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僕と加奈子の狂人記  作者: 永丘麻呂
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最果ての地へ

「なんか、熱っぽいんだよね。クラクラする。」

加奈子は僕に呟く。


「昨日、お互い飲みすぎたね。でも、時には2人で飲むのも悪くないもんだね。」

僕の言葉に、加奈子は小さく微笑んでくれた。


僕と加奈子が付き合い始めたのは約3年前。

ここで同棲を始めたのもほぼ同時だった。


僕は、加奈子にホットミルクを作ってあげた。

朝のホットミルクは、加奈子にとって日課なのだ。


しかし、加奈子は、ホットミルクを飲んだ途端大きく咳き込んでしまった。

僕に背をむけ、苦しそうにしている。

そんな加奈子を見ていると、僕はとても不安になった。


「今日はゆっくりしなよ。とりあえず、コンビニで朝食買いに行ってくるね。」


「水もお願いしていい?食べ物は大丈夫。…なんだか気持ち悪くて」

横向きなった加奈子は、無防備な体勢で答えた。


「本当にありがとね。」

加奈子は、そのままゆっくり目を閉じた。


今日の加奈子は機嫌がいい。本当に良かった。

僕は、加奈子が眠りにつくまで、優しくじっと見つめた。



玄関の扉を開けると、心地よい風が僕を撫でる。


「よく頑張ったね」


優しさを孕んだ風が僕を労った。


そして、ここいらでは珍しいハクセキレイが、僕に向かってゆっくりと歩いてくる。


「今日は何くれるの?」


これは食べ物じゃないよ。彼(彼女)にそう話すと、どことなく理解したかのように元気を無くした。


加奈子との生活は楽じゃない。


機嫌が悪いと皿を投げ、時には僕のコートをカッターで八つ裂きにすることもあった。


加奈子は悪くないよ。悪いのは…

ここでバシッと答えられたら、

もし、咎めることができたのなら、加奈子と僕はどれだけ救われたことか。


そんなことを考えると、僕の心は憂鬱に支配される。

でも、心配はいらない。


憂鬱な日常にも、光は射す。


それは、風と鳥が、まさに今日教えてくれた。


さあ、行こう

最果ての地へ


僕は玄関の鍵を2つ閉めた。

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