第9話
ドワーフの頭領が、門に近づくと、大きな門が音を立てて開いた。中には通路があり真ん中に赤いじゅうたんが、しかれていた。通路のわきには、松明が、掲げられ、勇ましいドワーフの像が並んでいた。
「お帰りなさいませ。ムトラス様」
衛兵のドワーフが、かしこまって頭領のムトラスに頭を下げた。
「うむ。飯といいたいところだが、こいつらをしこんで、とっとと追い出したいのでな。おまえらは先に休んでいいぞ」
ムトラスの後ろから、ぞろぞろとついて来ていた他のドワーフたちは、それを聞くと、早々に城の中のどこかへと散って行った。
「さて、おまえらはこっちだ」
ムトラスは、右手の通路をまっすぐ行くと、下へと降りていく階段を下りて行った。階段はらせん状で、ぐるぐる回るような感じで階段は下へ下へと降りていった。そして一番下まで降りると、壁には剣や槍や斧、弓といった武器がずらりと並んでいた。部屋の中央には大きな円形の舞台があった。まなみが不思議そうにその舞台に駆け寄って、触っていると、ムトラスが、威厳のある声でいった。
「この舞台の上にあがって、戦士たちが戦うんだ。ここは武器の訓練場所だ」
「僕達をこんなところに連れてきてどうするんだ」
としゆきは、怯えてはいたけれども、勇気を奮い起こして、抗議した。
「その前に誰に狙われているんだ。この洞窟内にはこうもりはいるが、カラスなんてやってはこないからな」
訝しげな目で、ムトラスはとしゆきとまなみを見た。
「それにはわたしが答えよう。狙われているのは彼らではなくて、我らだ」
としゆきの肩にのっているドルダが、口を開いた。
「最初からそんな気はしていたが、何者だ」
そこで、ドルダは、としゆき達に話したことを、かいつまんで話した。それを聞いたムトラスは、ふんと鼻を鳴らした。
「そういうことか。魔法使いなんぞに、探られても困るからな。よけい、とっとと出て行ってもらわねばな」
ムトラスはとしゆきの方へやってくると肩をつかんだ。
「おまえはいい体格をしている。少し剣を覚えれば、さっきのカラスぐらいなら、しのげるだろう」
「あなたが、洞窟の外まで、守ってくれれば、ぼくらは無事に外に出れる」
としゆきは、慌ててそう口を出した。
「この洞窟はそんなに複雑じゃない。ただ外に出るには二、三日かかるのだ」
ムトラスは、さっそく剣の訓練をすべく、壁にかかっている大ぶりの剣を手にとった。そして円形の舞台へと上がった。
「わしだって、そんなに暇じゃない。そもそもなんの義理があって、おまえらを守らねばならぬのだ。かといって、人間の死体が、転がっているのも困るしな。さっ、よけいなおしゃべりはもういい。さっそく、特訓だ」
問答無用な様子で、ムトラスは剣を振りかざすと、顔でくいっと他の壁の剣を指し示し、としゆきに手にとるように、指図した。としゆきは、説得を、あきらめると壁にかかっている剣を手にとった。その時、肩にのっていたドルダとダークは、としゆきが戦いやすいように地面へと下りた。剣をとり、円形の舞台に上がると、としゆきは呟いた。
「お、重い」
剣は小ぶりの物だったが、片手で持つには大変だった。としゆきは慌てて両手でしっかり持って剣を構えた。
「そんなへっぴり腰でどうする」
いつのまにか、ムトラスはとしゆきの後ろに回りこみ、その大きな剣の刀身で、としゆきの腰を叩いた。ひんやりとした剣の刀身に、としゆきは、どきりとした。このままぐさりと殺られてしまったら、一巻の終わりだ。とにかく敵に後ろをとられないようにしなくちゃ。としゆきは、冷や冷やしながらも、いわれたように腰の位置を直し、後ろにまわったムトラスに剣を向けた。
「よし、向かってこい」
なんでも受けて立つといった素ぶりでムトラスはとしゆきの前に立ちはだかった。
「ようし。行くぞ、いやーっ」
まるでゲームの中の主人公になった気分で、としゆきはムトラスの剣めがけて、叩きこんだ。
ガキッ
威勢のいい剣の音が鳴り響き、としゆきの剣はムトラスの剣に当たったが、そのとたん、ものすごい勢いで地べたにたたきつけられた。
「いたっ」
「駄目だぞ、そんなんじゃ。まあ、飛びこんでくる度胸は、いいけどな」
ムトラスの剣の力の方が強く、としゆきの剣は押さえこまれてしまったのだ。
「くそっ」
としゆきは、悔しそうに顔をゆがめると、また剣を手にとり、再びムトラスへと立ち向かった。何度も何度も、としゆきは叩きつけられても、めげずに立ち上がった。そんな様子を見ていたまなみは、としゆきがこんなに一生懸命やっているのだから、自分も何かしなければと思った。
一緒にその様子を見つめていた四匹のドラゴンは、まなみが真剣な表情でいう言葉に耳を傾けた。
「わたしも魔法を覚えたい」
「ちびのくせに、生意気な」




