第1新卒:AVANT
朝の四時十二分に、ふと目が覚めて、それから胸が苦しくて眠れなくなった。
頭の中が妙にこざっぱりとしていて、ただ、何故だか胸の奥の強い動悸が止まらなかった。
明日は用事もないので、別にすぐに寝る必要はないけれど、窓の外の仄かな青がなんだか心に毒だった。自分の部屋もまた、あまり見ないカラーに彩られていた。
……そんな冷たい風を浴びるような居心地の悪い感覚の中で、彼女の脳裏には様々な事が頭を巡った。
ずっと昔、魔法にかけられていた時の事を、ふと、何のきっかけもなく思い出す。
……あの時のいくつもの出会いを思い出す。
特別な時間だった。
その事が、頭をかすめてしまうと、いてもたってもいられなくなった。
彼女は、現像した写真や思い出の品を、勉強机の中から取り出した。
それを眺めてふと微笑んで、明け方の外を見た。
太陽が登り始めようとしている。
あの時の仲間は今、どこでどうしているだろう。写真を見て、そう思った。
……選ばれた女の子だけがかかる魔法。
あれから幾数年。
今はこの手に、かつての魔法はない。
ただ、遠い昔の事を思い出して、今は少し、心を落ち着かせる。
みんなに、久々に会えたら……。
あの日に帰れたら……。
そんな事を思いながら、彼女は、いま一時だけ、十六の頃に帰る事にした。
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