純白の翼
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鳥の囀りが聞こえる。その姿は決して目には出来ないのに、黄色、水色、桃色。様々な色をしていることが分かる。自由気ままに飛び回り、川の水を飲むや否や木に実る果実をついばむ。
見栄え良く、果実のなる木が生えている。果実は人間界では見たことのない、不思議な色と形をしている。一目見ただけでは、なんとも言い表し難い、違和感だらけの果実だが、心が惹きつけられる魅力があった。
盛大に、しかし清らかに流れる川は、天の光で輝いていた。鳥の声をかき分けて、しっかり耳を澄まさないと気付かないほど、穏やか。川はどこまでも透き通り、そしてその流れは一本の大樹を囲うようだった。
大樹は意気揚々と枝を太く長く伸ばし、隅々まで青い葉を傘のような形でつけている。大樹の幹も、当然規格外の大きさをしていた。人が何十人と抱きついて、ようやく一周できるだろう。何年も、何十年も、何百年も、この大樹はここに居た。最初は僅かな芽から始まったのか、はたまた永遠に姿形を変えずにいるのか、知る人は誰もいない。
そんな大樹の下で眠る、一人の少女。清潔な白のワンピースを身に纏い、薄い肩を上下させ寝息をたてていた。少女を包み込むように、背中から生えた純白の翼は心地良さそうに遅々として羽ばたいている。
少女は、いつか目が覚める。そして、これは夢だと喜んで走り回るだろう。過去の優しさと下界の美しさを、忘れて幸せになるに違いない。
彼女は、ようやく自由を手にできたのだから。
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私が親友に書く、さいごの景色。
どうか彼女の向かう先が、これ以上に綺麗でありますように。