58話 妹は呼び方を変えてみたい模様です・2
<結衣視点>
「じゃあ、兄さんは、天道さんの前では『ゆー』と呼んでくださいね」
しばらくして落ち着きを取り戻した私は、そんな結論を出しました。
兄さんに仇名で呼んでもらえる……えへ♪
作戦ということは理解しているのですが、とてもうれしいです。
また一歩、距離が縮まったような気がして、兄さんの心に触れられたような気がして、ニヤニヤしてしまいます。
「今度は、私の兄さんに対する呼び方を変えてみましょうか」
「あれ? 結衣も変えるのか?」
「兄さんだけ変えても、『特別感』は出ないでしょう? 二人揃って変えることで、初めて効果が発揮されるんですよ」
「そういうものなのか……」
「そういうものなんです。それで、兄さんをどう呼ぶか、ですが……」
悩ましいですね。
色々な候補があって、簡単に答えを出すことができません。
……そうですね。
迷い、時間を浪費するのはもったいないので、思いついたところから試してみましょう。
「まずは、オーソドックスに……名前で呼んでみるのはどうでしょうか?」
「なるほど。確かに、王道だな」
「というわけで……そ、宗一さん」
口にした途端、頬が紅潮してしまいます。
兄さんのことを、名前で呼んでしまうなんて……!
なんていうか、特別感がすごいです。
『兄妹』という枠を飛び出して、より『恋人らしく』なったような気がします。
「うん、悪くないかもな」
「そ、そうですね。今までにない新鮮な感じがして、兄さんをより近くに感じられるというか……えへ♪」
「じゃあ、明日香の前で俺を呼ぶ時は、呼び捨てで……」
「いえっ、まだ決定ではありません!」
せっかくのチャンス!
すぐに決めてしまい、終わらせてしまうなんて、もったいないです。
もっと、色々な呼び方を試してみたいです。
新しい発見があるかもしれませんし……
こういうコミュニケーションも、とても楽しくて、幸せです♪
「色々なバリエーションがあった方が、いざという時に役に立つかもしれません」
「いざという時って、どんな時だ……?」
わかりません。
適当言いました。
こういうのは勢いなので、ガンガン押し切ります。
「色々と試してみたいです。いいですか?」
「構わないよ。他の候補は、もう考えてるのか?」
「はい! 例えば、その……そ……そーくん、なんてどうでしょうか!?」
そーくん……そーくん……そーくん……
ふわぁ♪
なんて素敵なんでしょう!
一気に、親密度がアップしたような気がします。
それにそれに、幼馴染のような感じがします。
妹でありながら幼馴染……最強の組み合わせですね!
えへ♪ そーくん♪
「なんで、ニヤニヤしてるんだ?」
「ニヤニヤなんてしていませんが?」
「あれ? おかしいな、さっきは確かに……」
「それよりも、どうですか? その……そーくん、というのは」
「えっと……悪くないんじゃないか? ちょっと照れるけどな」
貴重な兄さんの照れ顔、いただきました!
兄さんが照れているところは、かわいいですね♪
カメラで撮って、パネルにして、拡大して、部屋に飾っておきたいです。
まあ、そんなことをしたら、部屋に入ってこられた時に言い訳ができないので、実行はしませんが。
「他にも考えているんですよ? そ……宗ちゃん、というのはどうでしょうか!?」
『ちゃん』をつけることで、ちょっとしたお姉さん気分を味わうことができます。
兄さんが弟で、私がお姉さん。
立場の逆転ですね。
これはこれで、悪くありません。
「そ、それは……ちょっと、子供っぽくないか?」
「イヤですか?」
「できれば勘弁してほしい」
「むぅ」
悪くないと思うんですけどね。
でもでも、立場が逆転するような呼び方は、確かに微妙かもしれませんね。
私は、兄さんの『妹』でいたいんです。
「じゃあ、最後に……だ、だだだ……」
「タイピングソフト?」
「違いますよ!」
「もしかして……」
「だ……ダーリン♪ なんて、どうでしょうか!?」
言ってしまいました!
恋人の究極系の呼び方。
バカップルのみが到達しえるという極み。
ダーリン!
度が過ぎていると思いますが、愛情度は抜群です。
たっぷりの想いを込めて、何度でも言ってしまいそうになります。
ダーリン。
ハニー。
もしも、兄さんとこんな風に呼び合うことになれば……
私は、幸せのあまり卒倒してしまうかもしれません。
大好きな人からの言葉は、それくらいにうれしいものなんですよ。
「……すまん。それは、恥ずかしい」
「ですよね」
私は、あっさりと引き下がりました。
実際に呼ばれたら、本当に卒倒してしまうかもしれませんし……
さすがに、高校生でダーリン、ハニーと呼び合っていたら、違和感たくさんです。
「じゃあ、そうですね……そーくんにしましょうか。一番、良い感じがしましたし、呼びやすいですし、親しみやすさもありますし……どうですか?」
「うん、いいんじゃないか」
「では、天道さんのいるところでは、『そーくん』と呼びますね♪」
「なんか、うれしそうだな?」
「いえいえ、そんなことありませんよ♪」
本当は、この場で飛び跳ねて喜びたいくらいにうれしいです。
「じゃあ、これで明日香に対する対処は決まりってことで……」
「いえ。もう一つ、試しておきたいことがあります」
「え? まだあるの?」
「はい。それは……妹のタイプ、です!」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
兄さん、以外で呼ぶ初めてのシーン。
どんな感じでしたでしょうか?
新鮮な気持ちになれたらなあ、と。
新作書いてみました。
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