33話 妹と旅行・2
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まずは荷物を置こうと、最初に旅館に向かったんだけど……
なぜか、用意されていた部屋は一つ。
予約する時、二部屋とっておいたんだけど……
旅館側の手違いで、一部屋しかとれていなかったらしい。
「誠に申しわけありませんっ!」
女将さんと、その他、事務担当らしき人たちがおもいきり頭を下げた。
「えっと……他に部屋は?」
「それが……ただいま、全て埋まっておりまして……本当に申しわけありませんっ!」
「まいったな」
予約した部屋はそれなりに広いから、二人で使うこともできる。
でも、いくら妹とはいえ、年頃の女の子と一緒なんてなあ……
もちろん、結衣も嫌がるだろうし……
「わかりました。そういうことなら、仕方ありませんね。私たちは同じ部屋で構いませんよ」
あれ? すんなりと了承された?
「いいのか?」
「仕方ないですからね。こういうミスは誰でもしてしまうことですし、それを責めるのもどうかと思いますし……まあ、兄さんと一緒の部屋なんてとても不本意ですが、私は大人ですからね。渋々ながら、一緒でいいですよ。本当、渋々なんですからね?」
「そこまでイヤなら、やっぱり、なんとかしてもらうか、それとも別のところを探してみても……」
「兄さんはバカなんですかっ!?」
ギロリと、とんでもない目で睨まれた。
「こういう時は、押すな押すなのパターンでしょう!? 渋々と言いながらも、本心では期待をして……いえっ、なんでもありません。とにかく、今から他のところを見つけるなんて難しいですし、なによりも、旅館の人たちがかわいそうですよ」
「えっと……まあ、それもそうだな」
小声でミニ兄妹会議を終える。
頭を下げる女将さんたちに向き直り、気にしないでください、というように手を振る。
「まあ、一部屋でいいですよ。気にしてませんから」
「それに、私たちは恋人なので♪ むしろ、同じ部屋の方がいいというものです」
「あら、そうなのですか?」
「はい♪」
結衣が笑みを浮かべて、俺の腕に抱きついてきた。
こんな時まで、恋人のフリを続けるなんて……プロ意識高いな。
いや、なんのプロかって言われたら、それはそれで回答に困るんだけどね?
「あー……それで、部屋代の方なんですが……」
「私どもの不手際で、お客さまに大変な迷惑をかけてしまいました。もちろん、料金はいりません」
「いや、さすがにそれは悪いですって。一部屋分にしてくれれば、それでいいので」
「しかし……」
「タダにしてもらうと、気が引けてしまうので」
「……お客さまに、心より感謝いたします。ならばせめて、最大限のおもてなしをさせていただきます」
「えっと……はい。お願いします」
ここら辺が落としどころかな?
そう判断して、旅館側の申し出を受け入れた。
「では、お部屋に案内させていただきます」
「「お願いします」」
――――――――――
<結衣視点>
「わぁ……いい部屋ですね」
案内された部屋は、古き良き旅館という感じの、趣のある和室でした。
ちょっと独特な畳の匂いは、私は好きです。癒やされます。
「それに、眺めも抜群ですね」
窓から外を見ると、雄大な山と、その間に広がる街が見えました。
とても良い景色です。
さっそく携帯を取り出して、カメラで……カシャ、っと。
「よいせ、っと」
兄さんが、ちょっとおじさんくさい声をこぼしながら、座布団に座りました。
でもでも、そんなところもかわいいです♪
「こんなところに泊まるなんて、お金、大丈夫なんですか?」
「大丈夫だよ。念のため、いくらか多めに持ってきてるし、部屋が一つになったからそれなりに浮いたし……一泊じゃなくて、二泊できるくらいの余裕はあるぞ」
「でしたら、二泊と言わず、ずっとここに泊まりましょう!」
あ。
ついつい本音がこぼれてしまいました。
「そんなにこの部屋が気に入ったのか? 結衣って、和室が好きだったんだなあ」
私が好きなのは、『兄さんと一緒の部屋』ですよ?
兄さんと一緒なら、どこでも構いません♪
なにもなくても、むき出しのコンクリートの部屋でも、兄さんがいるだけで、そこは天国に変わりますからね。何泊でもOKですよ。
あ、でもでも、何泊はやっぱり無理かもしれません。
ずっと一緒にいたら、ドキドキしすぎて、私の心臓が保たないかもしれません。
正直なところ、今でも、かなりドキドキしていますからね。
兄さんと一緒の部屋……えへ♪
うれしいトラブルです。
兄さんと一緒の部屋でごはんを食べて、一緒に寝て……それでそれで、朝は私の方が先に起きて、兄さんの寝顔を眺めたりなんてして……きゃあきゃあ!
でもでも、兄さんに起こしてもらう、というのも捨てがたいですね!
優しく、それでいて甘い声で、そっと私の名前を呼んでもらい……えへ♪
兄さんと一緒の部屋……とても夢が広がります。
「じゃあ、外に出るか?」
「はいっ♪」
兄さんと一緒の旅行……すごく楽しみで、もう笑顔が抑えきれません。
私はいっぱいの笑顔を浮かべながら、兄さんと一緒に外に出ました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
まったり旅行回、その2です。
先日までシリアスだった分、イチャイチャを詰め込んでいます。
しばらく旅行回になります。




