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絶版と消滅(退会)のかなしみ

作者: 南 彩人

そろそろ仕事もかなりたまってしまったので、これを書く予定ではなかった。ただ、タブで退会エラーが出て、どうにも対処できなかったので。そのときの勢いだけで書いたので、お目汚しご容赦を。


以前、今よりも人付き合いがあったときには、自分の好きな本を薦めたりプレゼントしたりしたい、と思うことが時にあった。数少ない女性の友人が結婚するにあたっては、マリッジ・ブルーをおもんばかって「サヨナラ おもちゃ箱」(谷山浩子・角川書店)をプレゼントにしたらどうかな、と想像したし、「最近どんな面白い漫画を読んだ?」という問いには(明らかにそういった回答は期待していないと認識しつつも)「おとうさんとぼく」(e.o.プラウエン・岩波少年文庫)を勧めたこともあったように思う。本の選択眼があるかどうかはともかく、少なくとも自分の思うところを、好みや評価を反映させられる。そういったことをあれこれ考えるのは楽しかった。


しかし、プレゼントが「想像」にとどまったように、実際にはこういったことはしばしばうまくいかなかった。それらの本が絶版になっていたからである。薦めるにも入手できなければどうにもならないし、実家の本は必ずしも「自分の本」ではないので、紛失を恐れて貸すのには抵抗があった。また、プレゼントとなると古本で調達するわけにもいかず、頓挫してしまったのである。「折角良い本なのに....」と残念に思ったことは一度ではなかった。


両親の方針が「本はどんどん読ませる」だったこと、祖父宅にも本があふれていたことは自分にとって幸いなことだったが、その分「好きな本が絶版」ということは多かったように思う。元々ものを捨てるのが苦手な性分もあり、絶版に直面するにつれて本の処分が怖くなってしまった。本との出会いも一期一会ではあるのだろうが、自分が手放さなければ、いったんできた本との縁は切れないのだから。

最近は孤独死を視野に本の整理に努めているが、何のことはない、雑誌や仕事上の本をいわゆる「自炊業者」に送って電子化しているだけで、データとして手放すには至っていない。また、どうしても、思い入れや記憶の伴うものには、手をつけられていないのだ。

(もっとも、両親や妹は本の処分に抵抗感はないようで、読んでも残しておきたい一部を除けば処分している。祖父宅の本も実家に移動させるにはスペースがまるで足らず、祖父宅自体を手放す際にほとんど処分してしまった。当時かなり悲しく思ったが、どうしようもなかったことを覚えている。その際に紛失した矢野健太郎氏のエッセーなどは、もう手に入らないのではないか、と今でも残念な思いがある)


絶版でも著作権が切れるほど経過すれば「青空文庫」に収録されるかもしれない。しかしそこまで経過しない本について、著者に還元できる小ロット出版ができないものか、と夢想している。同じようなことを考える人はおそらく沢山いるだろうから、経済的にうまくいかない事情があるのだろうが。


その点、電子媒体で、しかもblogのような個人管理ではなく「なろう」のような組織管理のものであれば、いつまでも誰でも読めるのではないか、と思っていた。それが正しければ、紙の本に対する決定的なアドバンテージの1つとなるはずだ。

しかしそれはただの思い込みに過ぎないことにすぐに気づかされた。先日、長編小説のタブを開きっぱなしで数日間放置している間に、どうやらその筆者は「退会」してしまったようなのだ。完結していたはずのその作品を最後まで読むことはもはやできない。

退会にもいろいろな事情や機微があるだろうから、それ自体を云々するのはおこがましいだろう。それでもなお、折角の執筆者の結晶が人目に触れることなく消滅していくのは、やはり哀しい。


「感想執筆者の推測材料」としては、もう少しポジティブな題材の方がよかったか....。

(ここまでは「感想をどこかで1つ書いたら、自分のところにも何か1つ書く」ようになっていたのだが、明らかにこのペースだと仕事がかなりまずいことになっているので、そろそろ現世[仕事]に戻らないと)

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― 新着の感想 ―
[良い点] その悲しみ、分かります。 とても共感できるエッセイでした。 私も子供の頃読んだ“ちび黒サンボ”の絶版の時、悲しかったです。 人種差別に払拭する…とかの理由でしたが、差別要素は無かったと思…
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