60話 妹はジャンルを変えてみる模様です・2
「……という感じなんですけど、どうでしたか?」
コロッと、結衣の態度が変わる。
あ、元に戻したのか。
「いや、なんていうか……すごい新鮮な感じだった」
「良かったんですか?」
「わりと」
「萌えました?」
「……正直、かなり」
ツンデレの結衣は、ストレートな言葉にぐさぐさと胸に来るものがあったけれど……
でも、普段は決して見られない顔に、思わずドキドキしてしまった。
「ふふっ、兄さんはツンデレ好きなんですね」
「そうなのかもしれない……」
こんなことができるなんて……
結衣、おそろしい子!
「それじゃあ、次のパターンを試してみますね」
「まだやるのか……って、そうか。三パターンあるんだっけ」
「はい。次は、『小悪魔な妹』ですよ」
元気な妹か。
これまた、普段の結衣からは感じられないものだ。
結衣は、いつも落ち着いているからな。
元気になると、いったい、どうなるんだろう?
ちょっとだけ、わくわくしてきた。
「じゃあ、いきますよ」
さっきと同じように、結衣は目を閉じて集中した。
少しの時間を置いて、『切り替え』が完了する。
「やっほー、兄さん!」
いきなりテンション高いな。
これのどこが小悪魔なんだろう?
不思議に思いながらも、とりあえず付き合う。
「ねえねえ、兄さん。一緒に遊びませんか?」
「ああ、いいぞ。なにする? ゲームでもするか?」
「んー、ゲームはいいです。今は、別のことをしたいですね。例えば……大人の遊び、とか」
「お、大人の!?」
「あれ? どうしたんですか、兄さん。顔が赤くなっていますよ……くふふっ」
「いや、だって、それは……」
「もしかして、変な想像でもしちゃいました? どんな想像をしたんですか? ねえねえ、聞かせてくださいよ? ほら♪」
これは……間違いない!
紛れもなく小悪魔だ!
「えっと、それはだな……そう! 大人がやるような知的なゲームを連想したんだ」
「そうなんですか。なら、そういうことにしておいてあげますね、くすくすっ」
結衣は笑いながら、軽く唇を舐める。
なんていうか……
一つ一つの仕草が、やけに艶めかしい気がする。
結衣って、こんなこともできたのか……
すごいの一言に尽きる。
「ねぇ、兄さん。もう遊びはいいから、ちょっと肩を揉んでくれませんか? 勉強のしすぎで、疲れてしまいました」
「あ、ああ。いいぞ。じゃあ、あっちを向いて」
「はーい」
くるりと、結衣がこちらに背中を見せた。
そっと、肩に手を置く。
「おっ。ホントに凝ってるな……ちょっと固い感じがするよ」
「疲れましたからねー……んっ、そこ、良いですよ」
「ここか?」
ぐいぐいと力を込めて、結衣の肩を揉む。
気持ちいいらしく、結衣はゆっくりと吐息をこぼした。
「んっ、ふぁ……うん、いい感じ……兄さん、上手ですね」
「そ、そうか?」
「とても上手……んっ……虜にされちゃいそう……はぁあ……」
「えっと……結衣? なんか、声が……」
「んー? 声が……どうしたんですか? くすくすっ」
「い、いや。なんでもないよ」
声がエロくありませんか?
なんて聞けるわけないだろう!
「はぁあ……兄さんの手、気持ちいいですね……」
「よ、喜んでくれてなによりだ」
「すごくいいから……体が熱くなってきちゃいました。服、脱いじゃいましょうか……?」
「えっ!?」
「ねぇ……脱いでもいいですか?」
「いやいやいや!? それは、ま、まずいだろ!?」
「どうして?」
「そりゃ、俺がいるし……」
「兄妹なんだから、そんなに気にしなくてもいいんじゃないですか? それとも、兄さんは、妹に興奮しちゃうような、悪い兄さんなんですか?」
「そ、そんなことはないぞっ!」
「なら、問題ないですね」
そっと、結衣が服に手を伸ばす。
ま、まさか本気で!?
「……なーんて、ね」
「へっ?」
「期待しました? 期待しました?」
「いや、それは、その……」
「ふふっ、いけませんね。兄さんはえっちですね」
くすくすると笑う結衣。
その背中に、悪魔の羽がぱたぱたと見えたような気がした。




