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90話 妹といつもの日常を送る……はずだった

 全ての授業が終わり、放課後になる。

 雑談する者、部活に向かう者、遊びに行く者……

 クラスメイトたちが自由に過ごす中、俺はというと……


「宗一、遊びに行きましょ」

「兄さん、デートをしましょう」


 幼馴染と妹に迫られてた。


「宗一は、小さい頃からの付き合いのあたしを優先してくれるわよね?」

「兄さんは、彼女でもあり妹でもある私を優先してくれますよね?」

「えっと」

「宗一っ」

「兄さんっ」


 ぐいぐいと、左右から二人が前のめりになるくらいに迫る。


 明日香の告白以来、こんな日々が続いてた。


 振り向かせてみせる、という言葉にウソはなかったらしく、あれから、明日香は毎日アプローチしてくる。

 平日は放課後だけじゃなくて、休み時間も絡んできて……

 休日は休日で、朝から遊びの誘いが来る。


 一方の結衣は、そんな明日香に対抗してるらしく、『彼女のフリ』に磨きがかかっていた。

 ヤキモチを妬いてみせたり……もちろん、演技だろう……時に甘えてみせたり。

 妹なんだけど、思わずドキッとしてしまう時もある。


 美少女二人に迫られるという、夢のようなシチュエーションだけど、あまりうれしくない。

 一方は、告白を保留にしてて……

 一方は、『フリ』の恋人で……


 ほら。

 こんな状況下で、素直に喜べるわけがないだろう?

 色々な意味で気まずい。


「悪いが、今日は予定があるんだ」

「明日香さん、聞いてます?」

「結衣ちゃん、聞いてる?」


 二人は共に尋ね合い、同時に首を横に振る。


「ちょっと宗一、あたしたちが知らない用事ってなに?」

「もしかして、その場しのぎのウソなんですか? むぅ……兄さんは、私たちと一緒にいたくないんですか? そ、そんなことないですよね?」

「なんでそんな結論になるんだ。そうじゃなくて、今日は買い物に行かないといけないんだよ」

「あ……そういえば、冷蔵庫が空っぽになった、って言ってましたね」

「今日は惣菜でも買って、他の日にしたら?」

「惣菜より手作りの方がいいだろ? あと、今日はセールなんだ」

「主婦みたいねえ」

「というか、主夫ですね」


 ほっとけ。


「ま、そういうことなら仕方ないわね」

「わかってくれたか」

「じゃあ、行きましょ」

「あん?」

「せっかくだから、みんなで一緒に買い物よ」

「なんでそうなるんだ?」

「決まってるでしょ? 少しでも宗一と一緒にいたいからよ」


 恥ずかしい台詞をサラリと口にする明日香。

 そのくせ、照れた様子はない。

 こういうところ、男前というべきなのかどうか……

 俺の方が恥ずかしくなるぞ。


「兄さん、準備はまだですか?」

「結衣もついてくるのか?」

「当たり前です! 兄さんは、私を放っておくつもりだったんですか?」

「そんなつもりはないけど……お菓子は買わないからな?」

「もうっ、私は子供じゃないんですよ」


 ぷくー、と頬を膨らませる結衣。

 そういうところは、まだまだ子供っぽい。

 ただ、かわいらしくもあるので、特に指摘しない。




――――――――――




 買い物を終えて、家に帰る。

 肉や野菜などを冷蔵庫にしまい、常温で平気なものは棚にまとめておく。


 三人で買い物をしたからか、いつもより時間がかかった。

 もう日が暮れ始めてる。

 このまま夕食の準備を始めるか。


「兄さん、今日のごはんはなんですか?」

「んー……そうだな」


 食材は買ったばかりなので、たっぷり。

 時間はそれなりに。

 色々なレシピが思い浮かぶけれど、一つに絞り込むことができない。


「リクエストはあるか?」

「兄さんの作るものなら、なんでもいいですよ」

「なんでも、ってのが一番困るんだけどな」

「でも、本当に、なんでも構いませんよ? 兄さんの作るものはどれもおいしいですし……その、えっと……兄さんの手料理を食べられるなんて、幸せいっぱいで……えへ。ちょっとした、し、新婚気分といいますか……」

「うん? レンコン?」

「そ、そうですね! レンコンとかいいと思いますっ、に、煮物とか!」

「また渋いものを選ぶな。ま、いいけどな」

「うぅ……また、ごまかしてしまいました……こういうところでストレートにいけば、それなりの変化が期待できるかもしれませんが……や、やっぱり、恥ずかしいです……というか、私の願望と妄想、ダダ漏れです……ちゅ、注意しないといけませんね……はふぅ」


 キッチンカウンターの向こうで、疲れたようにソファーに背中を預ける結衣が見えた。

 なにをそんなに疲れてるんだろう?


「じゃあ、煮物と……あとは魚を焼いて、豚汁を合わせてみるか」


 献立を考えてると、ピンポーンとインターホンが鳴る。


「はいはい、っと」

「あ、兄さん。私が……」

「いいよ。結衣は、ゆっくりしててくれ」


 疲れてる妹に来客の対応を任せるのは申しわけない。

 玄関に移動して、扉を開ける。


「はい?」

「こんにちは!」


 知らない女の子がいた。


 歳は、結衣より一つか二つ下、という感じだ。

 明るく活発そうな顔立ち。

 長い髪はツインテールでまとめて、リボンを飾っている。

 髪型のせいか子供っぽい服のせいか、幼い印象を受けるが、それがマイナスに働くことはない。

 子供っぽいところに庇護欲をそそられて、守ってあげたくなるような女の子だ。


「兄さん、誰なんですか?」


 興味を覚えたらしく、結衣も顔を出した。

 女の子を見て、不思議そうな顔をした。

 どうやら、結衣の知り合いではないらしい。


 となると、誰だ?


「えっと……どちらさま?」


 女の子は、俺に応えるように、にっこりと笑う。

 そして……


「お兄ちゃん!」


 とんでもない爆弾発言を口にしながら、俺の胸に飛び込んできた。

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