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39話 妹はいつもの日常へ

 ゴールデンウィークが終わり、いつもの日常に戻る。

 制服に着替えて、ごはんを食べて……そして、妹と一緒に登校。


「「いってきます」」




――――――――――




 電車を降りて、後は歩くだけ……というところで、結衣が手を繋いできた。

 普通に手を繋ぐだけじゃなくて、指と指を絡める恋人繋ぎだ。


「やっぱり、こうしないとダメか……?」

「当たり前です。兄さんは、私の彼氏なんですよ?」

「それは、まあ、そうなんだが」

「もしかして、イヤなんですか? 私と手を繋ぐのなんて、絶対にお断りなんですか?」

「そんなこと思うわけないだろ。ただ、照れくさいだけで……」


 学校に近づくにつれて、同じ生徒たちが増えていく。

 好奇心やら嫉妬やら、色々な視線が降り注ぐ。


「ふふっ。照れくさいということは、私のことを意識しているんですか? 私は妹なのに、ドキドキしているんですか?」

「えっと……」

「ほら。答えてください、兄さん。でないと、兄さんにひどいことをされました! と泣きながら叫びますよ?」

「それは卑怯だろう!?」


 『女の子』という武器を使われたら、俺に勝ち目なんてない。


「それは、まあ……ドキドキしてるよ」

「っ」

「結衣は妹だけど、それ以前に、かわいい女の子だからな。そんな子と手を繋いで登校して、なにも思わないわけないだろ?」

「っ……!!!? っーーー!!!」

「いたっ、いたたた!?」


 結衣が赤くなって、手をブンブンと振り回した。

 照れている?


「もう、もう。往来でそんなことを口にしてしまうなんて、兄さんはとんでもない人ですね。シスコンですね。どうしようもない妹好きですね」

「いや、シスコンってわけじゃ……」

「……兄さんは、私のことが嫌いなんですか?」

「……好きだよ」


 卑怯だ。

 そんな風に聞かれたら、こう答えるしかないじゃないか。


「えへ……兄さんは私が好き♪ もうもう、本当に仕方のない兄さんですね。妹のことが好きなんて、とんだシスコンですね。でもでも、私は寛容ですから、許してあげますよ? 気にしないであげますよ? というか、もっともっとシスコンになってくださいね」

「俺を変態にしようとしてる!?」

「シスコンは変態などではありませんよ。正義です!」

「お、おう」


 勢いに呑まれて、コクコクと頷いてしまう。


「なので、兄さんはもっともっと、レベルの高いシスコンになってくださいね? そして、私のことをたくさん甘やかしてくださいね? でないと、許しませんよ?」


 レベルの高いシスコンってなんだ……?


「おはよう、結衣」

「あっ。おはようございます、凛ちゃん」


 十字路に差し掛かったところで、凛ちゃんと出会う。


 凛ちゃんは、俺と結衣が手を繋いでいるところを見て……

 やれやれとばかりにため息をこぼした。


「二人は相変わらずみたいね」

「それはもう」

「朝からイチャイチャして疲れない?」

「疲れる要素がどこにあるんですか?」

「今日も、結衣はいつも通りね」


 親友の精神力に、凛ちゃんが苦笑した。


 心の中で、密かに凛ちゃんに同意する。

 彼氏彼女のフリをするために、ここまで全力になるなんて……

 結衣は、妙なところで真面目だなあ。

 ホントは、俺とこんなことしたくないだろうに。


「……」

「なんですか、兄さん? 人の顔をじっと見て」

「いや、なんでもないさ」


 外に出ると、こんな感じで『恋人のフリ』を続けているものの、家に帰ると、俺たちは普通の兄妹に戻る。

 以前は、家ではつれなくされていたものの……

 最近は、わりと優しくしてくれている……ような気がする。


 先日の一件で、少しは家族の仲が深まったのかもしれないな。


 とはいえ、あれで結衣のことを傷つけてしまったことは確かだし、もう、あんなことは起こさないようにしないとな。

 兄としても彼氏としても、しっかりとやっていかないと。


「私も一緒にしてもいい? それとも、結衣は先輩と二人きりの方がいい?」

「そ、そうですね……兄さんと二人きりというのは、大変魅力的な提案ですね。いつでもいつまでも、飽きることなんてありませんし、もうずっとこのまま……」

「結婚するみたいな言い方をするのね」

「け、結婚っ!?」


 ぼんっ、と結衣の顔が耳まで赤くなる。


 って、痛い痛い痛い!

 また、おもいきり手を握られてるし!


「も、もうっ。凛ちゃんったら、それはさすがに話が飛躍していますよ。私と兄さんが結婚だなんて、そんな、もう……! いえ、私はいいんですけどね? 仕方ないから、兄さんをもらってあげてもいいんですけどね? でもでも、まだ早いといいますか、もうちょっと段階を踏んでおきたいといいますか、まだまだ学生でしか味わうことのできない恋人気分を楽しみたいといいますか……えへ♪」

「ゆ、結衣……なんか、大丈夫か?」


 ウチの妹が、人様に見せられないような顔に……


「兄さん。今、失礼なことを考えませんでした?」


 俺の心を読んだように、一瞬で素の表情に戻る。


「えっと……すまん。ちょっと考えてたかも」

「ひどいです……泣きますよ?」

「先輩、最低ですね」

「俺が悪かったから、それだけは勘弁してください!」


 妹に必死になって頭を下げる兄の姿があった。

 兄は妹に勝てないものだよな、うん……


 そんな俺に、結衣はいたずらっ子のような顔をして、そっと耳元でささやく。


「許してあげますけど……しっかり、『彼氏』をしてくださいね?」

「わかっているよ」

「ふふっ、ならいいです」


 ごきげんになる結衣は、にこにこと笑顔を浮かべた。

 こんな風に、振り回されることが多いけれど……まあ、悪くない。

 これはこれで、『アリ』だ。


 何しろ……


 俺は、結衣の『兄』で『彼氏』なんだからな。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

今回で、一部完、という感じでしょうか?

ただ、色々と出し切っていないところはあるので、まだ続きます。

結衣が宗一を好きになった理由も明かされていませんし。

次は、その辺りを描いていきたいと思います。

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