299話 妹はずっと一緒に……
<宗一視点>
結衣の気持ちを知る。
結衣の心を知る。
結衣の想いを知る。
そこまで考えてくれていたなんて……
なんていうか、胸が温かいものでいっぱいになる。
結衣が愛しくて……
ここが学校じゃなかったら、抱きしめていたかもしれない。
「俺は……」
結衣は覚悟を決めた。
なら、俺は?
「……」
妹と結ばれるということ。
妹と一緒に同じ道を歩いていくということ。
それは、とても難しいことなのかもしれない。
父さんの言うように、色々な困難が待ち受けているのかもしれない。
あれから、何度も考えてきた。
結衣とのことを考えない日はなかった。
いつも、俺達の未来のことを考えていた。
何十、何百、何千と先のことを考えて……
その過程で、一つ、気がついたことがある。
結衣と別れる未来は、一回たりとも考えなかった、ということだ。
つまり……そういうことなんだろう。
どんなことがあったとしても、結衣と一緒にいたい。
それは、わがままなのかもしれない。
何もしらない子供の甘い願望なのかもしれない。
でも。
結衣と一緒にいたいという気持ちだけは、本物だ。
ウソじゃない。
確かに、ここにあるものだ。
俺は……
結衣が言うように、『今』を大事にしたいと思う。
「……俺も、結衣と同じ気持ちだ」
「それじゃあ……」
「一緒にいようか。これからも、ずっと」
「……はいっ」
結衣は涙を浮かべながら、それでも笑顔になり、しっかりと頷いた。
「ずっと一緒ですよ、兄さん」
「ああ」
「絶対に離れてあげませんからね」
「わかっているよ。というか、俺の方が捨てられないか不安だ」
「そんなことはありません」
一拍おいて、
「私は、兄さんが世界で一番大好きなんですから」
――――――――――
その日の夜。
俺と結衣は、改めて父さんと話をした。
そこで、俺達の素直な気持ちを伝えた。
父さんが危惧していることは理解している。
それでも、俺達は一緒にいたい。
二人なら、きっと、どんな壁も乗り越えていけるから。
二人でないとダメだから。
そんなことを伝えた。
それを聞いた父さんは、
「……うん、そういうことなら、僕から言うことはなにもないよ。おめでとう、宗一、結衣」
柔らかく笑い、祝福してくれた。
これで、一連の騒動に決着がついた形になる。
同時に、俺達の気持ちがこれ以上ないくらいに固められた。
ある意味では、感謝なのかもしれない。
余談なのだけど……
「二人の気持ちはわかったんだけど……まだ学生だから、子供を作るのはもう少し後にしておいた方がいいよ」
「そ、そういうことは、してませんからっ!!!」
父さんが余計なことを口にして、結衣が顔を真っ赤にするという事件が起きたけれど……それはまた別の話だ。




