07話 妹は計画通りと笑みを浮かべました
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<結衣視点>
人前ではどう振る舞うか。どういう風に呼び合うか……などなど。
今後のことを一通り決めたところで、私はリビングを後に……しようとしたところで、一度、兄さんを振り返ります。
「じゃあ、明日からお願いしますね、兄さん」
「ああ、わかっているよ」
「あと、彼氏面をして、あまり慣れ慣れしくしないでくださいね? 手を繋いだり肩を抱いたり、そういうことをしてはダメですよ? 絶対にダメですからね?」
「そんなに念押ししなくても平気だから。そんなこと、するわけないだろう」
押すな押すな、の感じで言っているんですが、まったく気づいてもらえません……もう、兄さんのばか。
「じゃあ、おやすみなさい」
「ああ。おやすみ」
今度こそ、私はリビングを後にして、自分の部屋に移動します。
ぱたんっ。
扉を閉めて、それから、ベッドに横になり……
「きゃあきゃあきゃあっ♪ ついに、ついにやってしまいました! 本当に実行してしまいました! 私、なんて大胆なんでしょう! そしてそして、成功してしまいました!!! 一世一代の大勝負、勝ってしまいました! 兄さん♪ 兄さん♪」
私は枕を両手で抱えて、ゴロゴロと身悶えました。
顔はにやけてしまい、とても人様に見せられません。なんとかしようとしても、どうすることもできません。
だって、だって……
「兄さんが私の彼氏に……! そして、私が兄さんの彼女に……! 素敵です、素敵すぎますっ。ああぁ、これはもう夢でしょうか? ほっぺをつねってしまいます。痛いっ。でもでも、痛いということは夢ではなくて、現実……うっとりしてしまいます。兄さん♪」
あくまでも『フリ』ではありますが……それでも、兄さんと彼氏彼女の関係になれたことは、とても嬉しいです。ニヤニヤしてしまいます。胸がキュンキュンしてしまいます。
「ふふふ……計画通り、ですね♪」
告白されることに困っているから彼氏のフリをしてほしい……そういう話を持ち出して、仮ではあるけれど、兄さんと『彼氏彼女』の関係になる。
以上が、私の計画です。
これで、余計な告白を回避できます。さらに、『彼氏彼女』になったことで、兄さんとより深い、親密な時間を過ごすことができます。さらにさらに、『兄さんは私のもの』……と、他の女の子たちを牽制することができます。
まさに、一石三鳥!
こんなことを思いつくなんて、自分で自分が恐ろしいですね。
もしかして、私、天才?
「兄さんが彼氏♪ 私が彼女♪」
彼氏彼女の関係になったことを利用しない手はありません。
これを機会に、兄さんと、て、手を繋いだり……
それだけじゃなくて、ぎゅうってしてもらったり……
さらにさらに、き、キスとか……
「ひゃあああっ♪」
夢が広がります。バラ色の夢です。たまりません。
「明日から、兄さんと恋人なんですね……早く明日にならないでしょうか? うぅ、待ちきれないですね……いっそのこと、今から兄さんの部屋に行ってしまいましょうか? 恋人なら、それくらい当たり前ですよね……それで、そのまま一緒にベッドで! ……はぅ」
妄想が加速して、思わず、鼻血が出てしまいそうになりました。
危ない、危ない。
こんな状態では、兄さんのところに行くことなんてできませんね。兄さんの目の前で、妄想するあまり鼻血を出してしまったら、私、羞恥のあまりどうにかなってしまいそうです。
非常に、ひじょうううに惜しいですが、今日はやめておきましょう。
代わりに、たくさん妄想しておきましょう。
「兄さん……これから、ずっと一緒ですよ」
『妹』という関係だけではなくて、さらに一歩進んだ、『恋人』という関係……それは、とても強い絆があるはずです。
離れ離れになることなんて、絶対にないような、強い絆……私は、それを求めてやまないのです。
「……もう、一人になんてなりたくありません」
これで、兄さんとずっと一緒に……
いつまでも、いつまでも……
「離れたりなんてしませんからね……そんなことは、絶対にありません」
小さな声で……だけど強く、私はつぶやいた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、結衣が何を考えていたのか、をメインに書いてみました。
妄想たくましい妹です。
次回から、恋人のフリが始まり、イチャイチャします。
よければ、またお付き合いください。
これからもよろしくおねがいします。