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四匹のドラゴン  作者: はやぶさ
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第38話

そこで待っていたのは、まなみやとしゆきが出会ったヴィルアルで間違いなかったが、歓迎している感じではなかった。


「長旅ごくろうさまといいたいところだが、どうやら今日は王の用で来たわけではないだろう。ドルダ」


鋭い目つきで、ヴィルアルがそういうと、ドルダは、申し訳なさそうな顔をして、頷いた。


「その通りだ。ヴィルアル殿。まずは今日は三人の連れがいる」


「そなたの兄弟だな」


「なぜ、それを」


 ドルダは目を見開いて尋ねた。


「魔法は便利なものだ。しかし知らなくていいことまで知らせてくるのが魔法というものだ。君らはそれを知っているのかい」


 冷ややかな視線で、四人の顔をのぞきこむと、うっすらと笑いを浮かべた。


「魔法というものは生やさしいものではないぞ」


 ヴィルアルのその言葉に、ラビネは一歩前へとざっと出た。


「わかっています。いえ、わかってはいないと思いますが、わたしらは全てを投げ打って、ここまで来ました。もうあと戻りはできないのです。人間を捨てる覚悟で来ました」


 ラビネの真剣なまなざしにヴィルアルは頷いた。


「ほう! 人間を捨てると。どうやらそれなりの覚悟を持って来られたようだが、しかし覚悟だけでは魔法は身につかない。やはり少しは魔法の才能がなければな。見たところ、魔法の才能はなさそうに見える」


「わたしたちはどうしても人間以外のものにならなくてはいけないのです。それには魔法の杖が必要なのです」


「君らは変わり身の術が使いたいと」


 目を細めながら、ヴィルアルは頭を振った。


「変わり身の術はかなり高度な魔法だ。それを使いこなすには熟練の技が必要だ」


「使いこなすとは、ある生き物から人間へ、そしてその生き物から人間へ戻る術ということですよね。しかしわたしたちは、ある生き物に自分の身を変えたならば、そこから先人間に戻る必要はありません。それならば、なんとかなるのではないですか。どうか魔法の杖を貸してください」


 ラビネが挑むような口調でそういうと、ヴィルアルは目を大きく見開き、怒った。


「魔法の杖は人に貸すものではない! 君は魔法をあなどっているのか」


「待ってください、ヴィルアル殿」


 あわててドルダは、二人の間に割って入った。


「なぜわたしたちが、他の生き物になろうとしているのかそれについてお話を聞いていただきたい。せめて話だけでもお願いです」


 ドルダの熱心な頼みに、ヴィルアルもしぶしぶ引き下がった。


「ならば、その話を聞いてみようじゃないか」


 そこで、ドルダたちは、今までの話をヴィルアルに聞かせた。腕組みしながら、彼らの話を聞いていたヴィルアルだが、急に肩を落として呟いた。


「戦争とは愚かなことだ。そしてそれに気づかない人間も愚かだ」


「わたしたちは常に愚かなのかもしれません。そしてわたしら四人が願ったことは、これもまた愚かなことであって、いけないことかもしれません」


 ラビネは目をしばたたきながら、うつむいた。ドルダ、グリラス、ダークもうなだれながらも、足下の地面をじっと見つめた。


「それについては、エルフであるわたしにもわからない。しかし残念ながら魔法の杖を貸すわけにもいかない。いや、貸したところで、魔法はかからないだろう。魔法には才能と修行が必要だからな」


「わたしら四人には魔法の才能がないと? 魔法が使えないということですか」


 ラビネの必死な想いが通じたのか、ヴィルアルは一つの提案を口にした。


「魔法の杖を使わずとも、代償を払っていただければ、魔法がすぐ使えるようになることがあることはある」


「その代償とは?」


 ドルダが、眉を寄せながらヴィルアルに尋ねた。


「君たちが今まで培ってきた剣の力や、学んできた知恵だ」


「人でなくなったら、剣の力なんて、いらねえや」


今までずっと黙ってきたダークが、吐き捨てるようにそういうと、皆も一様に頷いた。


「学んできたものが役に立つなら、喜んで差し出します」


 ラビネが、ほっとした様子でいうと、ヴィルアルは、一言こういった。


「本当にいいのか。君の場合は剣の力ではなく、学んできた詩のすばらしさだ」


 それを聞いたラビネが、今度は驚く番だった。


「なぜ、わたしだけ、詩の知識なのですか」


「魔法の代償というのは、その人の中で一番大事なものを要求してくる。本当にいいのか」


 ラビネは、一瞬血の気がぬけていくような気がした。大事な知識を何もかも失って、それでも生きていかなければならないのかと思うと、絶望的な気持ちになった。


 その時、グリラスがラビネの背を叩いた。


「ぼくらがいるよ」


 グリラスのその一言に、ドルダもダークも大きく頷いた。そしてラビネは、はっとした。ドルダやグリラスとダークだって、今までのものをすべて投げ打って、ここまで来てくれたのだ。それもこれも自分が、いい出したことなのだ。何を今更いっている。そう考えたとき、ラビネの心は決まった。


「わかりました。今までの詩の知識を魔法の代償として払います」


「本当にいいのだね」


「はい」


「他の方たちも、それでよろしいかな」


 ヴィルアルが、皆を見回して、同意を求めると、皆深く頷いた。


「よろしい。これより魔法の儀式を行う。しかしこれはエルフの魔法の儀式。ここから先の記憶は消させてもらうが、それでもよいかな」


「もちろんだ、ヴィルアル殿」


 ドルダがそういうと、皆も同意した。


 


その後、ラビネたちがどうしたのか、まなみは夢の中で見ることはできなかった。それでもただひたすら悲しい気持ちが、まなみの中では漂っていた。


 悲しくて、悲しくて、気がついた時には、夜は明けて、朝になっていた。

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