46話 妹と勉強をすることになりました
<結衣視点>
放課後になり、兄さんと一緒に家に帰りました。
制服から部屋着に着替えて、教科書とノートを持って兄さんの部屋へ。
「おまたせしました」
「じゃあ、始めるか」
今日は、兄さんと一緒に勉強です。
昼の一件があるので、中間テストに備えて勉強をすることになりました。
それは納得しているのですが……
しかし、その弊害として、デート禁止という緊急事態になってしまいました。
兄さんと恋人になれたのに……まあ、フリですが……デートができないなんて……
そんな残酷な仕打ち、あるでしょうか?
いいえ、ありません! 反語。
兄さんとデートできないと、兄さん成分が不足してしまい、私は寂しさのあまり死んでしまいます。うさぎみたいなものです。
なので、別の方法で兄さん成分を補給しないといけません。
そこで考えたのが、『一緒に勉強する』……です。
これなら勉強をすることができて、兄さんと一緒の時間を過ごすことができます。一石二鳥です。
ついでに、タイミングを見計らい、ちょっと甘えたりなんかして……
それでそれで、兄さんも私のことを甘やかしてくれて……きゃあきゃあ!
兄さん、ダメですよ。まだ、外はこんなに明るいんですよ? それに、私は初めてで……でもでも、兄さんがどうしてもっていうのなら、私は……
「結衣? どうしたんだ、ぼーっとして」
「はっ!? い、いえ……なんでもありません。兄さんのことを考えすぎて、少々、意識が飛んでいたとか、そんなことはありませんからね? 本当ですよ?」
「よくわからんが……集中しようぜ。さすがに、勉強しないとまずいしな」
「はい、そうですね」
私は、兄さんの隣に座りました。
そのまま、ぴたりと肩と肩をくっつけます。
「ゆ、結衣? なんか、近くないか?」
「気のせいでは? これくらい普通ですよ」
「いや、しかしだな……」
「兄さん、意識しすぎですよ。こんなことで動揺するなんて、ダメダメですよ? ほら、もっとしっかりしてください」
「お、おう」
兄さんは、顔を赤くして照れています。
かわいいです♪
でも……私も照れていました。
これは……は、恥ずかしいですね。
触れ合う肩が熱を持っているように、温かくて……
それに、すぐ近くに兄さんがいるから、男の人の匂いがして……
ちょっとだけ、クラクラってしてしまいます。
はぅ……兄さんの匂い。
兄さんの匂いなんて、嗅いだことがありません。
デートに行った時も、外に出るから、匂いなんて消えてしまいますし……
家にいる時も、こんなに近くに来たことは、ほとんどありませんし……
先日、公園で抱きしめてもらった時は、色々あって、匂いなんて気にしていられる状態じゃありませんでした。
だから、兄さんの匂いを嗅ぐのは、これが初めてで……
あうあう。
なんだか、とてもいけないことをしている気分になります。
私、変態なんでしょうか……?
でも、止められなくて……
猫みたいに、兄さんにも、私の匂いを移したくて……
あああ……!
頭がぐちゃぐちゃになって、混乱してしまいそうです!
兄さんが好きすぎて、こんなに大変なことになってしまうなんて!
私はどうすればいいんですか!?
「あのさ……やっぱり、もうちょっと離れようぜ」
「え……兄さんは、私とこうするのがイヤなんですか……?」
そんな寂しいことを言わないでくださいよ……
そんなことを言われたら……うぅ、泣いてしまいそうです。
「いや、そうじゃなくて、むしろしていたいというか……いや、なにを言っているんだ、俺は!?」
「兄さん……?」
「ま、まあ……正直、名残惜しいとは思うぞ? でもな、こんなにくっついていたら、さすがに勉強がしにくいからな。これはやめておこう」
兄さんも、こうしたいと思ってくれていたんですか……?
兄さんと一緒……兄さんと一緒……兄さんと一緒……えへ♪
こんなことだけど、兄さんと同じ気持ちを共有していたことがうれしくて、ついつい、頬が緩んでしまいます。
「もう、兄さんは仕方ないですね♪ そんなに私とくっついていたいなんて」
「え、俺のせいなの?」
「でもでも、確かに、勉強を優先しないといけませんからね。ざんね……ほら、いつまで肩を寄せているつもりですか? 妹にセクハラですか? いもハラですか? どんどん……ではなくて、止めてくださいね」
「なんで俺が悪いことに!?」
慌てる兄さんも、どこか愛嬌があって、かわいらしい……って、いけません。
これじゃあ、先ほどと同じ。ループです。
兄さんの言う通り、勉強をしないといけないことは確かなので、さすがに、少し自分を律しないといけません。
なので、私は兄さんから離れました。
10センチも!
こんなに離れることができるなんて……自分で言うのもなんですが、私の精神力はとてもすごいですね。
こんなに辛いことができるなんて、普通にすごいです。
でも……うぅ。
兄さんと10センチも離れるなんて、やっぱり辛いです。寂しいです。
元に戻りたいです。
というか、先程よりも近づいて、今度は、腕を絡めるとか……
「あんま離れてない気もするが……まあいいか。じゃ、勉強しようぜ」
「あ……はい」
私が深く深く葛藤している間に、兄さんは勝手に話を進めてしまいました。
教科書を開いて、ノートにシャーペンを走らせます。
むぅ……もうちょっと、私のことを気にしてくれてもいいんじゃないですか? ドキドキしてくれてもいいんじゃないですか? 妹好きになってくれてもいいんじゃないですか?
そんなにつれない態度をとられると、私、おこになってしまいますよ?
「そういえば……」
「はい?」
「シャンプー、変えた?」
「え? あ、はい。いつものヤツが売り切れていたので、他のを試してみたんですが……」
「やっぱりか。なんか、いつもと比べて髪がサラサラしてるみたいだから。いい感じじゃないか?」
「はぅっ!?」
つれなくしたと思ったら、そんな甘い言葉を……!?
もう、もうもうもうっ!
兄さんは、ホントにたらしですね。
妹たらしです。妹キラーです。
こんな兄さんと一緒にいたら、私、心臓が保たないかもしれません。ドキドキしすぎて、いつか、パーンと弾けてしまうかもしれません。
はぅ……兄さんのことが好きすぎて、どうにかなってしまいそうです。
これ、なんとかなりませんか?
なりませんよね。
「はふぅ」
兄さん……好きですよ♪
私は、心の中で、何度も何度も想いを繰り返すのでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
イチャイチャ回は久しぶりな気が……
今回は、勉強をするとか言っておきながら、二人がイチャイチャします。
そんなお話になります。




