09話 妹は大胆に行動します
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上履きに履き替えたところで結衣と別れた。
一年の教室は一階。三年は三階だ。学年が上がれば上がるほど苦労が増えるという、上級生に優しくない学校なんだよな、ここ。
えっこらせっこらと階段を登り、三階に到着。そのまま、自分のクラスに移動した。
「「「七々原が来たぞ!!!」」」
扉を開けた瞬間、クラスメイトが一斉にこちらを見た。
おぉ、と思わず後ずさってしまう。
そうやって、クラスメイトたちお迫力に気圧されている間に、ぐるりと囲まれてしまう。
「おい、昨日のアレはどういうことだ!?」
「あの子、七々原の妹だよな!? それなのに『彼氏』『彼女』って、おかしいだろう!」
「もしかしてもしかして、七々原くんってシスコン?」
「禁断の愛、っていうやつ? きゃーっ、七々原くんやるぅ♪ 詳しく聞かせて!」
……そういえば、告白の現場をクラスメイトたちに見られたんだよな。あれから色々とあったせいで、すっかり忘れていた。
現実逃避をしていた、ともいう。
「宗一……あんた、結衣ちゃんに手を出していたの……?」
明日香も騒動に加わり、ゴミを見るような目を向けてきた。おいおい、幼馴染に対してその目、ひどすぎないか?
でも、否定できない。たった一人の妹に手を出す兄……ゴミじゃないか!? ごめんなさい。
「え、えっと……」
ここで交際を認めたら、さらなる騒動に発展しそうだけど……『彼氏役』を受けた身としては、否定するわけにはいかないよな。
仕方ない、やるか。これも結衣のためだ。
「まあ、その、なんていうか……確かに、俺は結衣と付き合っているよ」
俺の言葉に、クラスメイトたちが一斉に声を上げた。
爆ぜろ! とか、シスコン! とか、犯罪者! とか。あれこれと怒号が飛び交う。その大半は、俺に対する恨み節で、ヘイトが集中していた。
うん、お前ら言いすぎじゃないか? 傷ついて、泣いちゃうぞ。ぐすん。
「あー……みんな、勘違いしてるみたいだけど、結衣は義理の妹だぞ」
「え? そうなの?」
「ああ。小学生の頃に父さんが再婚して、それで、結衣が妹になったんだ。だから、付き合うことはなにも問題はない」
一応、みんなは納得してくれたらしい。
さきほどまでの、暴徒一歩寸前というような雰囲気が消える。
「ねえ、宗一。あんた、ホントに結衣ちゃんと付き合っているの?」
「あ、ああ。もちろん」
「そんな素振り、まったくなかったじゃない。昨日の昼、結衣ちゃん、告白されてたし……」
この反応、明日香は疑っているのかもしれないな。さすが幼馴染、鋭い。
明日香を騙せるかどうか……それが、第一関門だな。
「付き合い始めたのは、ついこの前なんだよ」
「あたし、聞いてないんだけど」
「なんで、明日香にいちいち報告しないといけないんだよ」
「それは……」
「まあ、義理とはいえ結衣は妹だから、そういう点では色々と言いづらい、っていうところがあったからな。今まで隠していたんだけど……でも、そんな風にコソコソしていたら、まるで、俺たちに非があるみたいだろ? 別に、なにも悪いことしてないのに……だから、堂々とすることにしたんだ。俺たちはやましいことはなにもない、ちゃんと相手のことが好きで……立派な彼氏彼女なんだぞ、って」
我ながら、けっこう良いことを言えたと思う。
その証拠に、明日香は、完全に納得はいっていないみたいだけど、これ以上、踏み込んではこない。
ひとまずは様子を見よう、っていう感じかな?
「あっ、兄さん! ちょっといいですか?」
「妹ちゃんだ!」
突然、結衣が現れて、再び教室がザワザワとした。
そんな雰囲気に億することなく、むしろ堂々と、結衣は教室に入ってきた。
そして、俺の前に移動して、はい、と弁当箱を差し出す。
「兄さん。お弁当を忘れていましたよ」
「あっ……マジか。ありがとう、助かったよ」
「自分で作ったのに忘れるなんて、兄さんはそそっかしいですね。やれやれです。兄さんのフォローをする私の身になってくれませんか? まあ、いつでもフォローしたいというか……いえ、なんでもありません。とにかく、もっと気をつけてください! だらしないですよ」
「うっ、面目ない」
「まあ、いいです。許してあげます。おかげで、兄さんの顔を見ることができたから、よしとします」
「朝、一緒に登校しただろう?」
「私は、いつでもどこでも、兄さんと一緒にいたいんですよ? その……兄さんの恋人ですからね!」
これも演技なのだろう。
ただ、ちょっと慣れていないらしく、結衣は顔を赤くしていた。
でも、周囲には、恋人特有の照れと映ったらしく、おーっ、と騒いでいた。
「兄さん。今日のお昼は予定はありますか?」
「いや、なにもないよ」
「なら、一緒にごはんを食べませんか? それで……あーん、をしたり……いえっ、なんでもありません! その、中庭で一緒に……どうですか?」
「いいよ。一緒に食べるか」
「はいっ」
結衣は、ニッコリと嬉しそうに笑う。
とても『彼女』らしい笑顔で……よく、こんな演技ができるなあ……と、ついつい感心してしまうのだった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
この作品は主人公視点と妹視点を交互に使っているのですが、わかりにくいところはあるでしょうか?
一応、気をつけていますが……
なにかあれば、遠慮なく意見をいただけると幸いです。
これからもよろしくお願いします。