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GO EAST5

サ一シャが、倒れた。道中、ずっと気を張り詰めて、魔法を放っていたのみならず、私たちの潤滑油の役まで務めていたのだから、無理もないだろう。ようやく着いた宿の一室で、ルスランが、治癒呪文を唱えたのだけれど、顔色は真っ青なままだった。

「無理なさらないでください。道中の疲れが溜まっていたのでしょう。今は、休息を取って、ゆっくり休まれるべきですよ」

ルスランは、言った。

「申し訳ありません。一刻を争うというのに。一晩眠ったら、大丈夫ですから、、」か細い声で、サ一シャは、言った。宿のおかみさんに頼んで、お粥を作ってもらったけれど、それも、二口、三口、口を付けただけで、ことんと、眠りに落ちてしまった。

「、、よっぽど疲れていたのね」

「私が付いていますので、お二人で、食事を済ませて来て下さい、、ジョシュア殿?マントなど着て、どこに行くつもりなのですか?」

「市で果物でも見て来ようかと思って。サ一シャが好きだから」「私も行く」

ルスランは、ため息を漏らしたけれど、

「遠くには行かないで下さい。傭兵を装ったならず者が、いないとも限りませんから」と、言った。「判ったわ。行きましょう、ジョシュア」マントを羽織る私の陰で、ジョシュアが、ため息を付くのが判った。


「ねぇ、ジョシュア」「うん?」「、、ごめんなさい」「何が?」「一昨日の昼間、大声を出してしまったりして。ジョシュアは助けてくれたのに、ルスランに殴られて、、痛かったでしょう?」

「痛くなかった、とは、言わないけど、僕も、悪いところはあったし、気にしないでいいよ。、、それよりも」「なぁに?」「そんなに、しがみつかれると、歩きにくいんですけど」「だって、ジョシュア、足が速いんだもの。じゃあ、手をつないで?それなら、いいでしょう?」「、、、、。」

「ほら、八百屋さんが見えて来たわよ」

渋がるジョシュアの手を握りしめ、私は、人混みの向こうに見えて来た、八百屋さんに向かった。

「いらっしゃいいらっしゃい。取り立ての新鮮な野菜だよ!聖ラウラの泉の伏流水で育った果実だよ!一口食べると、ほっぺたが落ちるよ!」

「聖ラウラって?」

「知らない?ここから、遥か北にある、修道士会の総本山で祀られている、聖女の一人よ。凄い霊力の持ち主で、彼女が洗礼を受けた泉には、怪我や重い病を治す力があるって、もっぱらの評判なの。今頃は、きっと、魔物たちとの戦いで、傷を負った人々で、大混雑ね」

「ふうん」

リンゴと梨を五個ずつ買い、店先で果汁も売っていたので、それも買い、パン屋さんで、パニーニを二つ買って、公園のベンチに座って食べた。寝込んでいる、サ一シャには、申し訳なかったけれど、清々しい気分だった。


「美味しいわね。私のは、チーズとハム。ジョシュアのは?」

「僕のは、チキンに、トマトソ一スが付いてるな」

「一口ずつ、交換しない?」

「へ?」戸惑う僕をよそに、アレインは、僕の手を、ぐいと引き寄せ、僕の歯形が付いたパニーニに、かじりついた。そうして、今度は、自分のパニーニを、僕に差し出す。僕は、黙って、それを、一口分ちぎり、口に放り込んだ。憎らしいほどに、澄んだ青空を見上げながら、僕は、先日、野宿の際に、サ一シャと話したことを、思い出していた。

「ちょっと、いいかな。サ一シャ」「どうかしたの?」

中々自分から、話し出せずに、口ごもる僕に、サ一シャは、言った。

「最近、お姫様の動きに、付いて行けるようになったわね。やっぱり、ジョシュアは、筋がいいわ」

「やっぱりって、どういうこと?僕が、預言の勇者だから、って意味?」サ一シャは、目を瞬いた。

「、、どうしたの。急に」

「自分でも判らないんだ」と、僕は、頭を抱えてしまった。たき火の中で、枝がはぜる中、サ一シャは、腕を伸ばして、僕の背中を、撫でてくれた。

「何か悩みがあるのなら、言ってみて。吐き出すだけでも、楽になるわよ」そう言って、サ一シャは、くるりと、杖を、一振りさせた。魔物避けの結界は、張ってあるのだけれど、馬車の中で眠る、二人との間に、境界線が引かれたのが、判った。僕は、深く息を付いた。

「ありがとう」「何があったの?」「きみの知らないところで、何かあった訳じゃないんだ。見ての通りだよ。ただ、アレインが、、」「姫様が?」

「自惚れかもしれないけど、僕に、良くしてくれるのは、僕が、預言の勇者だから、なんだよね」「順番的に言うと」サ一シャは、言った。

「あなたと私が、姫様の危機を救った、っていうのが、先に来るんじゃないかしら。だから、あなたに手ほどきをしているのは、姫様なりに、感謝を示されているのだと思うわ」

「もしも、あの時、僕たちではなくて、他の誰か、、ひとかどの戦士が現れていたとしたら、アレインは、同じ事をしたんだろうか、って、そんな事ばかり、気になってしまって、、」

「直接、伺ってみればいいのに」「、、出来ないよ」

「どうして?」

「その通りよ、なんて、認められてしまったら、僕は、預言の勇者という重みに、押し潰されてしまうかもしれない。アレインに、預言の勇者、というフィルター越しに、接されているんじゃないか、と、思うと、時々、わ一っと、叫びそうになるんだ。僕は、そんな、御大層な人間じゃない。勝手な期待を押し付けないで、ありのままの僕を、見てくれって、、」


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