03話 妹は素直になれません
まだ三日目ですが、たくさんの方に読んでいただけているみたいで、感謝です。
<結衣視点>
学校に続く道を歩きながら、私はため息をこぼしました。
深い深いため息です。
「あああ、やってしまいました! 兄さんにあんな態度をとってしまうなんて……私は、なんてバカなのでしょうか。大バカです! 史上稀に見る、とんでもないバカです!」
朝のことを思い返すと、悶絶して、転がり回ってしまいそうになります。ここが路上ということも忘れて、頭を抱えて叫んでしまいそうになります。
兄さんに、あんな態度をとってしまうなんて……
「私、嫌われていないでしょうか……?」
そのことが心配で心配でなりません。
「……兄さん……」
私、七々原結衣は、兄さんが好きです。
いえ、大好きです!
いえいえ、好きなんて言葉では足りません。愛しています!!!
兄さんは格好よくて、優しくて、気遣いができて……いつも私のことを助けてくれて、とても頼りになって、とても妹想いで……
そんな素敵な兄さんに惚れない妹なんているでしょうか? いいえ、いません! 反語。
兄さんと家族になって、一緒に暮らすようになって、私はどんどん兄さんに心惹かれていきました。いつしか、その想いは『愛』に変わりました。
そう遠くない未来に、この想いを兄さんに捧げて……私と兄さんは一つに……きゃあきゃあ!
「兄さん、私、いつでもいいですよ……本当にいいのか、結衣? ……はい、私は昔からこの瞬間を夢見て……って、いけません!」
ついつい妄想を捗らせてしまいました。いけない、いけない。
我に返った私は、自分を律します。
ここは往来のど真ん中で。妄想するならば、自分の部屋だけにしておかないといけませんね。
「しかし……はあああ……なんとも、思うようになりませんね」
朝のことを思い返して、私は、またため息をこぼしてしまいました。
傍から見れば、私はかわいげのない妹です。
かわいらしくない態度をとり、そっけない言葉をぶつけて、一緒に登校しようという誘いを断り……
まるで、反抗期みたいですね。
大好きな兄さんに、こんな態度をとってしまうなんて、自分で自分に呆れてしまいます。
こんなダメダメな私はぽいっと捨ててしまい、素直にならないといけません。
素直にならないといけないのですが……
「はぁ……どうにもこうにも、素直になれる気がしません」
兄さんを前にすると、舞い上がってしまうというか、冷静でいられないというか……
ドキドキしてしまいます。
でも、それを悟られることは、とても恥ずかしいことで……
だから、ごまかすために、ついつい、そっけない態度をとってしまいます。
簡単に言うと、照れ隠しですね。
「我ながら、なんて厄介な性格をしているんでしょうか、私は」
本当は、兄さんに甘えたいんです! 好きって言いたいんです!
あと、ナデナデしてほしいんです! ついでにハグをしてもらい、甘い言葉をささやいて、最後にそっと唇を……
「きゃあきゃあ!」
って、いけませんいけません。また、妄想の世界に旅立ってしまいました。反省。
「妄想が現実になったらいいんですけど、そんなにうまくいきませんよね」
この厄介な性格を、なんとか矯正したいですが、今のところどうにもならず……
でも、兄さんは、こんな私にもとても優しいです。さすが、兄さんです。
「優しくて、素敵で、格好よくて……兄さんは最高ですね♪」
ただ……それだけに、兄さんに悪い虫がつかないか心配なんですよね。
そうなる前に、なにか手を考えておいた方がいいかもしれません。気がついたら兄さんに彼女ができていた、なんて事態は絶対に避けないといけません。
はてさて、どうしましょうか?
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、妹視点で書いてみました。
妹の欲望……もとい、本音を楽しんでもらえたら、と。
ちょくちょく妹視点が入ります。
それがうまくいくか失敗するか……悩みどころですが、続けてみたいと思います。
これからもよろしくお願いします。