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四匹のドラゴン  作者: はやぶさ
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第22話

まなみが目をしばたたきながら、ノアに目を向けると、彼は大きく頷いた。


「ええ。このお客様用のティーカップで飲まれた方達は必ず私の先祖の姿を見ます。このカップには海を渡ってきてここまできたという先祖の想いがこめられているんです。まあ、ある意味自己紹介というか、先祖のルーツですね。それとともに、海の風景をも楽しんで頂ければと思い、この紅茶をいれさせて頂きました」


「あら、わたしの魔法もすごいけれど、この紅茶もなんだかすごいわね。味も美味しいし、妖精のわたしが驚かされたわ」


 王女はご満悦な様子で、そう答えた。


「それはよかったです。それではケーキもたっぷりお食べください」


 ノアはにっこり微笑むと自分も席に着いて、紅茶を飲み出した。


 皆は心ゆくまで、甘くて美味しいケーキを味わった。としゆきとまなみも、いくつものケーキをお腹いっぱい食べて、満たされた気持ちになった。


 まなみが紅茶をゆっくり飲んでいると、王女がこう切り出した。


「ところで、まなみは何かないの? わたしは魔法を見せたし、ノアは特別な紅茶を見せてくれたわ。今度はまなみの番よ」


 まなみは突然の王女の提案にぎょっとした。


「このお茶会って何かを披露するものなの?」


「そういうわけじゃないけど、ただお茶を飲んでるだけじゃ、退屈じゃない。まなみも何かないかしら」


 そういわれてまなみはしばらく考えこんでしまった。王女は期待したまなざしで、まなみを見つめていた。見つめられれば、見つめられた分だけ、まなみは困惑した。


『わたしにできることってなんだろう……』


 目はさまよい、気がつくと、隣の席のラビネに救いを求めていた。


「まなみ様の好きなことをすればいいんじゃないですか」


 ラビネはゆっくり紅茶をすすりながら、そう助言した。


『好きなこと……』


 そこでまなみは、ふと思い当たった。急にテーブルの席からはずれると、リュックの中に入れてあるスケッチブックと色鉛筆のセットを取り出した。


「それはなあに?」


 興味津々といった様子で王女は訊いてきたが、まなみはにっこり微笑んだ。


「うん、ちょっと待ってて」


そういって、まなみは王女に少しの間待ってもらうと、急いで絵を描き始めた。


まなみは色鉛筆で、緑豊かな森の前でのこの小さなお茶会を描き写した。温かな雰囲気を出すためにオレンジ色の色鉛筆で皆を描き、上から見下ろしている木々達を鮮やかな緑色でさっと描いた。そうして、紅茶を飲んでいる王女の前へとスケッチブックを差し出した。それを見た王女は叫んだ。


「まあ! あなたは芸術家なのね。とっても素敵な絵ね。皆が楽しそうに描かれているわ」


 惚れ惚れした目つきで、王女は絵を眺めると、こう続けた。


「城の宮廷画家にも見せてやりたいぐらいだわ。さあ、そうとなったら、早く行きましょう! ノア、そろそろ一時間経ったんじゃないかしら」


「はい、はい。そろそろいいと思いますよ。ちょっと羽を見せてください」


 急に言われたノアは、ちょっと慌てたが、すぐさま慎重に背中の羽のつけ具合を確かめると、王女に言った。


「さあ、もう大丈夫ですよ。羽はしっかり元通りくっついています」


「じゃあ、もう飛んでいいのね」


「ええ、そうです。」


 ノアが答えると、王女はこう告げた。


「それじゃあ、このお茶会はお開きね」


「やっと一時間経ったのかあ。まあでもお茶とケーキが食べれてよかったな」


 としゆきが率直にそういうと、ドルダやラビネ達も立ち上がった。


「時間が戻るってやつは、ほんとに平気なんだろうなあ」


 ダークがうさん臭そうな目で王女を見ると、王女は、つんつんした調子でこう述べた。


「あら、信用してないのね。妖精の王女のわたしが言うんだから、間違いないわよ」


「それで妖精の国へはどうやって行くのかね」


 ドルダが訊くと、王女は胸を張って答えた。


「そんな当たり前のこと訊かないで。妖精は飛ぶもの。飛んでいくのよ。ドラゴンさん達は飛んでいけるから、わたしのあとについて来て。人間のあなた達は私の手をとるのよ」


 すぐさま飛んで行ってしまいそうな王女を押しとどめると、まなみは慌ててノアにお礼を言った。


「ノア。お茶会ありがとうございました」


「美味しかった、お茶とケーキ」


 としゆきもすかさずそう言うと、皆が口々にノアにお礼をいった。


「いえいえ、こちらの方こそ、皆様の足を止めてしまい申し訳なかったです。またこちらに来ることがあったら、お寄りください」


 ノアが礼儀正しくお辞儀をすると、皆もそれぞれ頭を下げて別れの挨拶をした。


「挨拶も済んだことだし、それじゃあ、妖精の国へ行くわよ。皆、わたしのあとについて来てね」


 王女がそう叫ぶと、皆は一気に空へと舞い上がった。としゆきとまなみは、王女の手をぎゅっと握りしめ、振り落とされないように必死にしがみついた。どんどん下の地上が遠ざかり、下で見送っているノアの姿があっという間に見えなくなると、いつのまにか皆の周りには白い霧のようなものが漂い、景色が一瞬真っ白になった。見えるのはドルダ達の飛んでいる姿だけ。そしてしばらく飛び続けると、太陽の光が再び差しこむと、その霧の向こう側に白い城が現れた。

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