08話 妹は見せびらかしたいようです
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
※ジャンル別、日刊ランキングで1位、週刊で12位をいただけました。たくさんの応援をいただき、本当に、感謝しかありません。楽しんでいただけるようなものを書いていきたいので、これからもよろしくお願いします。
<結衣視点>
朝食を終えて、準備を終えて、兄さんと一緒に家を出ます。
……そう、兄さんと一緒に!
いつもは恥ずかしくて、ついついそっけない態度をとってしまい、一人で登校していましたが……今日からは違います。
何しろ、私と兄さんは『恋人』ですからね。一緒に登校するのが当たり前なんです。
「な、なあ……手、ホントに繋がないとダメか?」
「それはもちろん! 私と兄さんは恋人なんですからっ。一緒に登校は当たり前! それに、手を繋いでいないと不自然ですよ? 最近の恋人は、それくらい当たり前ですし……むしろ、これくらいやらないとバレてしまいます。兄さんは考えが足りないんじゃありませんか? ダメダメですね」
「うっ……わ、悪い。何しろ、彼女がいたことないからさ……こういうの、なかなかわからなくて」
「……兄さんは、彼女がいたことがないんですか?」
「ああ、情けないことにな」
「そうですか。まあ、当然ですね」
「ぐさっと来るようなことを言うなよ。あと、なんで機嫌良さそうなんだよ」
それはもちろん、兄さんに彼女がいないから、うれしいんですよ♪
まあ、恋人のフリを引き受けてくれる時点で、彼女がいないことは察しがついていましたが……
誰も付き合ったことがないと聞かされると、たまらないものがあります。私が、兄さんの初めての彼女です! 初カノです!
だから、ちょっとぐらい察しが悪くても許してあげます。
何しろ、初めての兄さんと一緒に登校……しかも、手を繋いで! 手を繋いで! とても大事なことなので、二回言いました。
幸せすぎて幸せすぎて、もう、多少のことは許してしまえます。今の私、菩薩です。
兄さん♪ 兄さん♪
「結衣? どうしたんだ、なんかニヤけてるけど……面白いことでもあったか?」
「いえ! 兄さんの顔を見ていたら、つい」
「俺の顔、笑えるほどおかしいのか!?」
いえ、とても格好いいです♪
まあ、そんなこと恥ずかしくて、とても口には出せませんが。
「……け、けっこう見られているな」
電車に乗り、さらに歩いて、学校に近づいてきたところで、同じ制服を着た生徒の姿が増えてきました。
私たちのことを知っているのでしょうか? 手を繋ぐ私と兄さんを見て、驚くように目を大きくしたり、コソコソと話をする人がいます。
ふふふ♪
みんな、注目していますね。もっと見てもいいんですよ? 私と兄さんのラブラブなところを、もっと。私と兄さんは、恋人なのですから♪
「結衣? だ、大丈夫か?」
「はい? なにがですか?」
「あれ? いつも通りの結衣だ……うーん、見間違えかな? とんでもない顔をしていたような」
「失礼ですね、兄さんは。兄さんの顔の方がとんでもありませんよ」
危ないです。兄さんに変に思われてしまうところでした。
まだ初日ですし、ここは、おとなしくした方がいいでしょうか?
……いえ、守りに回っていてはいけません。攻撃こそ最大の防御。もっともっと攻めないといけません!
「っ!!!」
私は意を決して、兄さんの指に私の指を絡めました。いわゆる、恋人繋ぎ、というヤツです。
「ゆ、結衣っ!? こ、これは、その……」
「そんなに驚かないでください。私まで恥ずかしくなるじゃないですか」
「わ、悪い。でも、どうしてこんな……?」
「私たちが付き合っていることを知らない人は、たくさんいるでしょう。なにしろ、昨日の今日ですからね。だから、どんどんアピールしていかないといけません。もっともっと、認知度を高めていかないといけませんよ。わかりましたか?」
本当は、私が兄さんとイチャイチャしたいだけなんですけどね!
んっ……兄さんの手、大きくて、温かくて、ドキドキしてしまいます。
「な、なるほど。さすが結衣、色々と考えているんだな」
「いえ、それほどでも。やるからには、全力を尽くしているだけです。それに、中途半端にしたら、失敗してしまうかもしれませんからね。兄さんも、全力でお願いしますよ?」
「お、おう」
「さあ。そういうわけで、に、兄さんの方からも、私の手をぎゅう、ってしてください!」
「えっと……やらないとダメか?」
「なんでですか! イヤなんですか?」
「そうじゃなくて、ちょっと恥ずかしいっていうか……なあ?」
そんなこと言わないでください。私まで恥ずかしくなってしまうじゃないですか。今でも、心臓がどうにかなってしまいそうなくらい、緊張しているんですよ?
「ほら、兄さん」
「わ、わかった……ほら、これでいいか?」
ぎこちないながらも、兄さんも私の手に指を絡めてくれます。
そっと、優しく、ガラス細工に触れるように丁寧に……
んっ♪
なんていうか……こ、これはもう、たまらないですね! 最高ですっ!
こんな風にされたら、私、胸がドキドキしてしまいます。兄さんは、私を萌え死させるつもりなんでしょうか?
いいですよ。ばっちこい、です。兄さんに萌え死させられるなら本望ですから。でもでも、兄さんも私に萌えてくれないとイヤですからね? さあ、兄さん、もっと私を感じてくださいね。
「……これは、なかなか恥ずかしいな。想像以上だ」
「恥ずかしいだけですか? その、ほら……なんていいますか、私に対して思うところはないんですか?」
「そうだな……こんな恥ずかしいことをさせて悪い。あと、俺なんかで、それも悪い」
兄さん、鈍感すぎます。もう。
でもでも、手が温かくて、心も温かくて……幸せです♪
「とりあえず、行くか?」
「はい」
兄妹仲良く……そして、恋人らしく過ごしながら、私たちは学校に向かいました。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
普通に書いているつもりなのですが……
なぜか、結衣がどんどん壊れていくような?
この調子でいくと、どうなってしまうのやら。
なにはともあれ、今後もお付き合いいただけると幸いです。
これからもよろしくお願いします。