45話 妹の彼氏は難しい
「おつとめごくろうさまー」
教室に戻ると、明日香がすごく楽しそうな顔をした。
人の不幸は蜜の味、というような顔だ。
なんで、こんなのが幼馴染なんだか……
もっと優しくおしとやかな幼馴染が欲しい。
「あんた、今失礼なこと考えなかった?」
「別に。っていうか、おつとめってなんだよ。捕まってたわけじゃないんだから」
「似たようなもんでしょ。呼び出しくらったんだし。で、なんだった? やっぱり、成績のこと?」
「あー」
どうする?
こいつに話すか?
……どう考えても、ロクなことになりそうにない。
よし。やめておこう。
「まあ、そんなところだよ。説教……っていうよりは、お小言だな」
「ウソね」
即座に否定された。
しかも、断言。
「な、なんでウソになるんだよ」
もしかして、幼馴染しかわからない、俺がウソをついている時のクセがあるとか?
「簡単なことよ。ワトイチ君」
「誰だよ、ワトイチって」
ワトソン+宗一でワトイチか? 微妙にゴロが良いな。
でも、誰かわからないから却下だ。
「お小言って言ったけど、ウチの担任、小テスト全問不正解くらいでそんなことしないでしょ」
「うっ」
「それに、わざわざ生徒指導室を使うってことは、成績以外のなにかがあったはず。単なるお小言よりも、深刻な事態になってるんじゃない?」
「お前、探偵か……?」
「見た目は女子高生! 頭は大人よっ」
「それ、ちょっと大人びてるだけの普通の女子高生だろ」
バレてしまっては仕方ないと、素直に生徒指導室で起きた出来事を説明した。
ただし、明日香以外のクラスメイトに聞かれたら、ホントに厄介なことになるので、他には聞こえないように、小声でこっそりと。
「ふーん、そんなことになってたんだ」
「ちょっと過剰な反応だと思わないか?」
「まあね。今時、そこまで管理されるいわれはないし」
「だよなだよな」
「強制力なんてないから、無視したら?」
「そうしたいところだが……」
下手に無視して、保護者に連絡します、っていう事態になると困る。
父さんがどういう反応をするか、正直、予想できないんだよな……
悪い方向にしか転がらないような気がする。
「まあ、なんとかしてみるさ」
「結衣ちゃんのクラスの担任って、確か一年の学年主任なんでしょ? 頭が固い時代遅れの化石って、有名よ」
この幼馴染、けっこうきついうことを言うな……
俺でも、ここまでは言わないぞ?
「そんな人だから、宗一たちの関係に納得できなくて、良い機会とばかりに攻め込んできたんでしょ」
「ったく、勘弁してほしいな。勝手な教育論を持つのは自由だけど、それを押し付けないでくれ」
「仕方ないでしょ。世間体が悪いのは事実なんだし」
その言葉は棘になって、俺の心に突き刺さる。
「……明日香もそう思うのか?」
「んー……まあね。普通に考えたら、そうなるでしょ」
「そっか……」
結衣と本当に付き合っているわけじゃない。
あくまでも、『フリ』だ。
でも、今、この関係を解消するわけにはいかない。
結衣は男運が悪いというか、トラブルに巻き込まれることが多い。
俺が彼氏として近くにいることで、結衣を守らないと。
それができるのは、きっと、俺だけだ。
大事な家族を……妹を、守らないといけない。
そのためにも、いつも一緒にいる『理由』を潰されるわけにはいかない。
「まあ、あたしは今は反対しないわよ? なんだかんだで、二人とも楽しそうだし。本人たちが納得してるなら、これはこれでいいんじゃないかなー、なんてね」
「今は、っていうことは、いつか反対するかもしれないのか?」
「可能性は捨てきれないわね」
「例えば?」
「んー……なにかしらあって回りが見えなくなって、駆け落ちしようとした時とか?」
「するか」
「例えよ、例え。そんな感じで、あからさまに不幸になるのが目に見えていたら、反対して、止めるかもしれないわね」
なんだかんだで、明日香なりに俺たちのことを考えてくれているのか。
ちょっとうれしい。
「にしても、意外よねー」
「なにがだ?」
「宗一と結衣ちゃんが付き合ったことよ。未だに驚きというか、ピンと来ないのよね」
「なんだよ、似合わないって言いたいのか?」
「そうじゃなくて……うーん。結衣ちゃんは、まあ、わかるんだけど……宗一が応えるのが意外というか、予想外というか……」
なにやら納得いかない様子で、ぶつぶつと明日香がつぶやく。
どうも、俺たちの関係に疑問を抱いてるらしい。
ハッキリと指摘できるほどの確信はないみたいだけど、違和感は拭えないようだ。
さすが、幼馴染というか……
意外と、明日香は鋭いんだよな。
いつかバレてしまうかもしれない。
……そうなる前に、明日香には本当のことを打ち明ける、ってのもアリかもな。
こんなんだけど、味方になると頼もしいし……
それに、一人でも本当のことを知っている人がいるっていうのは、安心できるものがある。
今度、結衣に相談してみるか?
「ねえ、宗一」
「なんだ?」
「あんたと結衣ちゃん、ホントに付き合ってるの?」
「もちろん」
ウソを塗り固める。
それは、いつまで続くのか……?
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
幼馴染がまた出てきました。
今回の話では、幼馴染がちょくちょくと出てきて、活躍(?)します。
凛も出てきます。
他のキャラとの絡みを増やしつつ、妹が甘えてくるような展開です。




