49話 妹は親友を頼ります
<結衣視点>
「というわけで、知恵をお借りしたいのですが」
「そんなことを言われても……」
夜。
ごはんを食べて、お風呂に入り……
自分の部屋に戻った私は、凛ちゃんに電話をかけて、相談を持ちかけました。
内容は、もちろん、兄さんのことです。
兄さんと一緒に勉強をしても、ちゃんと集中できる方法はありませんか?
そう尋ねたんですけど……
「無茶振りをしないで」
「無茶振りでしょうか?」
「おもいきり。結衣のことをよく知る親友の立場から言わせてもらうと、その二つが両立することはないわ」
「そ、そうですか……」
ハッキリと言われてしまい、ガクリときてしまいます。
うぅ……兄さんと別々に勉強をした方がいいんでしょうか?
「我慢我慢って言っているけれど、そもそも、他の時間は?」
「他の時間といいますと?」
「四六時中、勉強をしてるわけじゃないでしょう? なら、ごはんを食べている時とか、そういう時間に先輩とコミュニケーションをとればいいじゃない。それで、我慢している文の鬱憤を晴らしたら?」
「私は、四六時中兄さんとイチャイチャしたいんです」
「そこまでハッキリ言われると、返す言葉がないというか……」
はあ、とため息が聞こえてきました。
どうしてでしょう?
私は、ごく普通のことを言っただけですが……
兄さんといつでもどこでもイチャイチャしたいなんて、全世界の妹が当たり前に考えていることですよね?
「そうね……なら、適度に距離を置いて適度に休憩を挟んで、ガス抜きというか、合間に先輩に甘えてみたら?」
「それはもうやりました」
「やったのね……」
「その時は満足できるんですが……勉強を再開すると、我慢できなくなって……ついつい、兄さんのことばかり考えてしまいます。ああもう、兄さんが格好いいのがいけないんですよ。そう思いません?」
「私に言われても……というか薄々感じていたんだけど、結衣って先輩が絡むと、ちょっとあほの子になるわね」
「あほの子!?」
がーん、とショックを受けます。
まさか、親友からそんな目で見られていたなんて……
仮にも優等生である私が、あほの子なんて……
……でも、兄さんが原因なら仕方ないですね。
妹を惑わしてしまう、魔性の兄さんなんですから。
兄さんのことばかり考えてしまうのは、全部全部、兄さんがいけないんです!
「また変なこと考えていない?」
「そんなことは……ありませんよ?」
はあ、と本日二度目のため息が聞こえてきました。
「いっそのこと、逆に、おもいきり甘えるとか。そうね……先輩の膝の上に座って勉強したら?」
「兄さんの膝の上……!」
想像してみます。
体勢からして、きっと、兄さんの温もりを全身で味わうことができるでしょう。
それは、まるで、兄さんに包み込まれているみたいで……
最高ですね!
凛ちゃんは、天才ではないでしょうか?
「とても魅力的な案ですが……それだと、勉強に集中できないだけじゃなくて、色々と大変なことになりそうです」
たぶん、顔を真っ赤にして、あたふたと慌てて……
とてもじゃないけれど、勉強をすることなんてできないでしょう。
下手したら、兄さんに対する本当の気持ちもバレてしまって……
……それは、イヤです。
この想いは、まだ、胸の内に……
「結衣?」
「あ、すいません。ちょっと考え事をしていました」
「話を戻すけど、パッと思いつくのはそれくらいね。もうちょっと考えたら、なにか出てくるかもしれないけど……」
「そうですか……なかなか難しいですね」
「……一つ確認なんだけど、先輩のことを考えてしまい、手が進まないのよね?」
「はい、そうですね」
「結衣としては、先輩と一緒に勉強をしたい。でも、一緒にいると集中できない。でもでも、離れたくない……そういうことなのよね?」
「そういうことなのです」
「ふむ……なら、やりようはあるかもね」
「本当ですか!?」
凛ちゃんの言葉に、おもいきり食いついてしまいます。
そんな夢のような方法が、本当にあるなんて……
やっぱり、凛ちゃんは天才でしょうか!?
「公私を……って、公私っていう単語が適当か微妙だけど……とにかく、公私の区別をきっちりとつければいいのよ。勉強をする時は勉強をする。イチャイチャしたい時はイチャイチャをする。それらを、交互に積み重ねていけばいいんじゃない?」
「それがうまくできないから、凛ちゃんに相談をしているんですが……」
「うまくいかないのは、二人きりで勉強をしているからじゃない? 管理……そう、二人を管理する人がいないから、うまくいかない。ついつい、ハメを外してしまう。先輩のことばかり考えてしまう……違う?」
「そう……かもしれません」
兄さんと二人きりというシチュエーションは最高ですが……
それ故に、兄さんのことばかり考えてしまいます。
「勉強、私も付き合ってあげましょうか?」
「えっ、凛ちゃんが?」
「私が一緒にいれば、結衣も、多少は自制心を保てるでしょう? 二人きりにはなれないけど、先輩と一緒に勉強という目的は達成できる……どう?」
「えっと……」
兄さんと二人きりになれないのは残念ですが、今は勉強をしないといけませんし……
凛ちゃんが一緒なら、とても心強いです。
人の目があることで、私も自制心がある程度は働くでしょうし……
兄さんと一緒に勉強を続けるためには、これが最適な案なのでは?
「お願いしてもいいですか?」
「はい、お願いされました」
「ありがとうございます、凛ちゃん。このお礼は、必ずしますからね」
「私も、誰かと一緒に勉強をしたいって思っていたところだから、ちょうどいいのよ。だから、お礼なんて気にしないで。どうしても、っていうなら、駅前のアイスクリームで」
「はい、了解です」
くすくすと、お互いに笑い声がこぼれました。
兄さんと凛ちゃんと、みんなで勉強……
それはそれで、とても楽しそうですね。
なんだか、やる気が出てきました。
「それにしても意外ね」
「なにがですか?」
「先輩のことが気になって仕方ないなんて……結衣がそんな悩みを抱くことよ」
「そんなに意外ですか?」
「意外よ。だって……昔の結衣は、先輩のことが苦手だったでしょう?」
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、ちょっと話を先に進める展開に。
イチャイチャもさせたいですが、キャラを掘り下げることで、
より愛着を持ってもらえるかな、と思っています。




