第23話
真ん中に大きな木の門があり、左右には白い塔がそびえ建ち、その塔の上には妖精の衛兵らしき人が、こちらを指さして、何やら叫んでいるのが見えた。王女は木の門まで飛んで行き、としゆきとまなみとともに、ふんわりと地面に着地した。それとともに、ドルダ達も着地すると、大きな木の門は、開け放たれ、慌てて大臣と衛兵らしき人が出てきた。
「姫様。いったい今までどこに行ってたんですか! 城は大騒ぎですぞ」
あごひげを生やしている大臣が、王女を怒った。
「あら! あなた達ばかり人間界に行って楽しんでるなんて不公平だと思ったのよ。だから今日は人間のお友達を連れてきたわ」
「人間ですと!」
目くじらを立てている大臣を横目に、王女はとしゆきとまなみの手を改めて取ると、二人を引き連れ、城の中へと入った。
「ドラゴンさん達もこちらへ」
「姫様。勝手なことをされては困りますぞ」
まだ怒っている大臣が食らいついてくると、王女はいった。
「この人達は、人間界で困っている時に助けてくださった方達よ。丁重にもてなしなさい、大臣」
「しかし、姫様」
「わたしの命令が聞けないっていうの! これは命令よ」
王女が最後にきっというと、大臣は弱った表情をしたが、結局最終的にはすごすごと引き下がっていった。
そのあと来たのは、王女のドレスにも匹敵するぐらいのフリルがたくさんついたきれいなドレスに身を包んだ妖精達だった。きらびやかなドレスに身を包んだ彼女達は、王女のダンス仲間らしく、王女をさっそく、ダンスに誘った。
「まなみ達も踊りましょう!」
まなみは誘われてときめいたが、としゆきは、面倒くさそうな表情を浮かべてぼやいた。
「僕はダンスなんか興味ないからいいや」
「それだったら、あちらに料理がたくさん置いてあるから、好きなだけ食べて待っててくださいな」
いわれて城の大広間の隣の部屋をのぞいてみると、鶏肉の丸焼きやパイの包み焼き、魚のソテー、牛肉の炒めもの、色とりどりのフルーツにジュース、様々な形のお菓子が所狭しと置かれていた。
「うわっ、すごいごちそう!」
としゆきは、嬉々として隣の部屋へと入って行くと、手あたり次第に食べ出した。
「王女よ。我々もごちそうになってもよろしいかな」
ドルダが丁重にいうと、王女は答えた。
「ええ、ええ、どうぞ。お食べくださいな」
ドルダとラビネ達も隣の部屋へと行くと、ごちそうのご相伴に預かった。
「さあ、まなみ踊りましょう」
「でもわたしドレスを持ってないわ」
「だったら、これでどうかしら」
王女が指をぱちんと指を鳴らすと、まなみの着ている服が袖の膨らんだピンク色のかわいいドレスに変わっていた。
「わっ、これってどういうこと?!」
まなみが驚いて叫ぶと
「気に入らなかったかしら」
と、王女がくすくす笑いながら訊いてきた。
「ううん、そんなことない。これも魔法なの?」
「魔法じゃないわ。この城の中にいる間は、全てがわたしの思い通りなの。さあ、踊りましょう」
そういうと、王女は他の妖精達とくるくると踊り出した。ダンスなんて、踊ったことないけれど、踊れるか、まなみが怖がっていると、まなみの履いている靴が勝手に動き出した。それに合わせて身体を動かすだけで、まなみは、優雅にダンスを踊ることができた。それは夢のような時間だった。ふわふわのドレスを身につけて、大広間を踊ると、まるで自分もお姫様になったような気分だった。楽しくて楽しくて、時間が経つのが、あっという間だった。いくらでも踊っていたい気分だった。その途中、王女がまなみに声をかけてきた。
「ねえ、まなみ。このダンスの様子を描いてみせてくれない」
そういわれて、まなみもこんな素敵な場面を絵にしない手はないと思い、さっそく絵を描いた。それは妖精達が、華麗に踊る舞踏会の一場面だった。
「やっぱりわたしの目に狂いはないわね。城にいる宮廷画家よりも、まなみの方がとてもうまいわ。創作力ってやつね」
王女が、描かれた絵を見てほめると、まなみはとても得意になった。
「ねえねえ、ダンスもいいけど、城のあちこちを案内してあげるわ」
そこで二人は大広間を抜け出し、豪華な造りの城の内部を見て歩いた。幾つもの広々とした部屋の調度品は、金や銀、ダイヤモンドでできていて、まなみは目を丸くした。それから絵や彫刻も置いてあって、その出来栄えの良さにまなみは唸った。わたしの絵の方がうまいっていうのは、きっと王女のお世辞ねとまなみは思ったが、王女がそれぞれの部屋や飾り棚を案内し終わると、今見てきた中で一番印象に残ったものを描いてくれないかと頼んできた。




