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四匹のドラゴン  作者: はやぶさ
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第37話

「けっ。人間以外なものっていったい何になるっていうんだよ」


「それも含めて考えてみてくれ。明日皆の答えを聞く」


 こうして四人は魔法について、じっくり考えてみることにした。


次の日、朝食を食べ終わるとドルダは皆を呼び集めてこういった。


「昨日ラビネがいっていた変わり身の術だが、わたしもよく考えてみた。兄弟で殺し合うことなどできるのかどうかについて一晩中考えた。そして父の願いだった我が家の家系の騎士という道筋を途絶えさせていいかについても、もちろん考えた」


ドルダはいったん言葉を切り、深いため息をついた。


「いろんなことを考えたが、やはり兄弟同士で斬りあうのは忍びない。家系や今までのことも大事だが、一番大事なのは我らが生きていることだ。それなのにお互い殺し合うなどあってはならないことだ。わたしは魔法を使って、人間以外の者になり皆で生き延びる道を選んでもよいと思っている。皆はどうだ」


 弟たちの顔を見回しながら、ドルダは皆の意見を求めた。すると、グリラスは口を開くと、ぽつんといった。


「人が人を殺すこと自体、おかしい」


 その言葉の意味の重さを考えた時、皆はうなだれた。しーんと静まった部屋に、誰もが次の言葉を投げるのをためらった。しばらく沈黙が続いたが、その静けさに耐えられなくなったダークが、皆に声をかけた。


「なら、その変わり身の術ってやつを使って人間をやめるしかないだろ。そうだろ」


 ダークの言葉に皆が深くうなずいた。ラビネはいった。


「魔法の調合薬は、すぐできると思います。意外に簡単に手に入るものばかりだから。けど、魔法を使うには魔法の杖が必要です」


「魔法のことなら、エルフに訊くのが一番だろう。わたしは王の所用で何度かエルフの長に会ったことがある。その長に頼んでみよう」


ドルダがそういうと、グリラスが、おずおずといった。


「ぼくらは魔法使いになるの」


「魔法使いになるわけではないが、魔法を覚えないといけないだろうな。それも含めて、エルフの長に訊いてみよう」


ドルダは皆を見回して、こう告げた。


「そうと決まったら、旅支度を皆してくれ。執事のベルキュームには今までの給金をはずみ、ここを引き払うよういっておく。長い間務めてくれた礼を皆いっておくように」


ドルダの言葉に、皆が一様に大きく頷くと、あとは皆各自の部屋へ行き、部屋の片づけと旅の身支度を整え出した。


 ラビネは自分からいい出したこととはいえ、本当にこれでいいのか、他に答えはないのか、いろんな思いが、駆けめぐっていた。そして二階の自分の部屋から見える景色をながめながら、ロザリオ姫のことを考えた。友と認めてくれた姫を裏切るのは、非常に胸が痛かったが、しかしドルダのいう通り、兄弟で殺し合うことは、どうあってもできない相談だった。だからといって、魔法という未知の領域に入りこみ、自らの姿を変えるのも、正直怖かった。これからどんな運命が待っているのか、誰にもわからない。けれども進むしかほかないのも、本当のところだった。すべては戦争のせいなのだ。吟遊詩人も歌っている。戦争ほど愚かなことはないと。自分が、騎士ではなく、吟遊詩人であったら、こんなことはなかったのだろうか。いつまでもロザリオ姫のそばにいて、詩を作っていたのだろうか。ラビネは思案にくれていたが、そのうち目を閉じ、心を落ち着かせた。ロザリオ姫とは、離れてしまうが、きっと心はつながっている。遠くからロザリオ姫の無事を祈ろう。そう思うとラビネは思い残すことのないように部屋を片づけ始めた。


しばらくして、皆が旅支度の準備をし終えると、居間に集まってきた。執事のベルキュームが、四人にそれぞれ旅先で食べる食料を渡すと、皆が一様に瞳をうるませ、今まで長年仕えてくれた礼を述べた。するとベルキュームは、年老いたやさしい目で、四人の兄弟を見回して、大きく頷いた。


「あなた方がどんな決断をしたかわたしは存じませんが、大旦那様がもしおられたら、あなた方が皆、立派な大人になったことをきっと心から喜んでくれたことでしょう」


「本当なら、ベルキュームの今後の身の振り方も手配しなければならなかったのだが、本当にすまないベルキューム」


 ドルダは、申し訳なさそうに頭を下げた。それに対してベルキュームは、ゆっくり首を振った。


「めっそうもございません。今までよくして頂けただけで十分です。それよりも、皆様お体をお大切にしてくださいね」


「ベルキュームも元気で」


 皆、ベルキュームにそれぞれ挨拶をかわすと、自分らの荷物をまとめて、外へと出た。外には、四人の馬が用意され、すぐにでも出かけられるようになっていた。


 ラビネは、生まれてから慣れ親しんできたこの屋敷に頭を下げた。ドルダ、グリラス、ダークも同じように頭を下げ、最後の別れを惜しむと、四人はそれぞれの馬に荷物をくくりつけ、馬にまたがった。


 屋敷の入り口には、ベルキュームや、その他の使用人も出てきて、四人を見送ろうと、一列に並んだ。


「皆、今までありがとう。我々はこれより長い旅路へと旅立つ。皆もそれぞれの道を行ってほしい。それではさらばだ」


 ドルダが家長として、堂々とした声で言い放つと、それとともに、四人の馬たちは、長い足で駆け出した。


 こうしてラビネたちはエルフの村へと旅立った。いくつもの森や林、草原を駆けぬけ、二週間ほど馬上での旅を続け、ヴィルアル達の住んでいる村へとたどり着くことができた。

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