表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/300

93話 妹は『妹らしさ』が気になります

 翌日の放課後。


 いつものように結衣と一緒に帰る。

 俺たちの関係に周囲はすっかり慣れたらしく、今は落ち着いたものだ。

 まあ、やっかみの視線は今でも飛んでくるけどな。


「……」


 なにやら、結衣が難しい顔をしてた。

 眉間にしわを寄せて、じーっと一点を見つめながら歩いている。

 彼氏の俺のことなんて……フリだけどな……気にならないみたいだ。


「なあ、結衣?」

「……」

「おーい、結衣」

「……」

「ゆいゆい」

「ふぇっ!?」


 妙なあだ名で呼んでみたところ、反応があった。


「な、なんですか? というか、ゆいゆい……って」

「気にするな、なんとなくだ」

「なんとなくですか……な、なかなか悪くないですね……新鮮というか、親しみがぐぐっと増したというか……兄さんにあだ名で呼んでもらっちゃいました……えへ♪」

「結衣?」

「な、なんでもありませんからねっ!? 兄さんのことを考えていたとか、そんなことはありませんよっ! いえ、考えるには考えていたんですが、い、良いことじゃありませんからね!?」

「お、おう?」


 ちょくちょく、結衣は挙動不審になるんだけど……

 なんでだろうな?


 俺のことが嫌いだから、一緒にいるのが辛くて……とか?

 ……やばい。そう考えたら、凹んできたぞ。


「結衣は……俺のこと、嫌いか?」

「えっ!? ど、どうしてそんな話になるんですか?」

「いや、ちょっと聞いておきたくて……それで、嫌いか?」

「そ、そんなことは……というか、むしろ……」

「むしろ?」

「す、すすす……」


 ぼっ、と結衣が赤くなる。


「やっぱりダメです!」

「えっ?」

「こんなこと気軽に言えませんし、シチュエーションが大事なんです! こ、こんなところで、気軽に、だ、だだだ、大事なことを言わせようとしないでください! 兄さんのばかっ」


 よくわからないが、怒られてしまった……

 あかん。本気で凹む。


「え、っと……それで、なんですか?」

「うん?」

「うん、じゃないですよ。兄さんの方から声をかけてきたんじゃないですか」

「ああ、そうだった。えっと……なんか悩み事か?」

「えっ……ど、どうしてわかったんですか?」

「そりゃわかるさ。結衣のことだからな」

「兄さん……そんなに私のことを見てくれているなんて……ああもう、うれしいです、うれしすぎますよ……やばいです、頬が言うことを聞きません……に、ニヤニヤしてしまいそうで……えへ、えへへ♪」


 今度は、機嫌良さそうになった。

 年頃の女の子の心は、秋の天気のように変わりやすいな。


「それで、悩み事でもあるのか? よければ相談に乗るぞ」

「それは……」


 しばしの逡巡の末、結衣は口を開いた。


「悩み事というか、気になることがありまして……ちょうどいいので、兄さん、答えてくれますか? あの、その、決して兄さんのことが知りたいわけではなくて、ここには、たまたま兄さんしかいないから、仕方なく兄さんに聞いているだけですからね? 他意なんてありませんからね?」

「うん? よくわからんが、変な勘違いはしないから大丈夫だ」

「あのですね……兄さんから見て、私はどう見えますか?」


 どう見える……か。

 ずいぶん、抽象的な質問だな。


「そうだな……すごくかわいい女の子かな」

「かわっ!?」

「勉強ができて運動ができて、優しいし……やっぱり、かわいいし。美少女、って言葉がよく似合うだろうな」

「ふぁ……」


 ぼんっ、と結衣が再び爆発する。


「か、かわいい……兄さんに、かわいいって……かわいい……かわいい……えへ……えへへ……ふぁ♪」

「結衣?」

「って、そうじゃなくてですね!」


 ハッと我に返った様子で、結衣が大きな声をあげる。


「そういうことを聞いているんじゃありません」

「じゃあ、どういうことだ?」

「えっと……すみません。私も、言葉足らずでしたね。私が聞きたいのは、兄さんから見て私は、どんな『妹』ですか?」

「どんな……?」

「ほら、その……色々あるじゃないですか。良い妹とか悪い妹とか……あるいは、わがままとか、聞き分けがないとか、らしくないとか……兄さんから見た私は、『どういう妹』なのか教えてくれませんか?」


 これはこれで、難しい質問だな。

 うーん、結衣がどんな妹……か。


「……よくできた妹、かな?」

「よくできた……ですか」

「さっきも言ったけど、勉強も運動もできる優等生だから、手がかからないし……わがままも、ほとんど言わないし……よくできた妹だと思うぞ」

「……世間一般でいうと、そういう『よくできた妹』は多いと思いますか?」

「少ないんじゃないか? 俺の友だちの妹なんかは、甘えたがりで手のかかるらしいし……漫画とかでも、そういう妹の方が多いだろ」

「……つまり、私は……世間一般の定義から外れた妹ですか……」


 なぜかわからないが、結衣がショックを受けていた。


 今の話で、ショックを受ける要素なんてあったか?

 よくできた妹っていうことで、遠回しに褒めてみたつもりなんだけど……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ものの新作を始めてみました。
↓のリンクから飛べます。
二度目の賢者は間違えない~最強賢者が転生したら、なぜかモテモテになりました~
よかったらどうぞ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ