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71話 妹とおんぶと思い出・2

「あの……兄さん?」

「うん?」

「私、えっと、その……お、重くありませんか?」


 結衣がやけに深刻そうな声で、そんなことを尋ねてきた。


「別に?」

「そ、そうですか……」

「気にしてたのか? そんなこと、どうでもいいじゃないか」

「そんなこと、ではありませんよ! 女の子にとって、重い、重くないは、永遠のテーマなんです! 常に抱える悩みなんです! 気軽に言わないでくださいっ。もうっ、兄さんはデリカシーがないんですから」

「す、すまん」


 よくよく考えれば、男はそうでもないけど、女の子は体重を気にするよなあ。

 それなのに、俺の適当な発言。

 反省しないと。


「悪かった。結衣は羽のように軽いよ」

「あからさまなお世辞を言われても、それはそれでイヤというものなんですよ?」

「む、難しいな……」

「女の子は難しい生き物なんです」


 まさに今、そのことを実感しているよ。


「それより……そんなに、しがみつかなくてもいいぞ?」

「どうしてですか? さっきは、しっかり掴まっているように、って言っていたじゃないですか」

「まあ、そうなんだけど……」


 予想以上に、結衣がしがみついてくるものだから、背中に柔らかい感触が……

 ふにっと、大きくて弾力のある膨らみが二つ。

 成長したなあ……


 って、俺は変態か!


「ど、どうしたんですか? 兄さん」

「い、いや。なんでもないぞ」


 ぐいぐいと、柔らかい膨らみが押し付けられる。

 わざとやっているのか?


 って、そんなわけないか。

 でも……それなら、どうして結衣は恥ずかしそうな声を出しているんだろう?

 謎だ。


「むぅ……こ、ここまでしているのに、こんなに反応が薄いなんて……こ、これじゃあ、私が恥ずかしいだけじゃないですか……でもでも、多少は効果がありそうですし、ここでやめてしまうのも……」

「どうしたんだ? ぶつぶつと」

「いえ、なんでもありませんよ。兄さんの鈍感とか、もっと私のことを気にかけるべきだとか、そんなことは考えてませんから」


 つまり、気にかけろ、ということか?

 でも……なにを?


 最近は、結衣の言いたいことを理解できているような気がするが……

 肝心なところで、正解を見失う。

 結局、なにが言いたいんだろう?


「……」

「……」


 やがて、言葉が途切れる。

 お互いに無言で帰り道を辿る。


 静かな時間だ。

 でも、悪くない。

 いつもいつも賑やかだから……

 たまには、こういう時間があってもいいよな。


「……兄さん」

「うん?」

「こうしていると、昔を思い出しませんか?」

「昔?」

「ほら。私が兄さんと家族になったばかりの頃……一緒に遊んで、私が転んで、それで兄さんが……」

「あー、あのことか」


 結衣が妹になって……

 まだ父さんも母さんも家にいて、幸せだった頃の記憶。


 転んで、膝を擦りむいた結衣が歩けないと泣いて……

 俺がおんぶをして家に連れて帰ったんだ。


 まだ子供だから、そんなに体格差はないし……

 そこまで力があるわけじゃないから、ものすごく大変だったことを覚えてる。


「あの時はきつかったなあ……ちゃんと結衣を家に連れて帰ることができたのが、奇跡みたいだ」

「なんですか、それ。私が重いみたいじゃないですか」

「ち、違う違う。子供だから大変だった、っていうだけで、他意はないさ」

「それならいいんですが……」


 きっと、結衣は今、ちょっとだけ不機嫌そうに頬を膨らませているんだろうな。


 結衣の顔が想像できて、なんとなく笑えた。


「……大変でした?」

「それは……えっと」

「別に拗ねたり怒ったりしないので、普通に答えてください」

「そうだな……まあ、大変だったな。子供だから力がないってのもあったけど……あの時、初めて結衣が泣いたから……それがどうしていいかわからなくて、大変だった、っていうのがある」

「ごめんなさい、迷惑をかけて」

「気にするなよ。妹は兄に迷惑をかけてなんぼだ」

「兄さん……」

「もっともっと、かけていいからな? 結衣一人くらいなら、受け止めることができるから」

「……兄さんは優しいですね」


 ぎゅっと、結衣が体を寄せてきた。

 甘えられているような感じがして……ちょっと、うれしい。


「兄さんはいつもいつも優しいから、困ってしまいます」

「なんで困るんだ?」

「それは……兄さんのことを、もっと……」

「もっと?」

「……す……なんでもありません」

「えー、そこで止めるのか? 最後まで言ってくれよ」

「言えません。兄さんの不潔」

「えぇっ!?」


 突然の口撃に、心のHPが削られてしまう。

 俺、なにかしたか……?

 うぅ……やっぱり、この年頃の女の子は難しいな。


「でも……兄さんは、今も昔も……あの時も、変わりませんね」


 昔を思い出すような、結衣の遠い声。

 懐かしんでいるようで、思い出に浸っているようで……

 そして……どこか、寂しそうだ。


「あの時?」

「はい。あの時も、兄さんは優しかったです。とても優しくて……だから、私は……」

「それは、いつの……」

「兄さん、もう大丈夫です。降ろしてください」


 あえて、だろう。

 会話を遮り、結衣は地面に降りた。


「あとは自分で歩けます。さあ、行きましょう」

「……ああ」


 結衣は、なにを話そうとしていたのか?

 知りたいと思いながらも……でも、聞くことはできなかった。

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