表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/300

67話 妹は追いつめられてしまいます

<結衣視点>



「結衣、大丈夫?」


 授業が始まる前の、ちょっとした空き時間。

 凛ちゃんが、心配そうに私の顔を覗き込んできました。


「えっと……なにがですか?」

「気づいていないの? 目、すごいことになっているわよ」


 凛ちゃんが取り出した手鏡を見ます。


 ……うわっ。

 クマがひどいことに。

 目の下がくすんでいて、これは……女の子として恥ずかしいですね。


「気づきませんでした……」

「先輩は指摘してくれなかったの?」

「心配そうな顔はしていましたが……」


 兄さんのことだから、女の子に顔のことを言うなんて……と迷ってしまい、指摘することができなかったんでしょう。


 兄さんの気遣いは、正直、助かります。

 こんなクマがあるなんて、兄さんから指摘されていたら、私、恥ずかしさのあまりどうにかなっていたかもしれません。


 ……でも、クマはばっちり見られていたんですよね?

 あううう。

 ダメです、やっぱり恥ずかしいです。


「こんなクマができるなんて、どうしたの? 眠れなかった?」

「えっと……はい。ちょっと、考え事をしてしまって」

「それは、先輩絡みのこと?」

「そんな感じですね」

「厄介な性格ね、結衣は」

「あはは……最近、自覚してきました」

「メイク道具は?」

「忘れてしまいました……」

「なら、私のを貸してあげる。まだ時間あるから、治してきた方がいいわ」

「ありがとうございます」


 凛ちゃんからメイク道具を借りて、トイレに向かいます。


 日常生活に問題をきたしてしまうなんて……

 兄さんと天道さんのこと、早くなんとかしないといけませんね。


 ……でも、どうすればいいんでしょう?


 解決方法が見つからず……

 私は、ただただ、胸をざわざわさせました。




――――――――――




 数学の授業が終わり……

 私は、難しい顔をしていました。


 先日と同じように、再び、抜き打ちの小テストが行われました。

 勉強をしていたので、以前のようなひどい点は避けられましたが……

 納得のいくものではありませんでした。

 いつもの私なら、もう少し上を狙えたはずです。


 そして、そのことがわかっているからこそ……


「七々原さん」


 ……先生も、厳しい視線で私を呼び止めました。


「なんでしょうか?」


 私は、あえて素知らぬ顔をして応えました。


「今回の小テストだけど……前回ほどひどくはないけど、いつものあなたなら、もっと上を狙えたのではなくて?」

「……すみません。今日は、少し寝不足気味で……」

「夜更かし? それとも、恋人のお兄さんとなにかしていたのかしら?」

「先生っ、それは……!」


 先生の邪推に、思わず声を荒げてしまいそうになります。


「違うの? なら、どうして寝不足に?」

「色々と考えることがあって……それで、つい」

「考えごとね……それも、お兄さん絡みなのかしら?」


 ぐっ、と奥歯を噛みました。


 どうして、この人は神経を逆撫でるようなことを……!

 言葉は我慢したものの、心は我慢できず、睨みつけてしまいます。


 しかし、先生は余裕の態度を崩しません。


「一応、言っておくけれど、私は七々原さんに嫌がらせをしたいわけじゃないの。むしろ、あなたのことを考えているの」

「私のことを?」

「兄妹で付き合うなんて、おかしいわ。血が繋がっていなくてもありえない。生徒が間違ったことをしているのなら、それを正すのは教師の……大人の役割でしょう?」

「間違って……いる?」


 また、その言葉を突きつけられました。


 私は、兄さんと付き合ってはいけないんでしょうか……?

 兄さんに恋をしてはいけないんでしょうか……?


 でも、今の私の心は、大半が兄さんへの想いで構成されています。

 それを否定されたら……他に、なにが残るんでしょうか?


 ……なにも残りません。

 空っぽです。


「七々原さん、あなたは優秀な生徒です。本来の自分を取り戻すことができれば、もっと上を目指すことができるでしょう。そうやって、今からコツコツと努力を積み重ねていけば、誇張ではなくて、東大を目指すことも可能ですよ? それは、とても名誉なことですからね」


 ……なにを言っているんでしょうか、この人は?

 東大?

 名誉?

 そんなもの、欠片も興味がありません。


 私が欲しいものは、ただ一つ。

 ……兄さんからの愛情。


「……すみません。次の授業の準備があるので、失礼します」


 次の授業が移動教室なのをいいことに、私はこの場を離れました。

 先生の顔なんて、一分一秒たりとも見ていたくありません。

気に入って頂けたら、評価やブクマをしていただけると、とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ものの新作を始めてみました。
↓のリンクから飛べます。
二度目の賢者は間違えない~最強賢者が転生したら、なぜかモテモテになりました~
よかったらどうぞ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ