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四匹のドラゴン  作者: はやぶさ
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第3話

まなみは薄汚れたぬいぐるみや人形を、手でつまんだ。昔は、真っ白であったろうパンダの毛の白い部分は、埃をかぶってねずみ色に変わっていた。そういったパンダや人形を見ているうちに、昔はとてもかわいがわれていたのに、今じゃこんなところに入れられて、まなみは、なんだかかわいそうと思った。そんな様子のまなみを見て、としゆきはただ一言、ぴしゃりといった。


「泣くなよ」


まなみは、きっとした目つきでとしゆきを、にらんだ。


「そんなんじゃないもん」


「なら、いいけどさ。それより、物を区別するぞ。そのこまごましたおもちゃはおまえが整理しろ。ぼくは座布団や、布団を整理する」


としゆきは、ゲームのためとばかりに、張り切って仕事をし出した。散らばっている座布団を、積み直し、隅の方へと追いやると、ごちゃまぜになっているお茶碗とお皿を箱の中へと入れていった。まなみはまなみで、埃を被ったぬいぐるみや人形を水でぬらした布で拭いてあげた。すると悲しそうに見えていた人形やぬいぐるみたちが、徐々に元気をとり戻していくような気がして、まなみはうれしくなった。と、その時としゆきが叫んだ。


「おっ! いいもの発見」


 機嫌のいい声に、まなみは、はじかれたようにそちらを見た。見ると、としゆきは手に小さな宝箱を持っている。その宝箱は、海賊船の中に置いてあるような西洋風の木でできた宝箱だった。納戸の中の物は、全部和風の物ばかりなのに、なぜかそれだけ西洋風な箱で目を引いた。


「宝箱?」


 まなみも興味をそそられ、としゆきのそばにやって来た。


「そうだぞ、この中には金貨が入ってるかもしれないぞ」


「金貨?!」


 としゆきは期待をこめた目で、宝箱を見つめると、まなみにいった。


「おじいちゃんたちには、内緒だぞ」


「うん」


「じゃあ、開けるぞ」


 まなみはかたずをのんで宝箱が開くのを待った。としゆきは、慎重に宝箱の蓋をそっと開けてみた。


「キィーキィーキィー!」


開けたとたんに、わめいているような小さな叫び声が聞こえてきた。見ると、水色、緑、黒、紫、といった色合いのものが、小さく丸くなってうごめいている。


『虫!』


まなみの頭にとっさにその言葉が浮かぶと、まなみはきゃあといった悲鳴をあげようとしたが、その前にとしゆきがまなみの口をふさいでいた。としゆきは、じっとそれらを見つめている。ミミズのように見えたひょろ長いその生き物たちは、どうやらこちらをうかがっている。よく見るとそれはごつごつとした皮ふを持ち、背中には翼、口には牙があって、手にも鋭いかぎ爪があった。そして怒っているかのように口から小さな炎を吹いていた。としゆきはいった。


「こいつら小さなドラゴンみたいだ」


「ドラゴン?!」


悲鳴をあげるのをやめると、まなみは不思議そうな顔をしながら、それらを見つめた。ドラゴンといえば、ファンタジーの本にも出てくる。素敵な冒険とドラゴンはつきものだ。まなみはそう思うと、何かが始まりそうな予感がして、わくわくしてきた。それでも、虫のように動くドラゴンは、まなみの中ではどうしても気持ち悪い虫のように見えてしかたなかった。


「としゆき、まなみ、はかどってるか」


階段がきしむ音ともに、おじいちゃんの声が聞こえてきた。


「やばい!」


としゆきは、宝箱を閉じると、近くの布団の中へと、押しこんだ。そうしてまなみに小声でいった。


「今のこと、絶対いうなよ」


「う、うん」


 まなみもきゅっと唇を結ぶと、頷いた。誰がいうもんか、こんな不思議なことと思った。


「おうおう、二人ともがんばってるな」


 おじいちゃんは、納戸の扉を開けると、二人の片づけ具合を見て、満足そうな顔をした。


「なかなか、手際がいいなあ。あと少ししたらお昼だからな。それまでがんばるんだぞ」


にこにこしながら、おじいちゃんは、納戸の中をちょっと見ると、すぐに扉を閉めて下へと、もどって行った。


「ふう、やれやれ。あぶないところだったな。さっきの宝箱のドラゴンを調べるのは、ここの整理が終わってからだ。早めに終わらすぞ」


「うん!」


 まなみも力強く頷くと、二人はさっき以上に、まじめに精を出して、片づけをした。おじいちゃんに、あとで文句をいわれないように、きれいに丁寧に、それでいて早く終わらせることを心がけた。そのおかげで、二人はお昼の前に、納戸の整理整頓を終わらすことができた。


 お昼になると、二人はなにげない様子で、下へと降りて行き、おじいちゃんとおばあちゃんに話を合わせながら、食事をとった。


「としゆき、さっきいってたゲームの件だが、約束通り一時間だけしてよいからな」


おじいちゃんが機嫌の良い声でいうと、としゆきは茶碗を手に持ったままいった。


「うん、ゲームは、夕方の時間に遊ぶことにするよ。午後はちょっとまなみと一緒に外で探検してこようかと思うんだ」


「おう、探検か。まあ外で遊ぶのはいいことだな。しかし暑いから気をつけるんだぞ。木陰に入りながら、水をとるようにな」


「うん、わかった」

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