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84話 妹とみんなで遊園地に行こう!・4

「あの、兄さん……ちょっとお願いが……」

「ねえ、宗一。膝枕してくれない?」

「なっ!?」


 ベンチで休んでいると、突然、明日香が寄りかかってきた。

 今、結衣がなにか言いかけてたような気がするが、よく聞こえない。


「膝枕、って……なんでだよ?」

「頭がぐるぐるして、気持ち悪いの……だから、宗一の膝で休ませて」

「座ってるだけじゃダメなのか?」

「だーめ。そんなんじゃあ、ぜんぜん休まらないわ。宗一の膝でないとダメなのよ」


 明日香の顔は、ちょっと青い。

 程度はよくわからないが、気持ち悪いという言葉にウソはないみたいだ。


 ……まあ、ちょっとくらいならいいか。


「ほら」

「んっ……ありがと」


 ぽすん、と明日香が俺の膝に頭を乗せた。

 心地いい重みが加わる。


「宗一の膝枕、気持ちいいー……これ、病みつきになるかも」

「そんなこと言われても、何度もできないぞ?」

「ケチー」

「気分はどうだ?」

「いい感じ。ふぅ……癒されるー」


 猫のような感じで、明日香が甘えてくる。

 正直、ちょっとドキドキしてた。

 あの明日香が、こんなところを見せるなんて……

 ついつい告白のことを思い返してしまう。


 ……と、背中がゾクリと震えた。


「むうううぅっ……!」


 振り返ると、ふくれっ面の結衣が。

 ものすごい形相でこちらを睨んでいる。


「……兄さん、楽しそうですね」

「い、いや。別に、楽しいなんてことは……」

「ウソです。明日香さんに膝枕をして、とても楽しそうにしています。鼻の下が伸びています。女の子に甘えられて、うれしいんですか? 兄さんのえっち!」


 妹さまが怒っていらっしゃる。

 が、原因がわからない。

 ただ、明日香を介抱してるだけなのに……


 もしかして、嫉妬?

 ……なわけないか。


「ふふっ」


 明日香が小悪魔的な笑みを浮かべた……ような気がした。


「ねえ、宗一。頭を撫でてくれる?」

「えっ、なんで?」

「そうしたら、気分がよくなるような気がするからよ。ほらほら、早く」

「あ、ああ……これでいいか?」


 言われるまま、明日香の頭を撫でる。

 明日香は、ほんのりと頬を染めながら、気持ちよさそうに目を細めた。


「はふぅ……良い感じよ。それ、もっと……んっ……」

「うっ、ううう……そ、そんなことまでするなんて……」


 ますます結衣の視線が険しくなる。

 一方で、明日香はまったりとしながら甘えてきて……


 なにこの板挟み?

 ジェットコースターに乗っただけで、どうしてこうなるんだ?


「兄さんっ!」

「は、はい!?」

「私も、膝枕をしてください!」

「え?」

「私も気分が悪いんです! だから、膝枕をしてください。いいですね!?」

「い、いいです!」


 そんな元気な病人はいないと思うが……

 勢いに飲まれて、コクコクと頷いてしまう俺だった。


「で、では、失礼して……んっ」


 反対側の膝に、結衣が頭を乗せた。


「ふぁ……こ、これが兄さんの膝枕……独占できないのは残念ですが……でもでも、とても素晴らしくて……んっ、兄さん♪」

「えっと……気分はどうだ? 大丈夫か?」

「はい……幸せですぅ……」


 どういう答えだ?

 結局、体は問題ないのか?


「先輩、先輩。こんなところでハーレムを作るなんて、すごいですね。ある意味、尊敬しますよ」

「そんなものを作った覚えはないぞ」

「ならば、この光景をどう説明するんですか?」

「うっ」


 女の子二人を膝枕してて……

 ハーレムと言われても仕方ないような気がしてきた。


「せっかくなので、私も加わっていいですか?」

「せっかく、が意味不明なんだけど」

「まあまあ、細かいことは気にせずに。ふふっ」

「後輩ちゃん。宗一の膝はあたしのものよ?」

「いくら凛ちゃんでも、兄さんの膝枕は譲りませんからね?」


 縄張りを主張するように、二人が言う。

 俺の膝は、二人のものじゃないんだけど……たぶん、言っても無駄だろうな。

 妹と幼馴染に弱い俺だった。


「いえいえ、二人の邪魔をするつもりはありませんよ。先輩の膝枕を堪能できないのは残念ですが……私は、こっちで我慢しておきますね」


 凛ちゃんが後ろから抱きついてきた。

 俺の首に手を回して、ぎゅう……って。


「ふふっ……先輩とくっついちゃいました」


 ふぅー……と、凛ちゃんの吐息が首筋に触れて、ゾクゾクっと背中が震えた。

 それに、凛ちゃんの頬が触れて……

 温かいというか気持ちいいというか……な、なんだこの感覚は?

 例えるなら、親に抱きしめられているような安心感。

 そんな温かい感覚に包み込まれて、思わずぼーっとしてしまう。


「あぁっ、兄さんがとろけ顔に……!?」

「なるほど、そういうやり方もあるのね……後輩ちゃん、侮れないわね!」

「ふふふっ」


 結衣と明日香の視線を受けて、凛ちゃんは得意げに笑うのだった。


 ……どうでもいいけど、君たち、そろそろ離れてくれないかな?

 いい加減、周囲の視線が厳しくなってきたよ。

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