第2新卒:『乙女の夢♯キミはありのままで』その4(終)
【ここだけ、毎回三人称……極悪帝国・地球侵略軍『竜巻』】
――前回同様、招かれモンキー・ヤマワラーの敗北の映像が映っていた。
「招かれモンキー・ヤマワラー小隊長、
地球での戦闘により、ダークマジカルコアが破壊され、
魔法値が著しく減少。退役です」
ほとんど自分から負けに行った招かれモンキー・ヤマワラーの姿に、ほぼ全員が呆れたような雰囲気だ。
ヤマワラーの性格は、とにかく自分勝手な老人だった。
悪い人ではなかったのだが、セクハラやサボリが許されると思ってやっているフシがあり、一部にとってはさぞ迷惑な事だっただろう。
しかしながら、テキトーを愛するその性格は、なんだかんだと愛されてもいた。
「あーあ、あの爺さんも退役か」
「これで、女性陣からのセクハラ被害報告も減りますね。でも、まあ、良い人でしたよね」
「……そうだな、ああ見えて真面目な時は結構真面目だったし」
「どこまでがセクハラなのか、彼自身、悩んでいるフシもありましたよね」
「ああ。……それにしても、あの青いギャルの子。
確かに可愛かったなー。極悪帝国に寝返ってくれないかな」
「……」
「今までの魔法少女って、
ああいう可愛い子の色、だいたい黄色だったんだよ。
こいつらの場合は青なんだなぁ。
……あ、でも、今回、黄色がいないぜ!
どうなってるんだよ、黄色好きなのに!」
「しっ! ファントムお嬢様は、ああいうあざとい黄色枠が大嫌いなんですっ!
あんまり口にしないでくださいっ!」
「おっといけねえ」
訓練生の下っ端たちは、相変わらず無駄話に興じている。
それを、これまた相変わらず黙認しながら後ろで見ている管理職の連中たちであった。
「――招かれモンキー・ヤマワラー殿、お勤めご苦労なり」
鎧を纏った呪武者・ヒラギィが正座したまま、そう呟いた。
老人に敬意を表するヒラギィの性格では、たとえどんな倒され方であろうとも、その退役を愚弄はしない。
最後までテキトーに仕事をして、最後までテキトーを貫いて退役した彼の生き様には、ヒラギィも思うところがったのだろう。
それもまた彼の生き様であった、と受け入れていた。
「おーーーっほっほっほっ!
あのジジイ、戦いは確かに強いのですけれど、ちょっと性格に難がありましたわねっ!!
失敬失敬っ!! おーーーっほっほっほっほっ!!」
当のヤマワラーを派遣したファントムお嬢様は、すっかり気にしていない様子である。
一目でお嬢様だとわかる金髪縦ロールヘアーに、豪奢なドレスを見せびらかし、扇子を広げて高笑いだ。
何故だか、妙に余裕があるように感じられ、ヒラギィは思わず訊いた。
「ファントムお嬢よ。貴様があのご老体を派遣したのではないのか?」
「ええ。しかし、今回の出撃など所詮、三話までの時間稼ぎのお遊びのようなものですわ」
「……時間稼ぎ?」
「……まあ、彼も実力はあるので、もしかすると、
魔法少女を倒せるかとも思ったのですけど、所詮は趣味人だったようですわね。
――まっ、魔法少女を仕留めるには、次回の方が都合が良いでしょう」
「何?」
「……ふふふ、何故って、次回はそう、第三話っ!!
魔法少女が誰か死ぬには、丁度良いタイミングですわっ!!
味方を一人失えば、彼女たちも今の調子でぬくぬく戦っていられるはずがございませんものっ!!
敵は戦意喪失っ!!
物語は一気に2010年代らしいダークな魔法少女小説に早変わりですわっ!!
おーーーーーっほっほっ!!」
そんなファントムお嬢様の宣言に、そこにいる誰もが凍り付いた。
基本的に、この軍にいるのも人間。侵略行為における覚悟が決まっているとはいえ、まだ若い魔法少女を殺害する事に抵抗のある者は多く、そんな事をすればバッシングと連鎖退職は免れない。
流石のヒラギィも、焦った様子で立ち上がった。
「まさか……敵を殺める気なのかっ!?
我らはただ、侵略さえできれば良い筈……!」
「――ええ。しかし、これが戦争である事をお忘れなく。
何しろ戦争に屍はつきもの……我々はぬるすぎるのです」
「……」
「……こうして毎回小隊長を潰されてしまって、
血税を無駄に使われてしまっては、こちらも大損害。
まして、彼女たちもいざとなれば、我々を殺す気でかかってくるかもしれません」
「だが! それは、我々が侵略者として一方的な攻撃を仕掛けているからの話!
防衛の為に戦う彼女たちには、我々を殺す権利があり、我々には殺される覚悟がある……!!
しかし、逆は許されん……!!」
「――あなたはそう言いますけれど、
戦争とはそもそも長引かせるものではありませんし、
私も部下を失いたくはありません。
次回、魔法少女を一人でも殺してしまえば、
彼女たちもきっと大人しくなるに違いないでしょう。
それでとっとと、地球を侵略してしまいましょう」
ファントムお嬢様は、気にする風でもなく、そう言い切った。
彼女が部下を想うなど在り得ないと、当の部下たちは思っていた。
ただ、面倒な侵略戦争を終えたいだけなのだと――誰もがそう感じている。
「この外道がっ……」
「外道で結構。――それより……そこに“いる”のでしょう?
非情の殺し屋……クロック・ボーガン」
ファントムお嬢様がそう言うと、確かにその作戦室には何者かの気配があった。
どんよりとしていて、冷たい気配。
それに誰もがざわめく。……軍人ではなく、殺し屋が雇われた事を、誰しもが感じ取り、ファントムお嬢様の執念と冷徹に息を飲んだ。
「あなたに次回……そうね、あの緑の殺害を命じます」
多くが動揺する中で、ファントムお嬢様はニヤリと笑い、言った。
「――すべては、極悪帝国の為に」
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
【エピローグ担当は、なんだかんだで夢咲いちご】
……ここは私立デュマ幼稚園。
都合よく、予防接種をしっかり受けていたアタシたちは、子供たちに遊ばれていた。
委員長が何か商店街の手芸店で買い物をした後で、アタシたちは三人でこの私立デュマ幼稚園に遊びに来ていたのだ。
それぞれ、委員長は委員長星人、青山はギャル星人、そしてアタシはスケバン星人として、この子供たちとのヒーローごっこに付き合わされている。
「――×ねーっ!! 委員長星人!!
ひっさつ、バイオレントストライク!!」
「こら、『×ね』なんて言葉、使っちゃダメでしょう!
子供だからと許しませんよ、そもそも、言葉遣いというものは、相手への礼儀で……」
委員長星人は、本気のトーンで説教を始めて、子供を謝らせている。
必殺技の説教だ。
しかし、子供相手でも敬語を崩さないというのは、なんというか、委員長らしい。
アタシたちの方にも園児たちが来た。
正直、アタシたちにとっては、ヒーローというより、怪獣だ。
「スケパン星人っ! パンツ透けてるのっ!?」
「スケバン星人だよっ! スケパンじゃない!!」
「スケパンスケパンスケパンっ!! さながら××のタイトル、スケパン刑事っ!!」
「スケバンだっ!! どこでそんな言葉覚えた!?」
ネット社会の子供はすごく心配だ。
「やーいやーいっ! 暴走宇宙人 スケバン星人! 身長65メートル! 体重4万2千トン!」
「出身地、R15星雲スケバン星! 怪獣図鑑の背景は畑!」
「必殺はカチコミ! 第16話『怪獣愚連隊』に登場! 苦手なものはほしぶどう!」
「これは肉食怪獣ワニワニン!
スケバン星人のペットで石油コンビナートを破壊! 石油を食べて大きくなる!」
「誰だ!? そこで円谷プロ全怪獣図鑑みたいな設定考てる園児たちはっ!?
なんでアタシがほしぶどう苦手な事知ってるんだっ!?
あっ……そのワニ投げないでっ! それアタシの大事なペットだから!」
……アタシもアタシで遊ばれている。やんちゃを通り越して、将来が心配なレベルの子供もいるが、たぶんどこかで直るし、直らなくても何かに活かすだろう。子供というのはそういうものだ。
未来には無限の可能性がある。アタシはそう思う。
……えっと、そういう事でいいよな?
ワニワニンは、ぬいぐるみ扱いで園児たちにぶん投げられて、目がバッテンになっている。
あいつが一番可哀想だ。喋るわけにもいかないし、黙ってぬいぐるみ怪獣としてボコボコにされている。
なんか、さすがに申し訳ないから、後で好きな食べ物でも買ってあげよう。
アタシは、ふとギャル星人の方を見た。
「ギャル星人! また遊びに来てくれるーっ!?」
「オッケーオッケー! ギャルは約束破らないからっ!」
「やったー!」
「ウチもやったー! みんなとまた遊べるし!」
……当のギャル星人は、子供に人気だ。
子供の扱いがなんだかんだ言って上手い。スケバンも子供の味方だから、子供をうまくあやしたいんだけど、今日やってみた限りだと全然うまくいかないようだ。
そんな時、ある園児が、ギャル星人の方へと歩き出した。
そして、ちょっと躊躇ってから、こんな事を言った。
「ねえ、ギャル星人、大きくなったらおれと結婚してっ!」
「えっ……!? こ、こうきくん……!? …………え、えっ……えっと…………」
こうきという男の子の言葉に、ギャル星人がたじろいでいる。
このウルトラマンの粋な必殺技は、プロポーズ攻撃か。正直、絡まれてたじろいでいる青山の姿には笑いをこらえられない。
困ってる。ざまあみろ。スポーツテストで転べ。
「……ご、ごめんね、……もーちょい考えさせて。うん……嬉しいんだけど……心の準備が…………」
……でも、ギャル星人も子供相手に本気で照れるなよ。
そこにいる園児は、その光景を見て全員キャーキャー言っている。
アタシも少しだが、キャーキャー騒ぎたい気持ちに駆られた。
その後、しばらくして……けろっと切り替えて、青山はアタシたちに聞いてきた。
「……あ、そうだ。番長、委員長。
LINEのアドレス交換しようよ。
あと、グループ招待して。今度からはちゃんと必ず行くから」
「ああ、うん。いいよ」
アタシたちは、ちょっと疲れて休みだした園児をよそに、スマホを開いてLINEのアドレスを交換し始めた。
とりあえず、アタシたちのグループ『魔法の××× マジカル○○○』に招待する。
「え、何これ、グループ名ダサッ!
しかも、『魔法の××× マジカル○○○』って、こんなの、
ちょっと察しの良い人には画面見られたら正体バレるよ?」
「やっぱり?」
「伏字だけでは効果がありませんか……」
「つーか、最初から魔法とか書かなきゃバレないし。
――あー、もう、このグループ名ウチが変えとくから……
あ、二人とも、子供たちが呼んでるから、遊びにつきあっちゃってっ!!」
そう言われて、アタシたちは、園児たちのいる戦場へと引き戻される事になった。
正直、極悪帝国と戦うより遥かに疲れる。
幼稚園の先生って、大変そうだな。……少なくとも、アタシには無理そうだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
【一人称、久保田先生】
三人が園児と戯れている姿は、わたしにはとても助かるうえ、微笑ましい姿でした。
なんだかんだと園児に好かれているし、また来るのを待ち望まれていると思うわ。元気すぎて、ちょっと疲れているみたいだけど、若いからまだ遊ぶのは疲れないみたいね。
そんな事を考えていたら、ふと二十代前半の若い男性教諭――まさと先生が、わたしに、訊いてきました。
「ねえ、久保田先生。
ちょうど女番長、委員長、ギャルの組み合わせですよ。
もしかして、あの極悪帝国を倒してるプリキュアみたいな人たちって、彼女たちなんじゃ……」
うーん……。
なんというか、こう訊かれると。
「――そんな訳ないでしょ?
あの夢咲さんの一人称は『アタシ』だけど、
あのマジカル女番長の一人称は『アタイ』よ。
よく似ているけど、明らかに別人だと思うわ」
「ああ、言われてみればそうですね。
じゃあ、やっぱり別人か……つまんないな」
「そうよ。
それに、あの委員長も眼鏡をかけて三つ編みだけど、
マジカル委員長は眼鏡でも三つ編みでもないでしょ?
敬語でもないし……」
「言われてみると、ほんと全然違いますね」
……意外と適当にごまかせるものね。
まさと先生は、もうすっかり疑ってないみたい。
マジカル三姉妹――明らかに彼女たちがあの三人だけど……三人とも、何も言わないって事は、そういう事だもの。
気づかないフリをしてあげましょう。
……昔から、こういうのは正体がバレちゃいけないものだしね。
いざという時は、先生が守ってあげるから。
「……がんばってね、みゅーちゃん」
「ん? 先生なんか言った?」
「ううん、なんにも?」
がんばってね、みゅーちゃん。
先生にはいま、ここで応援する事しかできないけど、やっぱり……あなたはわたしの、最高の誇りよ。
あなたを見守れて、先生をやってきて、本当によかった。
きっと、あなたなら良い先生になれる。
あなたたちが、三人で一緒に頑張っている事は、よくわかってるわ。
高校生三人、喧嘩したり仲直りしたり、つらい事も悲しい事も楽しい事も……色々あるかもしれないけど、あなたたちにとって一番良い時間を、神様はきっと、これからもたくさんくれる。
この街のヒーローがわたしの可愛い教え子だって事くらい、最初の戦いの時から、ずっと気づいているわよ。
さて。
……先生も、みゅーちゃんに追いつかれないように頑張らないとね!
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
【LINEグループ:『魔法の暴走族 マジカル三姉妹』】
このグループのメンバー:夢咲、緑川綾香
>4月14日(土)
>緑川綾香がミウを招待しました。
ミウ
『二人ともよろしくー(^^)/』
『よろしくねっ!』(スタンプ)
『ではではさっそく』
『このグループ名、変えちゃお。。。』
>ミウがグループ名を『マブダチ』に変更しました。
【第2話:おしまい】
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
どの話からでも読めるけど、二話から読んで面白かった人は、ぜひ一話も……!
【ついき】
6/16
ちょっと話の順番を入れ替えて改訂しました。
考えてみたら、日曜に幼稚園に先生も園児もいるのはおかしい気がしますが、イベントかなんかあったんでしょう多分(適当)。




