表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/300

52話 妹は嫉妬します

 翌日の朝。

 ごはんを食べながら、昨日の話を切り出す。


「あのさ、勉強のことで話したいことがあるんだけど……」

「奇遇ですね。私も、提案したいことがあって」

「そうなのか?」


 「兄さんの臭いが耐えられないので、一緒に勉強するのはやめましょう」「兄さんの頭が残念すぎて見るに耐えかねます」「バカなんですか?」


 ……そんな言葉を予想して、ついつい凹んでしまう。


 そんなこと、結衣は言わないよな?

 信じているからな?


「凛ちゃんも、一緒に勉強をしたいということで……問題ありませんか?」

「あ、そういうことなんだ……ほっ」

「どうして安堵しているんですか? ……もしかして、凛ちゃんが一緒ということで、うれしいんですか? 喜んでいるんですか?


 なぜか、結衣がジト目になる。


「うれしいといえば、まあ、うれしいかな?」

「えぇっ!? まさか、ここに来て凛ちゃんが意外な伏兵に……? も、もしかして、兄さんは凛ちゃんのことが……」

「人が多い方が、色々と助け合うことができるだろ? それに、凛ちゃんなら知らない仲じゃないし、歓迎するよ」

「兄さんの彼女は私ですからね! 凛ちゃんに乗り換えたらいけませんよ!」

「あ、うん。そんなことはしないけど……?」


 なんで、そんな話になるんだ?

 結衣の考えていることがよくわからん。


「やっぱり、凛ちゃんが一緒というのは……でもでも、そうなると勉強が進みませんし……私がしっかりと兄さんを監視しておけば、まあ……」

「どうした?」

「いえ、なんでもありません。そういうことで、今日の放課後から一緒に勉強をしたいと思いますが、いいですか?」

「大丈夫だ」

「よかったです。後で、凛ちゃんに連絡しておきますね」

「俺も、似たような話があるんだけど……明日香も誘っていいか?」

「天道さんですか?」


 結衣が、不思議そうに小首を傾げた。


「でも、天道さんは、けっこう成績は良いですよね? 勉強、必要なんですか?」

「あー……ぶっちゃけると、俺がお願いしたんだ」

「兄さんが?」

「一人だと限界があってさ。誰かに教えてもらうと、勉強が捗ると思うんだ」

「……それで、天道さんに? なるほど」


 なにやら、結衣が難しい顔になる。

 探偵が密室トリックにぶつかった時のような、そんな顔。

 なんで?

 ただ、明日香の参加を話しただけなんだけど……


「どうして、男友達ではなくて、天道さんなんですか?」

「それは……」

「もしかして、兄さん、友だちがいないんですか……?」

「いるよ! だから、哀れみの目を向けないでくれっ」

「なら、どうしてですか?」


 結衣に悪い虫がつかないようにするため。


 ……なんて、そんな恥ずかしいこと言えるか!

 というか、そんなことを口にしたら、「そんなに構われると、ちょっとキモいです」とか言われてしまうかもしれない。

 それは耐えられません。マジで。


「いや、それは、ほら……明日香は気心知れた仲だから頼みやすくて。それなりに勉強もできるから、ピッタリの人材というか……」


 結衣の目が厳しくなる。

 どうやら、妹さまはこの回答はお気に召さなかったらしい。


「本当にそれだけですか?」

「と、いうと?」

「天道さんに勉強を教えてもらうだけじゃなくて、勉強にかこつけて一緒にいたいとか……あわよくば、もっと仲良くなりたいとか……だ、男女の関係になってしまうとか……そういうことを期待したりしていませんか!?」


 なぜか、結衣は不機嫌だ。

 頬を膨らませている。

 お前はハムスターか。


「ないない。相手は明日香だぞ? 男友だちみたいなもんだし」

「でも、とても綺麗ですよ?」

「まあ、それは認めるが……でも、女の子として見てないというか……そういう相手じゃないというか……家族のようなものというか……」

「本当ですか? 怪しいです……」

「なんで、そこまで気にするんだ? もしかして、嫉妬? なーんて……」

「そ、そそそ、そんなわけあるわけないじゃないですかっ!!!」


 おもいきり動揺していた。

 え?

 本当に嫉妬していたの?


「天道さんに嫉妬なんて、そ、それじゃあ、まるで私が、に、兄さんのことを……あうあう」

「えっと……マジで?」

「で、ですから、違うと……ち、違いますからね! 本当に違うんですから!」

「そっか、そうだったのか……」

「うっ……に、兄さん? その反応、私の心に気がついて……」

「ああ。今、わかったよ」

「兄さん……わ、私は……」

「安心しろ。俺は、いつまでも結衣の兄貴だからな!」

「……はい?」


 こてん、と結衣が首を傾げた。


「明日香に妹のポジションが取られるんじゃないかって、心配してたんだろ? それで、明日香に嫉妬しちゃったんだろ? でも、安心しろ。結衣は、いつまでも妹だからな。明日香が代わりになるなんてこと、ありえないし」

「……アーハイ、ソウデスカ、ソウデスネ」

「結衣?」

「わかっていました、わかっていましたよ。こんな結末になるんじゃないか、って……ちょっとでも期待した私がバカでした……兄さんは、やっぱり兄さんですね……はぁ」


 なぜか、白い目を向けられた。

 なぜだ?

 俺の推理は完璧なはず。

 結衣は、明日香に妹ポジションを脅かされることに危機を覚えて、嫉妬していたはず。


 もしかして、違う?

 だとしたら、いったい……


 ダメだ。考えてもさっぱりわからん。


「えっと……それで、明日香のことなんだけど……」

「あー……はい。そうですね。もう、なんでもいいですよ。一緒に勉強ですね。はい、わかりました」

「すっごい投げやり! ホントどうしたんだ!?」

「どうもしてませんよー」

「いや、でも……」

「はぁ……本当になんでもありませんから。気にしないでください」


 ため息とともに、結衣がいつもの調子に戻る。


 なにか、やらかしてしまったんだろうか?

 とはいえ、原因がさっぱり……

 こういうところがあるから、『鈍い』って言われるんだろうな。


 なんとかしたいと思うものの、どうすればいいかわからなくて……


「えっと……とりあえず、放課後はよろしくな」

「はい。勉強、がんばりましょうね」

「ああ」


 今は、できることをがんばろう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

今度は、他の面子も含めての勉強会。

イチャイチャもありますが、どたばたも。

もうちょっとしたら、さらに甘い展開も考えています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ものの新作を始めてみました。
↓のリンクから飛べます。
二度目の賢者は間違えない~最強賢者が転生したら、なぜかモテモテになりました~
よかったらどうぞ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ