86話 妹とみんなで遊園地に行こう!・6
<結衣視点>
迂闊でした。
まさか、凛ちゃんがラッキーハプニングを起こしてしまうなんて……
凛ちゃんは、『怖いものが苦手で、つい』と言ってましたが……
ちょっと怪しいです。
好きとまでは言いませんが、兄さんに対してある程度の好意を抱いてるのは確か。
このハプニングがきっかけで、恋心に発展してしまう可能性も……
強敵ですね。注意しないといけません。
「どうしたんだ、結衣? なんか……怒ってる?」
「いいえ。怒ってなんていませんよ」
隣を歩く兄さんが、そう問いかけてきて、私は首を横に振りました。
むぅ……兄さんは、的確に私の気持ちを読み取りますね。
さすが兄さんです。
兄さんはいつも私のことを考えてくれて、そんな優しいところが……って、違います!
私は怒っているんです。
凛ちゃんに抱きつかれて、デレデレするなんて……
私というものがありながら……
もうっ、兄さん!
浮気はダメですよ。兄さんは、妹しか見ていないとダメなんですからね?
という私の想いを伝えるべく、拗ねているのですが……
「そっか、腹が減ったんだな? だから、苦い顔をしてるんだろ?」
兄さん、ぜんぜん気づいてくれません……
私のことを考えてくれるのはうれしいですが、想いも汲み取ってほしいです。
兄さんの鈍感!
でもでも、そんな兄さんも好きです!
「そろそろ飯にしないか?」
兄さんがみんなに声をかけました。
「そうね……賛成。言われて気がついたけど、けっこうお腹が減ってるかも」
「楽しいと、お腹が減っていることも忘れてしまいますからね」
むうう。
凛ちゃん、兄さんに抱きつくことができて、そんなに楽しかったんですか?
「どうしたの、結衣?」
「なんでもないです」
「……もしかして、お化け屋敷でのこと、気にしてる?」
こそっと、凛ちゃんが耳打ちしてきました。
ついつい、私はぴくりと体を動かして、素直に反応してしまいます。
「やっぱりそうなのね」
「それは、まあ……あんなところを見せつけられたら」
「私が怖いの苦手なのは、結衣も知ってるでしょう? あれは事故よ」
「本当に?」
「本当よ」
「下心はありませんか」
「ないわ」
「……そうですか」
ほっ、と安堵します。
最近の凛ちゃんは、兄さんと仲が良いみたいだから、ちょっと気になっていたんですが……
何事もなくて……
「……という言い訳をしてみたのだけど、どうかしら?」
「えっ!? じゃあ、やっぱり凛ちゃんは……」
「冗談よ」
くすくすと凛ちゃんは笑います。
「先輩のことは、別に好きじゃないわ……今は、ね」
「り、凛ちゃん!」
「ふふっ」
ううう……
これ以上、ライバルが増えるなんて、勘弁してほしいです。
ましてや、それが凛ちゃんになると、強敵すぎますよ。
とはいえ、凛ちゃんも本気なのか冗談なのか、よくわからなくて……
小悪魔みたいな女の子、っていうのは凛ちゃんのことを指すんでしょうね。
――――――――――
<宗一視点>
園内のレストランで昼を食べた後……昼を食べる時も色々とあったが、割愛する……次のアトラクションを選ぶ。
「次はどうする?」
「ごはんの後なので、穏やかなものがいいですね」
「私も凛ちゃんに賛成です」
「なら、これにしない?」
明日香がパンフレットを見せて……って、近い近い!
俺に寄りかかるような感じで、パンフレットを見せつけてきて……
吐息がふわりと当たる。
「お、おい……明日香?」
「ん? なぁに?」
明日香はニヤニヤしてる。
こいつ、わざとだ!
「どうしたの? 顔が赤いけど……ふふっ」
「お、お前な……そんなのわかってるだろ」
「えー、なんのことか、さっぱりわからないんだけど。なにかあるなら、ちゃんと口にして教えてくれる?」
「いや、それは……」
「それは?」
「兄さんっ! 明日香さんっ!」
突然、結衣が割り込んできた。
「な、ななな、なにをしているんですか!? こんなところで、あ、あんなにくっついて……!」
「ちぇっ、邪魔されちゃったか」
「も、もうっ、明日香さんは……油断もスキもあったものじゃありませんね」
で……結衣は、なんで俺に抱きついてくるの?
自分のものだと主張するみたいに、俺の腕を両手で掴んで……
くっ……今度は、結衣の柔らかい感触が!
落ち着け、俺! 妹相手にそんなことを考えたら、どんな結末になるか、簡単に想像できてしまう。いくら彼氏彼女といっても、所詮はフリだ。
ここで調子に乗ったら、後で結衣からどんな目で見られることか……
「なによー、結衣ちゃんも人のこと言えないじゃない」
「え? ……ひゃっ!?」
どうやら、抱きついていたのは無意識の行動だったらしい。
慌てた様子で結衣が離れた。
「ふふっ、結衣ちゃんもなかなかやるわね」
「ち、違います、今のは、その……あううう」
明日香がニヤニヤと笑い、結衣が赤くなり、凛ちゃんがやれやれとため息をこぼして……
俺たちの日常は、いつも騒がしくて……
でも、なんだかんだで楽しいのだった。




