をむけている。
「そうやって、笑っていられるのも今のうちよ!!あなたの悪行を今ここに明らかにするわ?!」
2回目のドヤ顔に後ろの有象無象が拍手で盛り上げている。
うるさいし、意味不明だし、めんどくさい。
というか、こんな茶番のために何で俺とマリアナの時間を邪魔されなくちゃいけない。
「…………」
俺は無言で手を上げると、我が家の暗部が姿を現した。
「きゃっ!なに?」
「マリアナの悪行とは、このことか?」
「えっ??何でいつの間に?」
暗部の者がピンク頭から奪った紙を読むと、本当にくだらないものばかりだった。
「そ、そうなの!ジーク君!特にその、私の教科書を盗んで破くとか最低でしょ?あと、私を池に落としたり、水をかけたり!」
「最低だ!」「悪魔め!」
有象無象共も、野次を飛ばし始めた。
マリアナを見ると、目をキラッキラッさせて、場を楽しんでいた。こういう、珍しいイベントごとが大好きだもんなぁ。
だが、もうめんどくさいから一気にかたをつけよう。
「何故、マリアナがこんなことをすると?」
「それは、マリアナさんが私を嫌って!」
「マリアナは普段、上層階にある高位の貴族棟で勉学に励んでいる。下層階の貴族棟にいる、ほぼ面識のない君を何故マリアナが嫌うと?」
「そっ、それはジーク君が私を好きな事を知って、嫉妬して!」
「私がいつ、君を好きだと?」
「えっ?いや、でもほら、私…え?」
はい、破綻ー!前提がグラグラ過ぎて話にもならん。
「お引き取り願おう。今なら勘違いで、すませられる」
「え?いや、でも!私はジーク君のためを思って」
「男爵家やそれに伴う人間が、我々侯爵家を虚偽の証拠で貶めようとしたと学院に申告してもいいのだが?」
『!?!』
瞬間、後の有象無象の顔が青ざめだした。
もちろん、クロノス殿下も。
学院に申告すると、クロノス殿下やその他の男共とピンク頭の関係も調査され明るみにでる。
それは、当然、殿下の父親である陛下にも公式に知られることになるだろう。
まぁ、もうどうせ全部バレてるだろうが。
「ミ、ミル、全ては我々の勘違いだったんだ。もう、いいだろう?二人は納得して一緒にいるんだ。」
ほーら!殿下も焦ってるぞー
はよ、去れ。
「でも、ジーク君を助けないと!」
「2人は助けなど必要ないんだよ!」
「でもでも」
「だから」
一向に引き下がらないピンク頭に、めちゃくちゃ焦りまくってる殿下と有象無象。
そして、その様子をニコニコと見守る、愛しいマリアナ。
…うぜぇ。
あっ、愛しいマリアナ以外ね。
「…馬鹿共が馬鹿面で馬鹿みたいなことほざきやがって」
「!??!」
「え?あの?ジーク君?」
「あらあら、まぁまぁ。」
俺の突然の暴言に狼狽える2人。
…いいか、一回しか言わないからよく聞けよ!!
「私はマリアナをこころから愛している!!
婚約も結婚もマリアナ以外とは微塵も考えていない!!わかったなら、私とマリアナの貴重な時間をこれ以上削らせるな!失せろ!ピンク頭!!」
「「ひっ!!」」
俺の心からの叫びに完全にビビったピンク頭と殿下、そして有象無象共はあっという間にどこかに逃げていった。
「あらあら、本当にお口が悪いわぁ。でも、とっても素敵だったわジーク。」
「つい、口から出てしまった。だが、後悔はしていない。」
「ふふ、では、改めてお昼にしましょうか。」
こうして俺達は、静かになった食堂で二人の時間を過ごした。
その後、マリアナの父君が何故かこの茶番劇を聞きつけ、正式に王室へと抗議。
前々から素行が悪かったクロノス殿下は、王位継承権を剥奪となり、ピンク頭と婚約。男爵家へと降格した。
ピンク頭は気が多すぎるので、今後クロノスさんも大変な思いをすることだろう。
因みに俺とマリアナは無事婚姻を果たすことができた。これからより一層力を合わせて侯爵家を盛り上げていく所存だ。
やがて子供も2人授かり、幸せな生活を送っていった。