kisskisskiss
こじんまりとした宿だったけれど、部屋は清潔で、敷布はお日さまの匂いがした。荷物を置いて、サ一シャと一緒に、お風呂に行った。頭の先から爪先まで、泡立てた石鹸で洗い、あったかいお湯に浸かると、生き返った心地がした。お風呂の中で、盗み見た、サ一シャの胸は、華奢な体つきに反して、大きかった。私は、自分の、貧相な胸を見下ろし、ため息を付いた。サ一シャが、髪を乾かしてくれた。そのまま、髪をとかしてくれるサ一シャに、私は、言った。
「魔法って便利ね。ジョシュアに頼んだら、ちりちりになっちゃうわ」
サ一シャは、にっこりした。
「姫様は、お強いではありませんか。私は、あのように敏捷に動けませんわ」
「そう?でも、、」「でも?」
「女性としては、どうなのかなぁって」サ一シャは、目を瞬いた。
「活発な女性を好む男性も、おられますよ。きっと」
「ダンスや乗馬までは、活発と言えるのかもしれないけれど、猪や狼を蹴飛ばしたり、アンデッドの頭を跳ね飛ばしたりするのは、どうなのかしら、と、思って、、」
「、、戦いに参加するのが、お嫌でしたら、、」
「そうじゃないの。体を動かすのは嫌いじゃないし、私一人、馬車の中で縮こまっているだなんて、性に合わないわ。ただ、あ~、もう!」
私は、首を横に振った。ブラシを持ったサ一シャが、戸惑った顔をした。
「今まで、こんな事、気にした事はなかったのに、何なの?これ。何でなの?気になって仕方がないの」
「、、何を、ですか?」
「ルスランに言わないって、約束してくれる?」「はい」
「私、どうやら、ジョシュアのことが、好きになっちゃったみたいなの」言った端から、顔が、耳まで、赤くなっていくのが判った。サ一シャは、せわしく、目を瞬いた。
「ジョシュアって、おしとやかな女性が好みよね。あなたみたいに。でも、私って、真逆なタイプじゃない?ジョシュアの中で、女の子として、見られていないような気がするの」
「、、そうですか」
「えぇ。いけない?」
「いけなくはない、と、思いますが、もしも、姫様に、婚約者がおられたら、一大事ですわよね」
「いるわ。子爵家の子息という立場に、あぐらをかいている、どうしようもない奴よ。はっきり言って、好きでも何でもないわ。だけど、親同士が決めたことだから、私には、どうすることも出来ない。だから、この想いが、叶うはずがないってことは、判っている。だけど、、」
「、、、、。」
「私、昔、ある事があって、男の人を好きになることは、一生ないって、思っていたの。だから、、」
「、、、、。」
「いつまで一緒にいられるか判らないけど、ジョシュアに嫌われたくない。こんな、変な女の子が、彼に想いを寄せていた、っていうことを、忘れてほしくないの。駄目かしら」
「駄目じゃありませんよ」と、サ一シャは、微笑んだ。
「姫様のお気持ちを知ったら、ジョシュアは、きっと、喜びますし、自信にもなりますわ。ジョシュアに欠けているのは、なんと言っても、自信ですからね」