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55話 妹とみんなで勉強会・3

 勉強を始めて、2時間ほどが経ちました。


 最初は嫉妬をしてしまいましたが、少しずつ慣れてきて……

 途中から、なんとか兄さんのことを気にしないようにして、ちゃんと勉強をすることができました。


「ふう」


 自然と吐息がこぼれました。


 いつも、予習復習をするくらいなので、まともにテスト勉強をしたことがありません。

 けっこう疲れますね、これ。

 体を動かしていないのに、妙な疲労感があります。

 頭の回転が鈍ってきているのを自覚しました。


「んー……そろそろ休憩にしよっか」


 他のみんなも似たような感じになっていることを察した天道さんが、そう言いました。


「宗一、なにか甘いものちょーだい」

「お前は、もうちょっと慎みってものを覚えような?」

「甘いものは頭の回転に必須なのよ」


 文句を言いながらも、兄さんは冷蔵庫に向かいます。


 うーん……兄さんは、天道さんに甘いような?

 幼馴染ゆえの距離感なのか、それとも……


「あー……まいったな。お菓子も飲み物がなんもないな」

「兄さん。そこの棚に、紅茶の茶葉があったはずじゃあ?」

「今の時期に、熱い紅茶飲みたいか?」


 ……飲みたくないですね。


「仕方ない。買ってくるか」

「先輩。そこまでしなくても……」

「いいよいいよ。甘いものもないし、ついでに買ってくるよ」

「あたし、ケーキね。ほら、ダッシュダッシュ!」

「おのれは……」


 天道さん、遠慮なさすぎです。

 ……兄さんだから、そんなことが言えるのでしょうか?


 って、二人のことを気にしてばかりですね、私。

 でも、気になってしまうんです。


「じゃ、行ってくる」


 財布を手に、兄さんはリビングを後にしました。

 少しして、ガチャリと玄関の扉が開く音が聞こえてきました。


「宗一が戻ってくるまで、もうちょっと勉強しておこうか」

「あっ、天道さん。その前に、一つだけ聞きたいことがあるんですけど……」


 私の中にある疑問をぶつけるタイミングは、兄さんがいない今しかありません。


「ん? どうしたの?」

「えっと、その……天道さんは、兄さんのことをどう思っているんですか?」

「どう、っていうと?」

「ですから……好きとか、嫌いとか」

「恋愛的な意味で?」

「……はい」

「ふーん」


 天道さんがニヤニヤと笑います。


 一方で、凛ちゃんは、やれやれとばかりにため息をこぼしていました。

 そっと、私にだけ聞こえる声を届けます。


「今度は、そんなことを気にしていたの?」

「気になるんですよぉ……天道さん、幼馴染という関係性を除いても、兄さんとやけに親しいですし……どう思っているのか知りたくて」

「そうね……確かに、そこは私も気になるかも」

「凛ちゃんもですか?」

「私も、結衣と同じようなことを思っていたから。結衣の疑問を解消しておかないと、勉強に集中できなさそうだから……せっかくだから、根掘り葉掘り、聞いておきましょう」


 意外なことに、凛ちゃんが味方についてくれました。

 てっきり、呆れられるかと思っていたんですが……


 でも、喜んでいられませんね。

 凛ちゃんも同じ感想を抱いていたということは、ますます、天道さんを警戒する必要が……


「それで……どうなんですか?」

「んー」


 ものを考えるように、天道さんは視線をふらふらさせました。


 少しして、私と目を合わせます。


「宗一のことよね?」

「はい」

「……好きよ」

「っ!?」

「って言ったら、どうする?」

「え? え?」


 冗談……?

 それとも……


「私が宗一を好きだとしたら、結衣ちゃんとはライバルになるのかな?」

「それは……」

「結衣ちゃんは、どっちであってほしい? 私が宗一を好きなのか、それとも、ただの友だちと思ってるのか……どっちがいい?」


 天道さんの顔は、どこか真剣で……

 冗談を言っているようには見えませんでした。


 簡単に答えていい質問ではありません。

 そう感じた私は、じっくりと考えて……それから、静かに口を開きます。


「答えられません」

「どうして?」

「それを決めるのは、天道さん自身ですから。私の願望は関係ないですから」

「……そっか」

「でも、一つだけ言っておくと……例え、天道さんが兄さんを好きだとしても、素直に譲るつもりなんてありませんよ。私は兄さんのことが好きで……『彼女』なんですから」


 今は、ただの『フリ』かもしれません。

 でも、いつかは本物の関係に。


 そう信じて、願い……私は、いつでも全力で、兄さんにアプローチをしています。

 その覚悟と想いを、天道さんに示しました。


「もうっ……結衣ちゃんは、かわいいなあ」

「ふぇ?」

「そんなにかわいいと、諦めそうになっちゃうじゃない」

「っ! そ、それって……」

「帰ったぞー」


 肝心なところで……

 タイミングが良いのか悪いのか、玄関の方から兄さんの声が聞こえてきました。


「あっ……」

「この話は、ここまでだね」

「天道さんは、やっぱり……」

「さてさて、どうかしら?」


 おどけるように、天道さんは笑みを浮かべました。

 それは、私に本心を読ませないようにしているように見えました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

書いていてふと思ったんですが、一回(章?)ごとの話が毎回長いですね。

たまには、小さくまとめた話を連続でつめこんでいくのもいいかもしれません。

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