表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/300

62話 妹はいつもが一番です

「えっと……い、以上です」


 演技が終わり、結衣が離れる。

 もったいない、なんて思ってしまう俺は、シスコンになってしまったのだろうか?


「あー……うー……や、やりすぎてしまいました……せっかくの機会だからと、つい……は、恥ずかしいです……」


 結衣が赤くなっていた。

 やっぱり、最後の『甘えん坊の妹』は、恥ずかしかったらしい。


 普段の結衣と、真逆だもんな。

 でも、不思議と似合っていたというか、違和感がなかった。

 まるで、結衣がいつもああしたいと思っているみたいで……


 って、そんなわけないか。

 自分に都合のいい妄想は、やめておこう。


「えっと……結衣? 大丈夫か?」

「は、はい……問題ありません。気にしないでください」


 どう見ても問題あるように見えたけど、踏み込まないことにした。

 そっとしておいてほしい時もあるだろう。


「それで、その……どうですか?」

「え?」

「だから、妹のタイプですよ。兄さん的に、どれが一番でした?」

「うーん」


 考える。

 一番、インパクトが強いのは、最後の『甘えん坊の妹』だ。

 普段の結衣からは考えられないくらいの甘えっぷりで、ついつい、ドキドキしてしまった。


 でも、『ツンデレな妹』も捨てがたいんだよな。

 普段の結衣と似てるところがあるんだけど……

 実は照れ隠しでした、っていうのがたまらない。

 兄心的に、ちょっと萌えた。


 ただ、『小悪魔的な妹』も悪くない。

 結衣が大人びて見えて……

 『色香』を感じてしまった。

 妹相手になにを、と思わないでもないけど、意外な魅力を感じたのも事実だ。


 でも……


「ずるい答えになるかもしれないけど、どれでもない……かな」

「どれでもない?」

「ちょっと言葉にしづらいんだけど……結衣はいつもの結衣が一番というか、他に考えられないというか……いつも通りにしている結衣が、一番、魅力的だと思うんだ。『らしい』結衣の方が、俺は好きだな」

「す、好きっ!?」


 結衣の顔が一気に赤くなる。

 そんな反応をされると、俺も恥ずかしくなってしまうんだけど……


「いや、その、どんなタイプが良い、っていう話だからな? 変にキャラを作ったりしないで、いつも通りが一番、っていう話だからな?」

「そ、そうですか……そうですよね」


 心なしか、結衣は残念そうだ。


「兄さんが、ようやく目覚めてくれたのかと……残念です……」

「なんのことだ?」

「いいえ、なんでもありません」


 これ以上は聞かないように、という感じで鋭い目を向けられた。


 わかりました。聞きません。


 妹に弱い兄だった。


「まあ、タイプ? はいつも通りでいいんじゃないか? キャラを変えて、変に思われたら、逆に疑われるかもしれないし」

「そういうプレイの最中なんです、って言えばいいのでは?」

「よくないよ! 俺、変態じゃんっ」

「兄さんですから」

「どういう意味!?」

「兄さんですから」

「そういう風に見られていたのか!?」

「ふふっ、冗談ですよ」


 くすくすと結衣が笑う。


 今の結衣、小悪魔っぽかったな……

 演じた三種類のタイプは、どれも、結衣の中にある、別の心の一面なのかもしれない。


 そう考えると、俺はまだ、結衣の一部しか見ていないんだな。

 いつか、結衣の心の全部を見せてほしいが……どうかな。


「その……いつもの私が一番、ということですが……兄さんとしては、どういうところが魅力的に思えましたか? 参考までに、聞かせてください」

「んー……優しいところ、しっかりしてるところ、色々できるところ……」


 なんか、ピンと来ないな。

 もっと簡単に……

 一言で表せるようなもの。


 結衣の一番の魅力は……


「笑顔……かな?」

「笑顔ですか?」

「楽しそうに笑っている結衣は、すごくいいと思うな。素直にかわいいと思うぞ」

「そ、そうですか……」


 結衣が赤くなる。

 ただ、恥ずかしいながらもうれしくもあるらしく、頬がニヤニヤしていた。


「いつもの私が……笑顔が……えへ♪」

「結衣?」

「はっ……!? な、なんでもありませんよ? なんでもありませんからね? 兄さんに褒められて、胸がきゅんきゅんしているとか、幸せでとろけてしまいそうとか、そんなことはありませんからね? 変な勘違いをしないでくださいよ」

「お、おう?」


 気を取り直すように、結衣はこほんと咳払いをする。


「それじゃあ、立ち振舞いに関してはいつも通りということで……で、呼び方は、より親密度を出すために愛称に変える、ということでいいですね?」

「そうだな。いいんじゃないか」

「決まりですね。ではでは、がんばって天道さんからの疑惑を晴らしますよ! 今まで以上に、恋人らしい恋人を目指しましょう!」


 やけに張り切った様子で、結衣はえいえいおーと声をあげるのだった。

気に入って頂けたら、評価やブクマを頂けると、すごく励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ものの新作を始めてみました。
↓のリンクから飛べます。
二度目の賢者は間違えない~最強賢者が転生したら、なぜかモテモテになりました~
よかったらどうぞ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ