48話 妹はもどかしいです
<結衣視点>
あれから、中間テストに向けて、日々、兄さんと勉強をしています。
学年が違うので、一緒に勉強しても意味はないのかもしれませんが……
一人よりは二人。
それに、兄さんに勉強を教えてもらえるかもしれませんし……
その時に、ちょっとしたハプニングなどが起きて、砂糖のように甘い展開になったりして……えへ。
って、そんなことばかり期待しているわけじゃありませんからね?
先日の一件で、兄さんの真意を確かめることができたとはいえ、100%、安心できたわけではありません。
兄さんの言う通り、勉強を疎かにしていた点は、反省しないといけませんし……
どうせなら、テストで良い点を取り、私たちの関係を認めてもらいたいです。
なので、決意を強くするために、兄さんと一緒に勉強をしているんですが……
「……」
「どうした、結衣? 手が止まってるぞ」
「いえ、なんでもありませんよ」
うぅ……ホントは、なんでもあります。
ありまくりです!
兄さんと一緒の部屋で、兄さんがすぐそこにいるのに、何もないなんて……
おしゃべりをするわけでもなく、遊ぶわけでもなく……
ただ、黙々と勉強をしないといけないなんて。
一緒の方が効率が良いかもしれないと思っていましたが、逆に非効率かもしれませんね。
なにしろ、これは、思っていた以上に辛いです。
ある意味、拷問ですよ。拷問。
兄さん禁断症状が起きてしまいそうです。
こんなに近くにいるのに、触れ合うことができない。
とても、もどかしいです……
「あの……」
「うん? どうした。わからない問題でもあったか?」
「……い、いえ。なんでもありません」
本当は、問題を聞くフリをして、兄さんとコミュニケーションをとろうとしていました。
でも、兄さんは真面目に勉強しているのに、私がそんなことをするわけにはいきません。
そもそも、がんばると決意したはずです。
思い直して、勉強をがんばります。
がんばりますが……
あううう……やっぱり、もどかしいですよぉっ。
やはり、兄さんとは別々に勉強をするべきでしょうか?
その方が、効率的に……
「うーん」
「どうした? やっぱり、わからないところが?」
「いえ、なんでもありません」
「そ、そうか。わからないところがあれば、遠慮なく聞いてくれよ」
兄さんと一緒にいると、兄さんのことばかり考えてしまう、兄さんで頭がいっぱいになってしまいます。
どうしたらいいですか?
……なんて、聞けるわけないじゃないですか!
もう、本当にもどかしいですね。
……でも、兄さんは落ち着いていますね?
いつもと変わらない様子で、黙々と勉強に取り組んでいて……
……兄さんは、私のことが気にならないんでしょうか?
なんてことない顔をしていますけど……
例えば、ほら。
妹とデートできなくて寂しいとか、物足りないとか。
そういうことは、思っていないんでしょうか?
もしかして、私だけ?
「むぅ」
だとしたら、由々しき事態ですね。
この状況に対して、兄さんがなにも心に抱いていないとすると……
兄さんは、私のことを『妹』としか見ていないことになります。
いえ。
兄さんの妹であることは、うれしいんですよ?
でもでも、どうせなら、そのもう一歩先に進みたいといいますか……
「兄さん、兄さん」
「ん? どうした?」
「今のこの状況について、なにか思うことはありませんか?」
「うん? それは、フリを止めさせられるかもしれないとか、そういうことか? その話なら、この前……」
「いえ、そうではなくてですね……ほら、こう、色々とあるじゃないですか? 私と一緒にいて、その……なにもないことが……寂しい……とか!」
「なにも……なんだって?」
もうっ、なんで聞こえないんですか!
って、私も途中から恥ずかしくなって、蚊の鳴くような声になってしまったから、聞こえないのかもしれませんが。
でもでも、兄さんのことが気になる妹の心を理解してほしいです。
そして、兄さんも私のことを気にして、もどかしい思いをしてほしいです。
……自分で言うのもなんですが、私、相当わがままですね。
そして、めんどくさいですね。
でもでも、止められないんです。
だって、兄さんが好きなんですから。
「あっ……兄さん、ここの問題を教えてくれませんか?」
本当にわからない問題に遭遇して、兄さんの知恵を借りることにしました。
「んー……ああ。これは、えっと……あったあった。このページの公式の応用だよ」
「応用ですか?」
「ほら、よく見ると、解き方は似てるだろ? だから、この公式を参考にすれば……」
「あっ、なるほど。よくわかりました。ありがとうございます、兄さん」
兄さんは的確に問題を教えてくれました。
とてもスムーズでわかりやすかったです。
さすが兄さん……ではなくて。
久しぶりに話を……話といっても、勉強を教えてもらっただけですが……したのに、普通に終わってしまいました。
もうちょっと、反応が欲しいといいますか……
って、こんなことを考えていてはいけませんね。
ちゃんと、勉強をしないといけません。
しかし、ついつい兄さんのことを考えてしまい、手が進まないのが現状で……
さてはて、どうしたものでしょう?
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
妹が、だんだんめんどうな子に……
でも、それはそれでかわいい、と思ってもらえるようにがんばります!




