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四匹のドラゴン  作者: はやぶさ
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第52話

「みんなお願い、魔法使いがこの部屋の中にいるの。見つけだして捕まえて!」


「ご主人様のいう通りに」


下の階でゴブリンと戦っていたゴブリン達も、まなみの前に現れ、先ほどの戦いが終わったことをまなみは悟った。そしてまなみの描いたドワーフや、オークも、見えない敵に対して戦いを挑もうと、大きなときの声をあげた。皆がいっせいにとしゆきたちの方へ近づこうとすると、稲光のような鋭い光と大音量が耳元に届いたかと思うと、同時に皆床に叩きつけられた。全員が、したたかに頭を打ちつけられた中、銀色のオオカミだけが、ひらりとかわし、よく効く鼻で、辺りの匂いを嗅いでいた。そうして部屋の隅まで行くと、ワォーッと一声叫んだ。どうやらそこに魔法使いがいるらしかった。しかしまなみの目には、オオカミしかうつっていなかった。それでもオオカミは、魔法使いがいるのがわかるらしく、低いうなり声をたてていた。


『どうしたらいい?!』


まなみが頭を抱えていると、ひらひらと何かが飛んできた。それはあの水色のチョウチョだった。チョウチョは、まなみたちの上空を飛んでいくと、オオカミのいる辺りにくると、ぴたりとその上空にとまった。何もないはずなのに、チョウは確実に何かの上に止まっているようだった。まなみが、ひょっとしてと思った瞬間、ラビネは魔法で剣を作り出し、思い切り剣を見えない何かに投げつけた。


「うっ!」


突然うめき声が聞こえたかと思うと、見るとマントを羽織った初老の男が額から血を流していた。


「ふっ。よく見破ったな。しかしそう簡単にわしは捕まらんぞ」


「姿さえ見えればこっちのものだ」


ラビネは落ちた剣を拾うと、魔法使いに向かって刃を向けた。


「ははっ、それはどうかな」


魔法使いが杖を一振りすると、まなみの描いた生き物たちは、きれいさっぱり消え去った。まなみは慌ててスケッチブックを見た。見ると生き物たちは、元通りの絵の姿に戻っていた。


「おまえの子供だましの絵には、絵の中にもどってもらった。雑魚は少ない方がいいからな」


まなみは、むっとした。


『その雑魚に見破られたのは、どこのどいつよ! ラビネにこてんぱんにのされちゃえばいいのよ』


ラビネは憎しみをこめた目で、魔法使いを見ると、剣を振りかざした。と、とたんに魔法使いの姿が、ぱっと変わった。そこにいたのは、ラビネと同じくらいの背格好をした若そうな剣士だった。


「さあ、恨みを晴らすのだ。そいつはおまえに殺された敵国の剣士だぞ、ラビネ。斬っても斬っても、おまえの前に立ちはだかるぞ。はははっ」


「一度勝った相手に負けるはずがない!」


ラビネはそういうと、敵国の剣士の亡霊に剣を叩きこんだ。


カン、ガキッ、カン、ガキッ


敵国の剣士も負けてはいず、ラビネの剣に打ちこんでくる。ラビネは剣を受け止め、勢いよくなぎはらい、相手が体勢を立て直す前に、斬りこみ、相手の胸を突こうとする。


「いや、はっ!」


相手も、すぐさま反応し、身体を反って剣のきっさきから逃れた。しかしそこからが本番だった。相手は自分の命など、返りみず反撃し出したのだ。ラビネが相手の腕を傷つけ、足を斬りつけても、相手は痛みを感じないのか、手を止めずに次から次へと剣を繰り出してくる。


「くそっ。早くくたばれ」


ラビネの口からそんな声がもれ、まなみは信じられない思いだった。いつもは、やさしいラビネからは想像もつかない、憎しみに満ちた声を聞き、まなみは暗い気持ちになった。


『ドラゴンになった彼らは、それぞれの国の争いから、逃れることができた。おしまい』


あの時グリラスが話してくれた話が、急に耳元に蘇ってきた。


 今、ラビネが戦っているのはその頃の争いの敵国の人なのだ。としゆきを助けるため、ロザリオ姫を助けるため、グリラスを助けるため、そのために戦っている。でもどうだろう。ラビネの心は今、憎しみに満ちあふれている。その時戦ってたみたいに……。戦いをやめさせなきゃ!


ふと気がつくと、ドルダが、ラビネが戦っている間に、としゆきたちのそばに駆けよろうとしていた。しかしどこからともなく、巨大な火の玉が現れ、ドルダを攻撃した。


「くっ、どうしたらいいんだ」


ドルダも水の魔法を使い、火の玉を消し去ったが、あの手この手で、様々な魔法がやってくる。


今までじっと黙りこんでいたグリラスが叫んだ。


「魔法使いは、ぼくたちの憎しみの力を魔法の力にしようとしている。ぼくたちが憎めば憎むほど、魔法使いは強くなる」


「はっはっはっ、よくわかったな。戦っている者には必ずそれがつきまとってくる。おまえらの負けだ。わしを恨め、さすれば、わしはもっともっと強くなる。人間とは愚かな者だ。おまえらに勝ち目はない」


魔法使いが豪快に笑う中、ドルダが涙を見せた。


「ドルダ、泣いてるの?」

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